地域経済レポート■2001年10月

「ファミリー・高齢者向け供給の促進が望まれる今後の県内賃貸住宅市場」

執筆者:調査部 湯口 勉
「かながわ経済情報」2001年10月号収録

 要 旨 
1.  これまで神奈川県内の賃貸住宅市場は、人口の社会増の増減による影響を強く受けてきた。しかし、80年代終盤から90年代序盤にかけての期間は県内への人口流入が急減する一方で貸家建築が高水準で推移したため、90年代中盤に県内賃貸住宅市場は供給過剰状態に陥った。その後、県内の貸家建築は大幅に抑制されたが、供給過剰状態は最近になっても払しょくされていない。
2.  また、県内において賃貸住宅市場の供給過剰状態が長期化している背景として、90年代半ば以降に持家系住宅への住宅需要のシフトが進んだこともあげられる。20歳前後人口の減少などを背景に親元から賃貸住宅に住み替える動きが鈍る一方で、バブル崩壊以降、価格などの面で持家系住宅の取得環境が大幅に改善したことから、賃貸居住世帯による住宅取得の動きが強まった。
3.  今後を展望すると、県内の賃貸住宅需要は当面拡大を続けると見込まれる。ただし、ファミリー層や高齢者層の需要拡大が見込まれるなど賃貸住宅に入居する世帯の属性が大きく変化することが予想され、賃貸オーナーをはじめとする供給サイドがそうした需要構造の変化に対応していくことが重要となる。
4.  最近では、定期借家権制度が導入されたり高齢者の賃貸入居を支援する制度が設けられるなど政策面においても様々な対応がとられてきている。今後、賃貸オーナーなどがこうした制度を積極的に利用することにより、ファミリー向けや高齢者向けの賃貸住宅供給が一層促進されることが望まれる。

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