地域経済レポート■2010年7月

「通塾者数の減少のなかで価格競争が激化する学習塾業界」

執筆者:調査部 永冨 聡
「かながわ経済情報」2010年7月号収録

 要 旨 
1.  児童・生徒数が減少傾向をたどるなか、わが国の学習塾業界では対象学年層の拡大、事業展開エリアの拡大、提供メニューの多様化といったサービスの拡充による需要の掘り起こしが進められてきた。その結果、全国の学習塾の市場規模は2000年代中盤まで拡大傾向で推移してきた。
2.  しかしその後、2000年代終盤には学習塾の市場規模は急激に縮小したとみられる。この背景として、(1)私立大学におけるAO入試の広がりやゆとり教育への懸念の弱まりなどによる通塾者数の減少圧力の強まり、(2)学習塾間の価格競争の激化による1世帯あたり学習塾費の低下、が挙げられる。
3.  従来の地盤を越えて事業展開エリアを拡大する動きが活発化し、学習塾間の通塾者の囲い込みや価格競争が激しさを増すなかで、最近の学習塾業界ではとう汰の動きが進みつつある。なお、地盤を越えた事業展開エリアの拡大は市場規模が相対的に大きい大都市を中心に行われてきたため、価格競争やとう汰の圧力は大都市でいっそう強くなっているとみられる。
4.  大都市の性格を強く持つ神奈川においても、学習塾間の通塾者の囲い込みや価格競争は全国以上に激しいと考えられる。今後、学習塾市場が全国的に縮小を続けるとみられるなかで、神奈川では児童・生徒数の減少が相対的に緩やかにとどまると予想されるため、県内の学習塾市場の全国のなかでの存在感が一段と高まると見込まれる。しかし、その分、他地域からの参入も活発になることが想定されるため、県内の学習塾業界の競争がますます激しさを増してくると予想される。

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