地域経済レポート■2015年11月

「経済センサスからみた神奈川県の民営事業所」
-全国の従業者数は5年前比で減少したものの、神奈川県では増加-

執筆者:調査部 小泉 司
「かながわ経済情報」2015年11月号収録

 要 旨 
1.  「平成26年経済センサス-基礎調査」によると、2014年7月1日現在のわが国の民営事業所数は544万か所、従業者数は5,800万人となり、5年前に実施された前回調査の「平成21年経済センサス-基礎調査」の数値を下回った。一方、神奈川県の民営事業所数は29.2万か所となり5年前から減少したものの、従業者数は355.4万人で5年前の水準を上回った。
2.  神奈川県の従業者数を業種別(大分類)に5年前の調査と比較すると、建設業や製造業が減少する一方で、医療・福祉が大幅に増加し、また学術研究・専門技術サービス業や情報通信業、卸売・小売業などの業種で従業者数が増加した。全国に比べて幅広い業種で増加する結果になった。
3.  神奈川県の従業者数を業種別にみると、医療・福祉は全国トップの増加率になった。郊外のベッドタウンに団塊世代などが比較的多く居住しており、高齢化の急速な進展に対応した動きが現れた模様である。卸売・小売業は若い世代の流入している地域で、大型商業施設が開業したことなどが増加をけん引した。学術研究・専門技術サービス業はアクセスの便利さや自治体の積極的な誘致活動などを背景に大手企業の研究開発機関の集積が進んだ。一方、製造業の従業者数は全国を上回る減少率になった。
4.  神奈川県では、(1)景気回復の効果により、本県に優位性のある研究開発事業に対する企業の取り組みが強化されたこと、(2)都心に近い利便性を活かし、魅力ある街づくりを実現したこと、などにより従業者数が増加したと考えられる。従業者数の動向からみれば、全国のなかでも神奈川県は、雇用の維持を図りながら、産業構造の変化を実現している地域であると評価できよう。

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