福祉事業所においては、災害時においても利用者へのサービスを安定的に提供できることが大切であると考えられるため、平時から災害を見越した備えが求められますが、地震、風水害や火災等突発的に発生するリスクもあれば、新型インフルエンザを含む感染症、水不足、電力不足などの段階的かつ長期間にわたり被害が継続するリスクもあり、対応が困難となっています。
このたびの震災を振返ると、全国で事業を展開する大手の法人は物資面、人的面でのサービス体制を早急に復旧できましたが、地域に根ざして事業を展開している大多数の中小規模の法人は自法人内だけで事業を継続するための対応が難しかったようです。
そのため、地域(community)での事業継続のための体制整備、同業種(association)の連携が重要な役割を担うということが改めて浮彫りとなりました。
したがって、単なる防災計画ではなく、「地域」や「同業種」といった単位にもとづく事業継続計画(BCP; Business Continuity Plan)の策定と実施は今後の福祉事業にとって重要なテーマであると捉えることができます。
しかしながら、現実には多くの地域で「防災マニュアル」「ハザードマップ」といった防災関連の申合わせ等は行われているものの、 「地域」や「同業種」といった単位の事業継続計画(BCP)はあまり立案されていません。その結果、災害発生時においては、その場での対応を迫られるのが現実です。
本事業はそのような事態を避けるためにも、「地域」や「同業種」単位の福祉事業所向けのモデル事業継続計画(BCP)を策定し、災害に強い事業所づくりに寄与することを目的としています。
1.質問紙による実態調査 2.先行事例のケーススタディ 3.ガイドラインの作成
4.シンポジウムの開催 5.成果物
福祉事業所におけるBCP策定の実態を把握するために、質問紙調査を行います。
調査対象エリアを、過去激甚災害指定のあったエリアとそうでないエリアに分け、両者の比較を行います。また、都市部と地方部では地域(community)や同業種(association)による連携の仕方が違うと考えられることから、これらを分けて分析します。
■調査方法:郵送による質問紙調査
■調査客体数:約4,000(無作為抽出)
■調査対象者:
全国から10エリアを選定し、各エリアに存在する高齢者福祉事業所(介護保険施設含む)、障害者福祉サービス事業者、障害者支援施設、各障害者施設等を営む事業者、保護施設、児童福祉施設、市区町村社会福祉協議会を対象とする。
■調査項目:
①法人・事業所の概要 ②防災に関する取組み ③災害発生に備える計画の策定状況
④緊急事態の発生に備える計画の作成における苦労や維持のための取組み
⑤過去災害があった際の地域との連携について ⑥東日本大震災の影響
激甚災害指定を受けた地域の福祉事業所と、事業継続のために連携を行っている地域の関連事業所を対象に聞取り調査を実施し、福祉事業所の事業継続計画の策定における課題やポイントを探ります。
■調査方法:訪問による聞取り調査
■調査客体数:5エリア(約30事業所)
■調査対象者:
激甚災害指定を受けた地域の福祉事業所、
及び事業継続のために連携を行っている当該地域の関連事業所
■調査項目:
①基本属性(実施事業、利用者数、職員数 など)
②東日本大震災の影響
③事業継続計画(BCP)の策定状況
④被災時の状況
⑤関係する事業所、企業、機関等への事前依頼、打診、取決め
⑥地域社会との連携の仕組み
質問紙調査と先行事例のケース調査にもとづき、福祉事業所が限られた経営資源でBCPを策定するためのガイドラインを作成します。
○:委員長 五十音順、敬称略
氏 名 | 所 属 | 役職等 |
市川 禮子 | 社会福祉法人きらくえん | 理事長 |
○ 大林 厚臣 | 慶應義塾大学 大学院経営管理研究科 | 教授 |
垣木 聡 | 三菱自動車工業株式会社 | エキスパート |
長根 祐子 | 社会福祉法人宏仁会 | 理事長 |
中村 美安子 | 神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部社会福祉学科 | 准教授 |
美馬 理 | 神奈川県商工労働局 | 副主幹 |
山本 正幸 | 社会福祉法人宍粟市社会福祉協議会 | 事務局長 |
湯村 利憲 | 社会福祉法人臥牛三敬会 | 理事長 |
■事務局:
株式会社 浜銀総合研究所 経営コンサルティング部
「福祉事業所 防災対策・事業継続調査」事務局
■住所:〒220-8616 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-1-1 横浜銀行本店ビル4F
■お問合せ:
TEL:045-225-2373 FAX:045-225-2198
E-mail:fukushi_bcp@yokohama-ri.co.jp
■担当:江良【えら】、山本、東海林【とうかいりん】、江嶋