事業概要

目的

 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震のような大規模地震とそれに伴う津波、集中豪雨や台風、竜巻といった風水害など、日本では自然災害のリスクにさらされている。福祉事業所が自然災害に被災した場合、利用者や家族だけでなく、法人の経営そのものにも大きな影響を与える。
 自然災害などの緊急事態の発生時に、法人として迅速で的確な判断ができるよう、対応力を高めておく必要がある。このためには、以下の2つが必要である


① 緊急事態への対応手順を明確にする

 従来から存在する防災計画や防災マニュアルでは、人命の安全確保の手順は明らかにされているが、被災後に福祉サービスの提供を継続する備えまでは検討がなされていないことが多い。
 「職員の出勤が困難な場合」「施設の建物や調理設備、情報システムなどの機器類が利用できなくなった場合」「電気・ガス・水道・通信などのライフラインの停止や食料品などの調達が困難になる事態に陥った場合」に、どのように福祉サービスを提供していくのか、事業継続計画(以下、BCP; Business Continuity Plan)を策定することで明確にすることができる。
 しかし、弊社が平成23年度に実施した調査によれば、災害に対する計画・マニュアルを策定している福祉事業所は、地震については41.9%、風水害については35.0%にとどまっている。同調査で「計画・マニュアルの策定の必要性を感じているものの策定していない」福祉事業所が策定しない理由として多く挙げられたのは、「策定のためのノウハウがない」という回答である。
 一般企業を対象としたBCP策定の手引きは多く公開されているものの、固有のリスクを抱え、策定のためのノウハウの乏しい中小規模の福祉事業所に適した手引きはあまり公開されていないことが要因と考えられる。


② 緊急事態に対応できるような演習や訓練を実施する

 多くの場合、年に1、2回の防災計画や防災マニュアルに沿った初期消火訓練や避難訓練にとどまっている。事業の継続に必要な手順について、演習によって不備の検証まで行っているケースは少ない。
 そこで、本事業では、福祉事業所が実態や提供するサービスに即したBCPを策定することができるように、具体的な策定方法や様式などを紹介するガイドラインを作成し、福祉事業所の緊急事態への対応力強化に資することを目的とする。


事業概要

1.事業継続計画(BCP)策定先行事例調査  2.事業継続計画(BCP)策定モデル事業
3.ガイドラインの作成


1.事業継続計画(BCP)策定先行事例調査

 過去の先行事例をみると「感染症」や「火災」に備える計画・マニュアルを作成している福祉事業所は多い。一方、地震や風水害に備える計画・マニュアルを作成している事業所は少ない。
 そこで、本事業では既にBCPまたはそれに類する対策を実施している福祉事業所の事例を取り上げ、聞取調査を実施する。


■調査項目:
1)BCP策定に至るプロセス
 ・策定の狙いと背景
 ・策定プロセス(組織体制、協議頻度、具体的検討項目、利用者や役職員への説明方法)
 ・策定における課題


2)BCP策定後の運用
 ・策定に伴い導入した事物
 ・訓練実施の方法や頻度
 ・BCPの見直しの方法や頻度


2.事業継続計画(BCP)策定モデル事業

 BCPの策定を予定している福祉事業所に対し、自治体が公表するBCPの作成ガイドライン(例:「中小企業向けBCP(事業継続計画)作成支援ツール BCP作成のすすめ(かながわ版)」を参考に弊社調査員が訪問し、対象法人とともにBCPの策定を行う。
 その策定プロセスを事例として整理し、福祉事業所がBCP策定を策定する際の阻害要因や促進要因を明らかにする。



3.ガイドラインの作成

 BCP策定先行事例調査と策定モデル事業に基づき、福祉事業所が限られた経営資源でBCPを策定するためのガイドラインを作成します。

有識者会議

■事業検討委員:
○:委員長   五十音順、敬称略

氏 名 所 属 役職等
  市川 禮子 社会福祉法人きらくえん 理事長
○ 大林 厚臣 慶應義塾大学 大学院経営管理研究科 教授
  垣木 聡 三菱自動車工業株式会社 エキスパート
  小岩井 豊巳 株式会社コイワイ 代表取締役
  長根 祐子 社会福祉法人宏仁会 理事長
  山本 正幸 社会福祉法人宍粟市社会福祉協議会 事務局長
  湯村 利憲 社会福祉法人臥牛三敬会 理事長

■オブザーバー:

氏 名 所 属 役職等
  河毛 貞子 社会福祉法人長浜市社会福祉協議会 事務局次長
  名倉 孝典 横浜市健康福祉局障害福祉部障害支援係 障害支援係長
  山田 文子 社会福祉法人長浜市社会福祉協議会 介護事業課長

事務局

■事務局:
株式会社 浜銀総合研究所 経営コンサルティング部
「福祉事業所 防災対策・事業継続調査」事務局

■住所:〒220-8616 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-1-1 横浜銀行本店ビル4F

■お問合せ:
TEL:045-225-2373  FAX:045-225-2198
E-mail:fukushi_bcp@yokohama-ri.co.jp

■担当:江良【えら】、山本、東海林【とうかいりん】、江嶋