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1996-04-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1996年4月号 新たな発展の道を模索する神奈川の電気機械産業
- 要約
- 1.神奈川県の電機産業は製造業の中心的存在であり、県経済のけん引役を果たしてきた。
2.県内電機産業の特徴として、(1)大規模工場が多いこと、(2)産業用電子機器、電子部品部門に特化していることがあげられる。
3.県内電機産業は、すでに明治時代にはその発展の基礎が築かれたが、高度成長期における民生用電子機器の成長、オイルショック後のマイクロエレクトロニクス化をテコにした産業用電子機器、電子部品の成長を軸にその後も、順調な発展を遂げた。この間、工場の集積は県臨海部から内陸部へと漸次シフトしていった。ただ、近年バブルの崩壊に伴う内需の減退や円高の進展による国際競争力の低下といった環境変化のもとで、県内生産拠点の見直しが進んでおり、その結果空洞化懸念が高まっている。
4.最近では、半導体や情報通信関連機器を中心に電機製造企業の業況が回復しつつあるが、県内での生産は、海外生産の進捗もあって頭打ちとなっている。
5.今後の県内電機産業の方向として、(1)生産拠点から研究・技術開発拠点への機能転換、(2)情報通信サービス業との事業の融合化が見込まれる。
- 1.神奈川県の電機産業は製造業の中心的存在であり、県経済のけん引役を果たしてきた。
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1996-05-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1996年5月号 神奈川県内住宅建設の今後の見通し
- 要約
- 1.神奈川県内の住宅建設は、バブル期に貸家を中心として大きく伸長したが、90年代に入ってからは鈍化傾向にある。これは、東京圏全域でいえることであるが、主として同圏の雇用吸収力が弱まった結果、社会流入人口が先細りとなり、住宅需要が減少していることによる。
2.バブル期の住宅建設は、狭く、遠く、借家が多いという従来からあった県内の住宅ストックの特徴をより鮮明にした。
3.貸家市場のストック調整は、特に東京圏で深刻化している。そうしたなかで、立地条件や建物のグレードの良い物件とそうでないもので市場の二極化の様相が出てきた。
4.地価や建築費、金利の低下などを背景に活況を続けている分譲マンション市場では、分譲価格の低下と同時に、一戸当たり面積の拡大や立地条件の改善が進展している。
5.今後の県内住宅着工は、分譲マンションこそブームの反動などで伸びが鈍化するものの、根強い建て替え需要と貸家の回復により、96~98年には年平均11万戸と緩やかながら回復過程をたどる。そうしたなかで、高齢化対応などの需要サイドのニーズ多様化に応えるかたちで、住まいの質の改善が一層進展するとみられる。
- 1.神奈川県内の住宅建設は、バブル期に貸家を中心として大きく伸長したが、90年代に入ってからは鈍化傾向にある。これは、東京圏全域でいえることであるが、主として同圏の雇用吸収力が弱まった結果、社会流入人口が先細りとなり、住宅需要が減少していることによる。
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1996-06-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1996年6月号 成長期に入ったCATV事業
- 要約
- 1.CATVは、規制緩和、技術革新、サービスへの需要の高まりなどに支えられ成長期を迎えている。その事業規模はコードレス電話、テレビデオなどに匹敵する1,000億円(全国ベース)に達した模様である。
2.93年12月以降の(1)地元事業者要件の廃止、(2)外資規制の緩和、(3)通信事業への参入促進とともに事業者が急増している。県内でも一地域複数事業者、MSO(多施設事業者)の許可などにより全国有数の激戦区となっている。
3.CATVが直面している問題点としては、出資母体の性格などにより設備投資能力の面などで格差が拡大していること、およびISDN(統合デジタルサービス網)など他の有力メディアと競合状態にあることなどがあげられる。
4.CATVは、ホームショッピングやインターネット接続などの新サービスを取り込んでおり、また今後は通信インフラビジネスへの比重を高めよう。
5.県内では、大手であるMSOによる中小事業者の吸収や地元企業と協力した新サービスの提供など注目すべき動きがみられる。他方公共的な利用も模索されているが、出資母体、自治体などのスタンスの違いによりサービスのあり方が一様でない、という状況が続きそうである。
- 1.CATVは、規制緩和、技術革新、サービスへの需要の高まりなどに支えられ成長期を迎えている。その事業規模はコードレス電話、テレビデオなどに匹敵する1,000億円(全国ベース)に達した模様である。
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1996-07-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1996年7月号 神奈川の自動車産業
- 要約
- 1.神奈川の自動車産業は、電機産業とともに県内製造業の中心的存在である。その出荷額は製造業全体の5分の1を占め、都道府県間比較では、愛知に次ぐ全国第2位の規模である。
2.県内自動車産業は1927年のフォードの進出に始まる古い歴史を有する。工場進出が最も盛んだったのは高度成長下の60年代で、オイルショック後の70年代における輸出主導の成長の基礎が形づくられた。
3.貿易摩擦の激化や円高の進展により、輸出環境が大きく悪化したかたわらで、80年代後半の好況下では内需の主導で発展を続けた。しかしながら、平成不況以降のバブル崩壊と円高の一段の進展により、自動車産業の業績は大きく悪化し、生産拠点の国内外への移転等リストラの推進が急務となった。
4.足下では、円高修正やリストラの進展、国内販売の持ち直しなどから、上場各社の業績は改善傾向にあり、部品メーカーの業績も底打ち感が出てきた。
5.ただ将来的には、国内市場の成熟化が確実視されるなか、県内自動車産業各社は、本業である自動車分野の収益力強化と、非自動車分野への事業多角化といった生き残りのための諸施策を推し進めている。
- 1.神奈川の自動車産業は、電機産業とともに県内製造業の中心的存在である。その出荷額は製造業全体の5分の1を占め、都道府県間比較では、愛知に次ぐ全国第2位の規模である。
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1996-08-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1996年8月号 出店急増で競争激化が見込まれる神奈川県内の大型小売店業界
- 要約
- 1.県内小売業における大規模店のシェアは、近年着実に上昇してきた。
2.とくに足もとでは、大店法緩和や景気の回復などを背景に、大規模小売店の出店数が急速に増加しており、95年度の67件から、96年度には106件にまで達するとみられる。
3.出店ラッシュは地域別にみても小売業間の競争を激化させており、こうした新規出店の陰で閉鎖店も多くみられる。
4.今後、購買力の大きな伸びが期待できないなかでの大型店の出店競争は小売業界全体でみれば効率性を低下させる。今後の生き残りのためには、他社以上に売上を伸ばすか、効率性の低下を補うだけの利益体質の強化が必要となってくる。いずれにせよ、大規模小売店の出店急増による競争の激化が、小売業の整理淘汰を促進していくものとみられる。
- 1.県内小売業における大規模店のシェアは、近年着実に上昇してきた。
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1996-09-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1996年9月号 神奈川の港湾
- 要約
- 1.神奈川では、横浜港、川崎港、横須賀港の3港が外国貿易の窓口となっている。その規模は大阪湾主要港や伊勢湾主要港の貿易額にも匹敵する。
2.近年県内の3港からの輸出の伸び悩みが続いている。これは、航空輸送の集荷力が上がっていることや、いわゆる輸出産業が内需への傾斜を強めていることによるものである。
3.また、1980年代からアジア諸国の港湾が、コンテナ化と同地域での高い経済成長力を背景に急速に発展している。一方、県内を代表する横浜港をはじめわが国の港湾では、中継貿易能力の低さや割高な寄港費用が目立ち、寄港が敬遠される動きがみられる。
4.わが国の港湾の貨物取扱能力は、オショック以降過剰気味で推移してきた。今後も地方港湾を中心に整備が進展し、コンテナ取扱能力が高まるため、過剰感が強まるとみられる。
5.今後の発展のための港湾整備の課題として、(1)重点投資、採算重視の姿勢、(2)岸壁水深、コンテナターミナル面積、情報化などの港湾機能の充実、(3)競争力強化の一法としてのネットワーク型の港湾機能強化があげられる。
- 1.神奈川では、横浜港、川崎港、横須賀港の3港が外国貿易の窓口となっている。その規模は大阪湾主要港や伊勢湾主要港の貿易額にも匹敵する。
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1996-10-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1996年10月号 90年代以降停滞局面にある神奈川の工業
- 要約
- 1.神奈川の製造業は、生産効率が他の工業県と比べて非常に高く、全国でもトップクラスの「工業立県」である。また、大規模工場の集積が高いことや加工組立型業種のウエイトが高いことなどが大きな特徴となっている。
2.しかし、90年代以降は平成不況の長期化など製造業をとりまく環境が激変し、停滞局面にある。なかでも、業種別には主力の加工組立型業種、地域別には横浜、川崎地域における落ち込みが顕著である。
3.神奈川の製造業は現在大きな変革期を迎えているが、新しい環境に柔軟に対応し、今後も成長力を維持していくことが県経済にとって非常に重要である。
- 1.神奈川の製造業は、生産効率が他の工業県と比べて非常に高く、全国でもトップクラスの「工業立県」である。また、大規模工場の集積が高いことや加工組立型業種のウエイトが高いことなどが大きな特徴となっている。
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1996-11-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1996年11月号 神奈川の宿泊観光とホテル業界
- 要約
- 1.神奈川県では、宿泊観光客数のすう勢的な増大に対応して、ホテル、旅館を合わせた宿泊施設の総客室数も増加基調にある。
2.宿泊施設の数を旅館とホテルの別にみると、旅館軒数が年々減少する一方で、ホテル軒数は増加が続いており、このことが1施設あたりの平均客室数の増勢ともあいまって、ホテル化率(ホテル、旅館の合計客室数に対するホテルの客室数の割合)の上昇につながっている。
3.都市観光ブームにのって、90年以降、横浜では大型ホテルの開業が相次ぐなかで、宿泊客数に比べて収容能力としての客室数は過剰気味となっており、ホテル間の料金引き下げ競争が顕在化している。横浜の都市イメージ等、種々の条件から市内ホテルは他地域に比べてなお高めの料金設定が可能となっているとはいえ、さらなる大型ホテルの増加で先行き一段の競争の激化が見込まれる。そうしたなかで、各ホテルはサービスの多様化に力を注いでいる。
4.全国有数の観光地である箱根のリゾートホテルにおいても、宿泊料金の低価格化が進んでおり、年間を通じた稼働率の引き上げや日帰り客の取り込みなど、集客力強化の重要性が増している。
- 1.神奈川県では、宿泊観光客数のすう勢的な増大に対応して、ホテル、旅館を合わせた宿泊施設の総客室数も増加基調にある。
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1996-12-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1996年12月号 消費者嗜好の多様化など環境変化への対応を急ぐ食品工業
- 要約
- 1.神奈川の食品工業は、出荷額でみて全国で4番目の規模を誇っている。県内では油脂、精穀・製粉などのプラント型業種やパン・菓子など最終消費に近い高付加価値型業種の集積度が高いが、長い目でみると後者への傾斜が明らかである。
2.食品工業は個人消費への依存度が高いため、総じて業況の変動が小さい産業である。しかし平成不況以降、国内市場の成熟化や輸入自由化、内外価格差解消の動きなどにより、内外メーカーに流通業が加わって、競争が厳しい。
3.県内主要メーカーは、「食」のトレンドの追及や多角化と同時に海外進出を進めているほか、情報・物流面でのシステム化の向上に取り組んでいる。ただ、情報・物流面での対応は、一部の大手企業を除いて、スーパーやコンビニなど川下主導によるものである。
- 1.神奈川の食品工業は、出荷額でみて全国で4番目の規模を誇っている。県内では油脂、精穀・製粉などのプラント型業種やパン・菓子など最終消費に近い高付加価値型業種の集積度が高いが、長い目でみると後者への傾斜が明らかである。
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1997-01-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年1月号 1997年度の神奈川経済の見通し
- 要約
- 1.97年度上期の県内景気は、住宅投資や設備投資の駆け込み重要の反動が避けられないうえ、消費税引き上げなどが個人消費にブレーキをかけるため減速する。
2.しかし、下期に入ると、高水準の収益を背景として企業活動が積極化すると期待され、民間需要が持ち直してくることなどから、景気の浮揚感が明らかになってこよう。
3.実質県内総支出の伸びは、95年度に前年度比+1.6%、96年度に同+2.1%となった後、97年度は同+0.9%に鈍化する。
- 1.97年度上期の県内景気は、住宅投資や設備投資の駆け込み重要の反動が避けられないうえ、消費税引き上げなどが個人消費にブレーキをかけるため減速する。
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1997-02-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年2月号 神奈川の一般機械製造業
- 要約
- 1.一般機械製造業は各種の資本財や生産財の供給を通じて日本経済の発展を支えながら着実に成長してきた。円高が進展したにもかかわらず、現在でも工作機械などの製品分野においては世界トップクラスの競争力を維持している。
2.神奈川は一般機械の製造においても、全国有数の集積を誇っている。たとえば都道府県別の出荷額をみると、神奈川は愛知に次いで全国第2位である。品目別には、化学機械やポンプなどの一般産業用機械やコピー機などの事務用機械の出荷額が大きくなっている。
3.一般機械製造業の特徴としては、中小企業の占める割合が高いことや民間投資依存度が高いため業績変動の振れ幅が大きいことなどが挙げられる。
4.県内の一般機械製造業の業績は、民間設備投資の回復による受注の持ち直しなどから、94年度下期以降回復基調にある。ただ、ユーザーからの価格引き下げ要請の強まりなどにより価格が低下傾向にあることなどから回復力は力強さに欠ける。
また景気回復のもたつきから足下の業況はやや悪化している。
5.県内に工場を置く大手メーカーの一部は、主力製品の高付加価値化を進める一方で、環境関連分野など新規分野の開拓にも動いている。一般機械製造業がさらなる成長を遂げるためには、新たな需要に対し主体的に対応していくことが重要となろう。
- 1.一般機械製造業は各種の資本財や生産財の供給を通じて日本経済の発展を支えながら着実に成長してきた。円高が進展したにもかかわらず、現在でも工作機械などの製品分野においては世界トップクラスの競争力を維持している。
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1997-03-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年3月号 C.I.(景気総合指数)からみた神奈川県内景気の現況
- 要約
- 1.総合的な景気指標として、D.I.(景気動向指数)が一般によく知られている。ただ、D.I.は景気が拡張局面にあるのか、後退局面にあるのかを判断する際には有効であるが、景気の絶対的な水準を測定することはできない。
2.一方、C.I.(景気総合指数)は計算過程が複雑なこともあり、D.I.に比べて一般へのなじみは薄いが、景気の水準や変化の大きさを測定することのできる有用な総合景気指標である。
3.全国のC.I.の動きをみると、今回の景気拡張局面の特徴として(1)景気の水準の低さ、(2)回復テンポの遅さ、(3)拡張期間の長期化の3点をあげることができる。
4.地域版のC.I.である地域景況インデックスによって各地域の景気水準を比較すると、関東をはじめとする大都市圏で平成不況における景気の落ち込みが大きく、またその後の回復が地方圏よりも遅れていることがわかる。
5.今回、当社が独自に作成した神奈川C.I.によって、神奈川の景気回復が全国に遅れをとっていることが裏付けられる。しかし、96年以降県内景気は比較的早いペースで回復してきており、その回復テンポは全国、首都圏他地域を上回っている。
- 1.総合的な景気指標として、D.I.(景気動向指数)が一般によく知られている。ただ、D.I.は景気が拡張局面にあるのか、後退局面にあるのかを判断する際には有効であるが、景気の絶対的な水準を測定することはできない。
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1997-04-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年4月号 神奈川の情報サービス業
- 要約
- 1.わが国の情報サービス産業は、平成不況期には後退局面を迎えたものの、95年以降は情報化投資の復調などを背景に再び成長軌道に戻っている。
2.日本の情報サービス産業の特色としては、受注ソフトウェアの比率が高いことや、ゲームソフトを除けばほとんど国際競争力を持っていないことなどが挙げられる。
3.神奈川の情報サービス業は、事業所数と従業者数で全国第3位、売上高では第2位と全国有数の集積を誇っている。
そして県内事業所の75%が横浜市と川崎市に集中している。
4.神奈川の情報サービス業の特色として、(1)従業員1人当たりの売上高が全国トップであることや、(2)コンピューターメーカーからの受注依存度が高いこと、(3)ソフト開発過程で川下を受け持つプログラマーの比率が高いことなどが挙げられる。
5.95年に底入れした業況は、パソコンブームや企業の情報化投資の活発化などを背景に96年以降も回復色を強めている。
価格の低下から利益回復のピッチは鈍いものの、業務の量感を表す実質売上高は91年のピーク水準を超えており、人手不足が顕在化している。
6.情報化の一層の進展が見込まれるなかで、市場の拡大が今後も見込まれるものの、厳しい競争に勝ち残っていくためには、激しい環境変化に対応しつつ、他社との差別化を図る工夫の重要性が増してこよう。
- 1.わが国の情報サービス産業は、平成不況期には後退局面を迎えたものの、95年以降は情報化投資の復調などを背景に再び成長軌道に戻っている。
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1997-05-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年5月号 神奈川の化学工業
- 要約
- 1.神奈川の化学工業は機械工業と同様、県内の有力産業のひとつである。1995年の出荷規模は県内製造業のなかで第4位の位置を占め、47都道府県の化学工業出荷額の中では第1位となっている。製品別には、写真感光材料や医薬品、化粧品などの加工型製品が主力となっている。
2.化学工業の県内における立地をみると、川崎地域と平塚市、藤沢市などの湘南地域に多くが集積している。これらの地域に立地している大手化学企業の多くは、わが国の化学工業が発展を始める1960年代に進出している。
3.足下の県内化学工業の生産は、アジア向け輸出や化粧品などの国内販売が好調なことを背景に高水準で推移している。これをうけて業績も回復基調にあるが、原材料コストの上昇などから収益環境が悪化しているため、回復テンポは先行き鈍化するとみられる。
4.今後も県内化学工業がさらなる成長を遂げていくためには、充実している研究開発機能をこれまで以上に活かして、生産効率の向上と新製品の開発に注力する必要がある。
- 1.神奈川の化学工業は機械工業と同様、県内の有力産業のひとつである。1995年の出荷規模は県内製造業のなかで第4位の位置を占め、47都道府県の化学工業出荷額の中では第1位となっている。製品別には、写真感光材料や医薬品、化粧品などの加工型製品が主力となっている。
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1997-06-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年6月号 神奈川のバス、タクシー業界
- 要約
- 1.神奈川は全国のなかでもバス、タクシーの利用度が高い地域である。とくに乗合バスの県民1人あたりの年間利用回数は全国トップである。
2.乗合バスの輸送人員は、長期的にはマイカーの普及や道路混雑による利便性の低下などから緩やかな減少傾向をたどってきているが、80年代後半には(1)県郊外への人口の転入増、(2)新設・移転による県内の大学の増加に伴う通学者の増加から大幅な伸びを示した。
3.しかしながら、92年度以降は景気低迷による雇用者数の減少などから、輸送人員は減少テンポを強めている。このため県内の各バス会社は、バス専用レーンの設置による定時走行の確保や車両、停留所の設備改善など客離れを防ぐための努力をしている。また、全国で初めてバスカードを導入するなど神奈川はバス活性化に対して先駆的な試みも多い。
4.貸切バスについては、冠婚葬祭で利用されることが多い小型車に対する需要が増加しているが、主力の大型観光バスの利用は減少している。こうしたなか、県内のバス事業者では貸切バス部門を分社化する動きが出てきている。
5.県内タクシー業界では、実車率(走行距離のうち客を乗せて走った比率)が景気の低迷から横浜、川崎を中心に低下している。一方でドライバーの充足状況を表す実働率は上昇傾向にあり、タクシーの供給過剰が顕在化している。
6.規制緩和によってタクシー業界における競争は今後一段の激化が見込まれる。各タクシー会社が競争に生き残り、マーケットシェアを確保していくためには車両運行管理のシステム化といった輸送効率の改善やサービス水準の向上、および新しいサービスの開発が不可欠である。この点すでに県内業者の一部では、GPS(衛星通信を利用した運行車両の管理システム)の導入、ドライバーの接客マナーの徹底、救援事業への参入などの取り組みを始めている。
- 1.神奈川は全国のなかでもバス、タクシーの利用度が高い地域である。とくに乗合バスの県民1人あたりの年間利用回数は全国トップである。
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1997-07-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年7月号 神奈川の雇用情勢と変化する就業構造
- 要約
- 1.平成不況後における神奈川の有効求人倍率は過去に比べ水準が極めて低く、また、改善テンポも緩慢である。求人数の増加は非製造業から製造業へ、またパートから正社員へと徐々に広がりをみせているものの、景気回復に伴う求職者数の増加を吸収するほどではなく、足下の有効求人倍率は横ばいで推移している。
2.労働力の需要サイドでは、産業ごとの就業者数シェアにおける上位九位業種が製造業からサービス業や商業・飲食業へと移行し、産業構造が大きく変貌していることを示している。また、製造業においても生産関係職業の割合が低下する一方、技術関係職業のウェイトが高まっている。
3.他方、労働力の供給側では、90年から95年にかけて完全失業率が男子高年齢層と男女の若年齢層で特に高まっている。男子高年齢層では製造業における就業者の大幅減少が、また、若年齢層では厳しい新卒採用環境が、それぞれ失業率を押し上げたとみられる。
加えて、県外労働力需要の弱さや女子の就業意欲の高まりも要因として考えられる。
4.産業構造の急速な変化により、企業内部でも労働者に求められるスキルは変化している。他方、労働力供給が増加しているため、求められるスキルの変化への対応が困難な男子高年齢層を中心にしわ寄せが現れている。そうしたミスマッチの解消には、円滑な転職を可能にする労働市場の整備、企業内部での労働力のスムーズな移動、企業の求めるスキルに応じた労働者の能力アップなどが一層求められる。
- 1.平成不況後における神奈川の有効求人倍率は過去に比べ水準が極めて低く、また、改善テンポも緩慢である。求人数の増加は非製造業から製造業へ、またパートから正社員へと徐々に広がりをみせているものの、景気回復に伴う求職者数の増加を吸収するほどではなく、足下の有効求人倍率は横ばいで推移している。
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1997-08-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年8月号 神奈川の農業
- 要約
- 1.わが国の農業は戦後、機械の導入と化学肥料の増加により生産能力を高め、増え続ける農産物消費に応えるかたちで着実に生産規模を拡大してきた。しかし、80年代以降になって、消費量が飽和状態となったうえ、農産物の輸入が増加してきたことなどから減少傾向で推移している。
2.一方、県内農業の生産規模は、工業化や都市化の進展により農耕地や農業就業者数が減少してきたことから、既に70年代から減少傾向にあり、直近の95年はピークである68年の約6割の水準となっている。しかし、だいこんやキャベツ、えだまめなど特定の野菜の生産規模は、首都圏への野菜供給地となっているため、全国でも上位に位置している。
3.こうした県内農業の高い野菜生産力は、耕地の高度利用による単位面積当たり生産高の引き上げによりもたらされている。この背景には、輪作や大量作付などの栽培技術の利用と環境制御機器が整備された園芸施設の活用がある。しかし、これらは同時に生産コストの上昇を招く結果となっている。
4.輸入品の増加による野菜の市場環境の変化をうけて、端境期をなくすなどの国産品の競争力向上へ向けた努力が払われている。そうしたなかで、高コスト体質の県内農業が生き残るには、より付加価値の高い品種を開発・供給するなどして食材供給機能を高めることが重要である。
5.併せて、農業の存在がもたらす効用を地域全体が再認識することも大切なことである。
- 1.わが国の農業は戦後、機械の導入と化学肥料の増加により生産能力を高め、増え続ける農産物消費に応えるかたちで着実に生産規模を拡大してきた。しかし、80年代以降になって、消費量が飽和状態となったうえ、農産物の輸入が増加してきたことなどから減少傾向で推移している。
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1997-09-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年9月号 神奈川の個人・中小企業金融取引の現状と銀行の店舗展開等
- 要約
- 1.金融取引は経済活動や情報の集積が進む三大都市圏に集中している。東京圏の一角を構成する神奈川も預金や貸出取引において東京、大阪、愛知に次ぐ大きな金融マーケットである。
2.県内の家計の金融行動をみると、所得や貯蓄率が全国平均を上回って上昇しているだけでなく、貯蓄残高、負債残高も他地域の水準を上回っており、金融機関が県内でリテール戦略を展開していくうえで魅力的な市場を形成している。
3.金融リテール市場としての神奈川の預金、貸出の動きをみると、預金については全国と比べても個人のウエイトが高い。一方貸出については全国銀行(都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信託銀行、長期信用銀行)を中心にリテール分野へのシフトが加速しているが、近年では景気の低迷などから中小企業への貸出が伸び悩んでいる。
4.県内金融機関の店舗展開をみると、有人店舗の増加率は低下傾向にある。その一方で、リテール取引を拡充するためのCD(現金自動支払機)やATM(現金自動預払機)といった無人店舗が都銀を中心に急増しており、その増加テンポは全国や近隣の千葉、埼玉を大きく上回っている。さらに最近ではエレクトロニック・バンキングと呼ばれる店舗を必要としない新しい金融サービスの導入が各金融機関で活発化している。
5.主成分分析によって最近(95年)の各都道府県の金融市場を類型化してみると、他地域と比較した神奈川の金融市場の特徴として、(1)集積度が高い、(2)リテール特化度が高い、(3)成長性が高い、という3点をあげることができる。また、10年前の85年と比較してみるといずれの地域においてもリテール特化度が大きく高まっている。
- 1.金融取引は経済活動や情報の集積が進む三大都市圏に集中している。東京圏の一角を構成する神奈川も預金や貸出取引において東京、大阪、愛知に次ぐ大きな金融マーケットである。
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1997-10-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年10月号 業態内外との競合激化が予想されるコンビニエンス・ストア─神奈川の事例を中心に─
- 要約
- 1.わが国のコンビニエンス・ストア(CVS)は、1960年代後半の誕生以来、小売業界のなかで突出した成長を遂げてきた。その要因としては、(1)高い利便性の提供が消費者の幅広い支持を得たこと、(2)店舗経営のシステムとしてフランチャイズチェーン方式が採用されたこと、などがあげられる。
2.もっとも、90年代に入るとCVSの高成長は曲がり角を迎えている。店舗数の増加によりCVSを取り巻く経営環境は厳しさを増しており、情報システムや商品開発力などに劣る単独店は80年代末頃から減少を続けている。
3.CVSの密集する大都市圏において経営環境の厳しさは特に際立っている。業界では店舗支持人口2千人程度が1店舗あたり売上高の飽和点といわれており、大都市圏のCVSは店舗支持人口からみて飽和状態を迎えている。
4.神奈川においてもCVSは高い成長を遂げてきたが、CVSの密集度合いは東京、大阪に次いで全国で3番目に高いことなどから、県内でもCVSの競合が激しくなっているとみられる。地域別には、平塚市や相模原市などで相対的にCVSの経営環境が厳しくなっている。
5.神奈川では今後も大手チェーンの新規出店意欲が強いことなどから、業態内外との競合が一段と激化するとみられる。
そうした競合に勝ち残るためには、CVSの特性である利便性をさらに高めることによる他業態とのすみ分けが重要である。また、業態内での競合に関しては、(1)店舗立地の優位性、(2)本部と加盟店の連携強化、(3)他チェーンとの差別化、がポイントとなろう。
- 1.わが国のコンビニエンス・ストア(CVS)は、1960年代後半の誕生以来、小売業界のなかで突出した成長を遂げてきた。その要因としては、(1)高い利便性の提供が消費者の幅広い支持を得たこと、(2)店舗経営のシステムとしてフランチャイズチェーン方式が採用されたこと、などがあげられる。
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1997-11-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年11月号 神奈川の建設投資と業界の動向
- 要約
- 1.神奈川県下の建設投資は、80年代後半から90年代初頭にかけて急拡大したが、91年度をピークに減少に転じた後は低迷が続いている。96年度には公共投資の底支えや民間住宅建設の持ち直しにより出来高ベースで5年ぶりに前年水準を上回ったものの、オフィスビルを中心とした民間非住宅建設の低迷を主因に、依然ピーク時の8割に満たない水準にとどまっている。
2.こうした建設投資の落ち込みを背景に、県下の建設業者の業況も著しく悪化している。とりわけ、規模別にみると経営体力の劣る中小零細企業で、また業種別には公共事業への依存度の低い建築工事業や設備工事業で、採算性の低下が目立つ。
3.業績の低迷が続くなか、県下の建設企業のバランスシート上では、バブル崩壊後の地価下落などから資産内容が大きく悪化する一方、過大投資のツケとして多大な有利子負債が残されている。このため、今後調達金利が上昇に転じた場合、利払い負担の増加という形で収益の足を引っ張る可能性が高い。
4.今後、財政再建の本格化にともない公共事業の削減が不可避であることや、より競争促進的な方向へと制度面の改正が進められることなど、建設業を取り巻く環境は一層厳しさを増してこよう。こうしたなか県下の建設企業が早急に取り組むべき課題としては、本格的な競争時代を生き抜くために経営基盤を整備・強化することが重要である。その際には、(1)財務リストラを進めると同時に徹底したコストダウンを図ること、(2)公共工事の代わりとなる安定収益源を民間工事の中で確保していくこと、(3)自社の得意分野を生かし、非価格競争力を一層強化すること、などがポイントとなろう
- 1.神奈川県下の建設投資は、80年代後半から90年代初頭にかけて急拡大したが、91年度をピークに減少に転じた後は低迷が続いている。96年度には公共投資の底支えや民間住宅建設の持ち直しにより出来高ベースで5年ぶりに前年水準を上回ったものの、オフィスビルを中心とした民間非住宅建設の低迷を主因に、依然ピーク時の8割に満たない水準にとどまっている。
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1997-12-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1997年12月号 神奈川の自動車部品製造業
- 要約
- 1.国内自動車販売市場の成熟化や海外生産シフトに伴って、完成車メーカーのコスト意識が今まで以上に強まる中で、自動車部品メーカーの経営環境は厳しさを増している。
2.工業立県である神奈川の一翼を担ってきた自動車部品製造業は、90年代に入って事業所数や従業者数、出荷額ともに減少傾向にある。そうした中で神奈川の部品メーカーの付加価値率が高まっているのは、低付加価値製品を海外や県外の拠点に生産シフトする一方で、県内拠点を高付加価値製品の生産拠点として位置づけてきたことや、新たなニーズに対応して部品機能の高度化を図り製品の付加価値を高めてきたためである。
3.県内上場自動車部品メーカーの決算状況は、94年度以降製造原価低減などによるコスト削減により減収を続けながらも増益基調をたどってきた。96年度後半からは輸出増などで増収増益に転じたために一息ついた感があるが、今後は再び厳しさを増すとみられる。
4.そうした中で、今後の自動車部品製造業にとっては開発力の強化を通じて、部品の高機能化に的確に対応していくことや生産効率の向上方策を図っていくこと、さらに今まで培った技術を活かして非自動車部門へ新規収益源を求めることなどが急がれよう。
- 1.国内自動車販売市場の成熟化や海外生産シフトに伴って、完成車メーカーのコスト意識が今まで以上に強まる中で、自動車部品メーカーの経営環境は厳しさを増している。
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1998-01-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年1月号 98年度の神奈川県経済の見通し
- 要約
- 1.98年度の神奈川県経済は、回復のけん引役が不在となるなかで低成長を余儀なくされよう。
2.新年度を展望すると、(1)アジアの経済不安などから輸出の勢いが弱まること、(2)公共投資の削減により建設業を中心に雇用調整圧力が強まること、(3)生産活動の停滞から雇用・所得環境の改善が足踏みとなること、などが県内景気の回復の足かせとなろう。そうしたなかで、雇用不安など将来に対する不透明感が根強く残って県民の消費マインドを萎縮させるため、景気回復のカギを握る家計部門の回復力は弱いものとなる。
3.実質県内総支出の伸びは96年度の+1.8%(県速報値)から、97年度は-0.3%とマイナス成長に転じ、98年度も+1.0%の低成長にとどまろう。
- 1.98年度の神奈川県経済は、回復のけん引役が不在となるなかで低成長を余儀なくされよう。
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1998-02-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年2月号 神奈川の自動車貨物運送業
- 要約
- 1.高度成長期に高い伸びを続けた国内貨物全体の輸送量は、1970年代に入ると産業構造の変化などから増勢が鈍化し、以降は極めて緩やかな増加傾向をたどっている。そうしたなかで、機動性に優れた自動車による貨物輸送は、多頻度小口輸送が求められるようになったこともあり、重要性が高まってきた。
2.95年度に神奈川を発着した貨物の自動車輸送量は、ともに全国で第6位の規模となっている。品目別には県内の産業構造を反映し、金属・機械工業品の割合が大きい。ただし、景気の長期低迷や県内生産拠点の県外移転などから90年度と比べると神奈川発着の貨物輸送量は減少している。
3.一方、貨物輸送を業とする自動車運送業者についてみると、県内においても企業のアウトソーシングの動きなどから重要度が高まっている。特に96年度には、消費税率引き上げを前にした個人消費や住宅投資の拡大、生産活動の活発化などを背景に、県内の自動車運送業者による重量ベースの貨物輸送量は6年ぶりに回復に転じた。こうしたなかで、運送企業の収益は最悪期を脱しているが、運賃の引き下げ圧力が強いなど経営環境は厳しいことから収益性は低水準にとどまっており、廃業率も高まっている。
4.今後も、荷主企業の輸送コスト削減の動きや運送業界における規制緩和、地球環境意識の高まりなどから、運送業者の経営環境は厳しい状況が続くとみられる。運送業者には、荷主企業の物流効率化ニーズへの積極的な対応と自らの収益体質の強化が課題となろう。
- 1.高度成長期に高い伸びを続けた国内貨物全体の輸送量は、1970年代に入ると産業構造の変化などから増勢が鈍化し、以降は極めて緩やかな増加傾向をたどっている。そうしたなかで、機動性に優れた自動車による貨物輸送は、多頻度小口輸送が求められるようになったこともあり、重要性が高まってきた。
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1998-03-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年3月号 就業人口からみた県内各地域における産業構造と生産所得の変化
- 要約
- 1.神奈川ではこれまで、県内で働く就業者の伸びを上回るテンポで他県への通勤者が増え続け、東京のベッドタウンとしての性格を次第に色濃くしてきた。ところが90~95年の5年間には、神奈川県内における就業機会が他県との比較で相対的に拡大した。
2.もっとも県内市区町村別には、横浜市中区や川崎市川崎区など7地域で就業人口が減少するなど、地域によるばらつきもみられた。また、横浜市で伸びが高い反面、川崎市などその他の地域では総じて低調な伸びにとどまり、神奈川県の内部では横浜へ就業者が集中する傾向がうかがわれる。
3.就業人口の動向をもとに、県内60市区町村別の域内総生産を試算した結果によると、90~95年の間に12地域でマイナス成長となる一方、14地域で10%を超える高成長を遂げた。こうしたばらつきが生じた背景には地域ごとの基盤産業の浮沈があり、とりわけ製造業への依存度が高くそれに替わる目立った産業が現れなかった地域では大幅なマイナス成長となった。
4.東京通勤圏の拡大傾向に限界がみられるなか、神奈川が今後とも繁栄を続けていくためには、就業者の供給源としてベッドタウンの役割を果たすだけでなく、地域で自ら雇用を創出することがこれまで以上に重要になってこよう。そのためには主力となる産業の育成や高付加価値化を推し進めることなどを通じて、地域経済の活力を維持・向上させていくことが求められよう。
- 1.神奈川ではこれまで、県内で働く就業者の伸びを上回るテンポで他県への通勤者が増え続け、東京のベッドタウンとしての性格を次第に色濃くしてきた。ところが90~95年の5年間には、神奈川県内における就業機会が他県との比較で相対的に拡大した。
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1998-04-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年4月号 神奈川の学習塾と結婚式場業
- 要約
- 1.「団塊ジュニア」は「団塊の世代」とともに、人口構成の上で大きなボリュームを持つ世代である。神奈川は全国のなかでも団塊ジュニアの層が厚い地域で、彼らのライフステージの移行は各産業のマーケットに影響を及ぼす。近年では、学習塾や結婚式場業などでこの影響が大きいとみられる。
2.県内の学習塾業界のマーケットは、団塊ジュニアが学齢期を過ぎたことから縮小傾向にある。生徒数確保のために大手を中心に各社ともきめ細かい教室展開を図っているが、生徒が集まり売上高の拡大が続く塾がある一方、生徒数の減少で売上高が停滞する塾も増えており、業績の二極分化が明確となっている。
3.今後、少子化の進展に伴い学習塾業界のマーケットはさらに縮小し、経営環境は一段と厳しくなることが予想される。このため、県内の各学習塾は対象年齢の拡大や授業内容の多様化、通信教育への参入など競争に生き残るための様々な対応を模索している。
4.一方、結婚式場業のマーケットは、団塊ジュニアが結婚適齢期に差し掛っていることから拡大基調にある。県内の結婚式場業のマーケットは他地域に比べて大きく、96年の売上高は全国第4位の規模である。
5.しかし、ホテル数の急増などから最近では県内結婚式場間の競争は激化しており、多くの式場が低価格戦略を打ち出して利用客の増加に努めている。
6.西暦2000年をピークに結婚式場業のマーケットは縮小に向かうが、県内の各式場が将来的に顧客を獲得し、競争に生き残っていくためには、顧客のオリジナル婚志向に柔軟に対応できる体制を整えるほか、再婚マーケットなど新規市場の開拓に積極的に取り組んでいくことが不可欠である。
- 1.「団塊ジュニア」は「団塊の世代」とともに、人口構成の上で大きなボリュームを持つ世代である。神奈川は全国のなかでも団塊ジュニアの層が厚い地域で、彼らのライフステージの移行は各産業のマーケットに影響を及ぼす。近年では、学習塾や結婚式場業などでこの影響が大きいとみられる。
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1998-05-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年5月号 神奈川の対事業所サービス業-広告・ビルメンテナンス・人材派遣業の動向を中心に
- 要約
- 1.わが国経済のサービス化が進展している。ただ、サービス化の進展はすべての地域で一様ではなく、地方圏に比べて大都市圏で進展のテンポが速い。その背景の一つとして、大都市圏における対事業所サービス業の高成長がある。
2.技術革新や消費者ニーズの多様化、企業のコスト削減意識の高まりなどから神奈川でも対事業所サービス業は高成長を遂げてきた。県内対事業所サービス業の特徴には、(1)全国でも上位の高集積、(2)製造業との関係が強い、(3)情報サービス業の成長が著しい、(4)東京への需要流出がみられる、などがある。
3.もっとも、90年代に入ると景気の長期低迷を背景に県内対事業所サービス業の成長ペースは鈍化している。近年の動向を個別業種ごとにみると、まず、県内広告業は地域の商業や不動産業の業績不振から90年代前半の落ち込みが全国に比べ大きく、現状も厳しいとみられる。県内広告業には地域の発注元企業のニーズに的確に対応していくことが一層求められる。
4.次に、ビルメンテナンス業については、継続受注物件の契約額が更新前に比べて減少するなど県内企業の経営環境は厳しさを増している。今後も民間、公共とも新規のビル建築に多くを期待できないなかで、売上高に対して約7割の比率に達するといわれる人件費の抑制が急務となっている。
5.最後に、人材派遣業は、企業のコスト削減ニーズや専門的な知識・技術を有する人材の必要性が高まっていることから、平成不況下の落ち込みを脱して成長過程に戻っている。県内では事務要員はもとより、ソフトウェア開発や機械設計など高度なニーズに対応するための人材の確保と育成が課題である。
- 1.わが国経済のサービス化が進展している。ただ、サービス化の進展はすべての地域で一様ではなく、地方圏に比べて大都市圏で進展のテンポが速い。その背景の一つとして、大都市圏における対事業所サービス業の高成長がある。
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1998-06-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年6月号 競争激化への備えが急がれるドラッグストア業界
- 要約
- 1.消費不況の下、小売業の業態間格差が広がるなかで、ドラッグストアの急成長が続いている。ドラッグストアの成功要因は、健康や美容への関心の高まりといった消費者ニーズの変化に応える新しい小売業態として、売り方や品ぞろえなどに様々な工夫を凝らしたという点に集約できる。
2.そうした戦略を可能にした制度的な背景としては、90年代に入って進められた一連の規制緩和があげられる。具体的には大店法の緩和措置により出店が機動的に行えるような環境が整ったこと、医薬品販売に関する自由化の進展などによって低価格と品ぞろえの拡充が実現したことである。
3.神奈川県内においてもドラッグストアの出店が近年急増している。店舗の分布状況をみると、横浜市郊外や県央で多く、県西や三浦半島では少ない。そこで、医薬品・化粧品関連需要の地域内における充足度合いなどを目安に、県内市区町村別に出店余地を探ったところ、横浜市保土ヶ谷区、川崎市麻生区などで新規出店の余地が残されているという結果が得られた。
4.ドラッグストア業界の今後を展望した場合、業態内外からの参入が活発化することや、利幅の厚い医薬品に依存した現状の収益構造の維持が困難になることなど、事業環境はこれまで以上に厳しさを増すものと予想される。
5.そうしたなかドラッグストアは、集客力アップを狙った店舗の大型化・複合化、調剤部門の拡充などにより、競争激化への備えを急いでいる。各店が個性を失い、価格競争の消耗戦に陥らないためには、業容拡大をあせることなく、地域特性に合わせた出店で着実に成功店舗を積み重ねていくことが重要となろう。
- 1.消費不況の下、小売業の業態間格差が広がるなかで、ドラッグストアの急成長が続いている。ドラッグストアの成功要因は、健康や美容への関心の高まりといった消費者ニーズの変化に応える新しい小売業態として、売り方や品ぞろえなどに様々な工夫を凝らしたという点に集約できる。
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1998-07-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年7月号 神奈川県民のスポーツ活動の実態と県内スポーツ施設産業の動向
- 要約
- 1.神奈川は全国のなかでも県民のスポーツ活動が活発な地域である。県民のスポーツ活動の特色は、(1)健康維持を目的として中高年齢層の参加率が高いこと、(2)主婦層を中心に休日だけでなく平日の活動も活発なこと、(3)余暇時間を有効に使って多種多様な種目に参加していることである。
2.主成分分析によって各都道府県民のスポーツ活動を類型化すると、神奈川は東京や大阪などとともにエアロビクスやジャズダンス、テニスといった都市型のスポーツに特化した地域として特徴づけられる。
3.ゴルフ練習場、テニスクラブ、フィットネスクラブ、ボウリング場といったバブル期に急成長したスポーツ施設産業は、神奈川県内ではいずれも他地域に比べて大きなマーケットを形成している。しかし、バブル崩壊後は厳しい経営環境に直面しており、以下の
4業界の動きにみるように施設間の競争は激化傾向にある。
【ゴルフ練習場業界】
利用客数の伸び悩みで閉鎖や業態転換する施設が相次いでいる。ただ、一方で新たに練習場を開設する動きも広がっており、新規施設は既存施設の利用客を吸収する形で業容を拡大している。
【テニスクラブ業界】
全国第1位の集積であるが、公共施設との競争が激化しており、料金の大幅引き下げによる利用客の確保に努めている。【フィットネスクラブ業界】バブル崩壊以後停滞しており、各クラブとも料金の値下げや、付帯施設の拡充により会員数の増強を図っている。
【ボウリング業界】
ハイテク設備の導入もあって競技人口が拡大したためバブル崩壊後もしばらくは高成長を続けた。90年代に入り施設数も増加傾向にあるが、景気低迷の長期化から足下の業況は悪化しつつある。
4.スポーツ施設が今後の競争に生き残るためには、業界が一体となってマーケットを拡大していくと同時に、ハード、ソフトの両面でサービスを充実させ他施設との差別化を図っていくことが重要である。
- 1.神奈川は全国のなかでも県民のスポーツ活動が活発な地域である。県民のスポーツ活動の特色は、(1)健康維持を目的として中高年齢層の参加率が高いこと、(2)主婦層を中心に休日だけでなく平日の活動も活発なこと、(3)余暇時間を有効に使って多種多様な種目に参加していることである。
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1998-08-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年8月号 神奈川のガソリンスタンド業界
- 要約
- 1.近年の規制緩和によって、消費者がメリットを享受する一方で、規制緩和の実施された業界では企業間の競争が激化している。ガソリンスタンド業界においても、80年代を通して横ばいとなっていたガソリンスタンド数が規制緩和を背景に90年代前半に増加したことから競争が激化し、その結果近年ではガソリン小売価格の下落が続いている。
2.県内ガソリンスタンド業界の経営環境をみると、(1)ガソリンスタンド1か所あたりの販売量が大きい、(2)ガソリンスタンドの密集度合いが高い、(3)ガソリン小売価格が全国平均に比べて安価である、などが特徴となっている。
3.県内ガソリンスタンドは、需要に恵まれる反面、価格競争が厳しく、さらに人件費や金融費用などの固定費負担が大きいことから、ガソリンスタンドを経営する企業の収益の悪化が全国以上に著しい。県内企業の1社あたりの経常利益は95、96年度と2年連続で赤字に陥っている。
4.企業収益の悪化に加え、石油元売り各社は系列のガソリンスタンド数を削減する方針を打ち出しており、今後ガソリンスタンド業界は本格的な淘汰の時期を迎えるとみられる。そうしたなかで、ガソリンスタンドを経営する企業の対応策としては、立地とターゲットとする顧客の特性を見極めたうえで、(1)セルフ方式などによる量販の徹底、(2)自動車関連商品やサービスの充実、(3)経営の多角化、などを図ることがあげられよう。
- 1.近年の規制緩和によって、消費者がメリットを享受する一方で、規制緩和の実施された業界では企業間の競争が激化している。ガソリンスタンド業界においても、80年代を通して横ばいとなっていたガソリンスタンド数が規制緩和を背景に90年代前半に増加したことから競争が激化し、その結果近年ではガソリン小売価格の下落が続いている。
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1998-09-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年9月号 21世紀初めにかけて年率2~3%の潜在成長が見込まれる乗用車市場
- 要約
- 1.97年4月以降、乗用車販売の不振が長引いている。販売不振をもたらした要因としてはまず駆け込み需要の反動減があげられるが、97年度下期以降については雇用不安を背景とした消費マインドの悪化による買い控えの影響が大きい。また、所得が伸び悩むなか乗用車の価格が相対的に高止まっていること、耐久性の向上や車検制度の改正により買い替えサイクルが延びていることも、新車販売を抑制する一因となっている。
2.平成不況後における消費者のクルマに対するニーズは、個性化・多様化の傾向がより鮮明となっている。その変化を象徴的に表しているのがRVブームであり、最近では新車販売台数のおよそ半数がRV系車種によって占められている。そうした背景には、クルマに関するステイタス意識の崩壊など消費者の価値観が変化していることに加え、セダンやクーペといった伝統的なスタイルの車種に対して飽きが生じてきていることを指摘できよう。
3.全国および神奈川における新車販売台数の中期需要予測を試みた結果によると、雇用環境や消費マインドの安定を前提とした潜在的な市場の伸びは、全国においては98~2000年度に年率3.3%、2001~05年度には同2.1%の成長、県内においてはそれぞれ2.9%、2.2%の成長が見込まれよう。全国、神奈川ともに新規・買い増し需要は減退し、買い替え需要への依存度がさらに高まっていく見通しである。
4.かつてのような量的拡大が見込めない状況下で、売り手側のカーディーラーにとっては、拡大志向に基づく新規開拓中心の戦略を、既存顧客の満足度を高める囲い込み戦略へと転換する必要性が高まっており、販売台数が伸びないなかでも利益が出せる経営体質に早期に変革していくことが課題となっている。カーディーラーを流通業としてとらえてみると、生き残りのためには、(1)ストアコンセプトを明確にしてクルマ関連の商品・サービスを拡充する業態化、(2)複数メーカーの車種を取り扱うマルチディーラー化、(3)もっぱら価格訴求力を高めるカテゴリーキラー化といった発展方向が考えられる。
- 1.97年4月以降、乗用車販売の不振が長引いている。販売不振をもたらした要因としてはまず駆け込み需要の反動減があげられるが、97年度下期以降については雇用不安を背景とした消費マインドの悪化による買い控えの影響が大きい。また、所得が伸び悩むなか乗用車の価格が相対的に高止まっていること、耐久性の向上や車検制度の改正により買い替えサイクルが延びていることも、新車販売を抑制する一因となっている。
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1998-10-01
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産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年10月号 わが国工業生産における地域間格差の諸実態
- 要約
- 1.90年代に入って大都市圏と地方圏間で工業生産力の格差が明確に現れてきた。製造業の工場数、従業者数は両地域ともバブル崩壊以降減少傾向にあるが、落ち込み幅は小規模工場を中心に大都市圏のほうが大きくなっている。
2.製造品出荷額も大都市圏では91年のピークから大幅に減少した。地方圏は全体としては落ち込んでいるが、減少幅は大都市圏に比べて軽微であり、東北や九州など増勢が続く地域もある。出荷額の動きに地域的な差異が生じた理由としては、バブル期に製造業の地方展開が活発化したことが挙げられる。
3.中小企業の生産活動は全国的に不振であるが、大都市圏と地方圏ではその性格を異にする。すなわち、加工組立型業種が集中する大都市圏では、親企業の海外進出に伴う受注減少から下請企業の経営が不振となっているのに対して、地場産業が多く集積する地方圏では景気低迷による需要の減退が中小企業の経営悪化につながっている。
4.工業活力の地域的な差異は国の産業立地政策によってももたらされた。政策的に都市圏から地方圏への工場分散を促進した結果、三大都市圏の工場数や出荷額の対全国シェアは50%を下回るようになり、敷地面積もマイナスの伸びとなるなど、モノ造りという面で大都市圏域の工業は転機に立っている。
5.生産機能が大都市圏から地方圏へシフトするなか、大都市圏、とくに東京圏の製造業では地方圏に先駆けて研究開発機能への特化が進んだ。
6.大都市圏における工業活力の低迷を受け、国は地方圏重視の産業立地政策を見直し、都市部への立地容認や地域の自主性を重視する政策に転換し始めた。そうしたなか、各自治体は独自色のある企業誘致策や支援策を打ち出すことが求められている。
7.各製造企業が将来的に発展していくためには、行政の支援にも増して自助努力が不可欠である。大都市圏の企業においては、垂直的分業からの脱却により経営基盤を固めるとともに、大学など研究機関との連携により技術力・研究開発能力を高めていくことが肝要である。
- 1.90年代に入って大都市圏と地方圏間で工業生産力の格差が明確に現れてきた。製造業の工場数、従業者数は両地域ともバブル崩壊以降減少傾向にあるが、落ち込み幅は小規模工場を中心に大都市圏のほうが大きくなっている。
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1998-11-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年11月号 情報化の進展により急成長を遂げたわが国の通信関連産業
- 要約
- 1.近年、わが国において情報化のテンポが速まっている。その背景には、携帯電話などの移動体通信とインターネットを核とするデータ通信の利用が急激に拡大したことがあるが、それらの普及を通信技術の発達と通信手段の多様化という側面から支えてきたのが通信関連産業である。
2.通信関連産業のうち通信機器製造業をみると、通信機器の生産額は80年代には有線通信機器を、90年代に入ると携帯電話などの無線通信機器を中心に好調に推移してきた。特に近年においては移動体通信機器の生産額の急伸によって通信機器製造企業の売上高は大きく増加し、収益性も高水準となった。
3.通信サービスを提供する通信業についても、第1種電気通信事業者では携帯電話などの移動体通信サービスを、第2種電気通信事業者においてはインターネットへの接続サービスを中心に市場規模が急拡大した。ただ、ここへきて事業者間の競争は厳しさを増しており、その結果として携帯電話会社によるPHS事業の吸収、プロバイダーの撤退など再編の動きもみられる。
4.移動体通信やデータ通信は急速な普及段階を終えつつあり、これらを中心とした通信関連産業の急成長は当面鈍化していく可能性が高い。しかし、国民生活の利便性や企業の生産性の向上を支える通信関連産業の今後の成長に対する期待は大きいと考えられ、その観点からは、通信インフラ整備における政策的な後押しが必要であろう。また、ユーザーのニーズに合った製品やサービスを低コストで提供するための企業努力が一層求められる。
- 1.近年、わが国において情報化のテンポが速まっている。その背景には、携帯電話などの移動体通信とインターネットを核とするデータ通信の利用が急激に拡大したことがあるが、それらの普及を通信技術の発達と通信手段の多様化という側面から支えてきたのが通信関連産業である。
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1998-12-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1998年12月号 全国の情報化をリードする神奈川の通信関連産業
- 要約
- 1.神奈川は、家庭でパソコンを楽しむ人の割合が全国で最も高く、また、1企業あたりのパソコン台数や自治体における業務の電算化率も全国で上位にあるなど、情報化の先進地域であるといえる。特に民間部門における情報化の進展度合いは、所得水準の高さや都市型のライフスタイル、大規模事業所を中心とした積極的な情報化投資、などを背景に全国トップクラスにある。
2.県内の通信関連産業は、(1)通信機器製造業が全国最大の生産拠点を形成していること、(2)先端製品・高付加価値品の生産が中心であること、(3)通信分野の研究開発拠点の集積も厚いこと、の3点で全国の情報化をリードしている。
3.現在、県内では新たな情報通信基盤の整備や情報通信技術の活用への取り組みが進められている。具体的には、県が市区町村や民間企業とともにCATVを利用した情報通信基盤の整備について検討を始めているほか、民間企業などが業務の効率化や新ビジネスに情報通信技術を利用する例もみられる。
4.通信関連産業や研究開発拠点の高集積、情報通信基盤の整備や情報通信技術の活用への取り組みなどにより、今後も神奈川は全国の情報化のリード役を担うことが期待される。ただ、情報化の目的である生活の利便性や企業の生産性向上などを実現するためには、誰もが恩恵を享受できる形で情報化を進めることが必要である。通信関連産業にとっては、より使いやすく利便性の高い製品やサービスの提供によってユーザー・インターフェース(使い勝手)を高めていくことが今後の課題となろう。
- 1.神奈川は、家庭でパソコンを楽しむ人の割合が全国で最も高く、また、1企業あたりのパソコン台数や自治体における業務の電算化率も全国で上位にあるなど、情報化の先進地域であるといえる。特に民間部門における情報化の進展度合いは、所得水準の高さや都市型のライフスタイル、大規模事業所を中心とした積極的な情報化投資、などを背景に全国トップクラスにある。
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1999-01-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年1月号 99年度の神奈川県内経済の見通し
- 要約
- 1.98年度の神奈川県経済は、個人消費や住宅投資の低迷が続いたことに加えて設備投資、輸出の減少傾向が鮮明になったことから前年度に比べて不況色が一段と強まった。
2.99年度を展望すると、減税や公共投資の政策効果が年度前半を中心に県内景気を下支えするが、(1)公共投資については地方財政の悪化を背景に単独事業が十分に執行されないため、国の補助事業の効果が薄れる年度後半から前年比マイナスに転じること、(2)製造業を中心に企業の生産・雇用調整が続くこと、などが全国と比べて県内景気の回復力を弱めることになる。(3)こうしたなかで、2000年度に向けて県内景気が自律的に回復していくためには企業や家計のマインドが改善に向かうことが不可欠である。
3.実質県内総支出の伸びは97年度の-0.9%(県速報値)から、98年度は-3.3%と減少幅が拡大し、99年度は-1.0%と3年連続のマイナス成長となる。
- 1.98年度の神奈川県経済は、個人消費や住宅投資の低迷が続いたことに加えて設備投資、輸出の減少傾向が鮮明になったことから前年度に比べて不況色が一段と強まった。
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1999-02-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年2月号 深刻化する大都市圏自治体の財政難
- 要約
- 1.地方財政の悪化が顕著となっている。その要因としては、歳入面では景気低迷を背景とした税収の落ち込み、歳出面では経済対策に伴い拡大した単独事業の高止まりがあげられる。
2.ただ、財政悪化の程度は地方圏の自治体よりも大都市圏の自治体で著しい。大都市圏では法人関連を中心に歳入の柱である税収が大幅に減少しているが、現行の地域間財源調整の仕組みの下ではそうした歳入不足を国からの補てんによって埋め合わせることができないためである。
3.近い将来に予想される少子・高齢化の進展が地方財政に及ぼす影響に関して試算を行ったところ、現在の歳入・歳出の構造を変更しないという前提の下では財政状況の一層の悪化は避けられず、とりわけ大都市圏自治体への打撃が大きいという結果が得られた。
4.これは、大都市圏から地方圏への財源シフトの仕組みを今後とも維持していくことが困難になることを示唆しており、国と地方の役割分担の見直しとそれに伴う財源配分の再構成が急務であると考えられる。
5.とはいえ、地域間の財源配分は国全体の政策に関わる問題であり、その見直しを進めていくには住民を巻き込んだ議論が必要となろう。各自治体としては、そのための手段としてまずは財政等に関する情報公開を積極的に進め、地域住民への説明責任を果たすことが大切である。
- 1.地方財政の悪化が顕著となっている。その要因としては、歳入面では景気低迷を背景とした税収の落ち込み、歳出面では経済対策に伴い拡大した単独事業の高止まりがあげられる。
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1999-03-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年3月号 90年代に転機を迎えたファミリーレストラン・ファストフード業界
- 要約
- 1.1970年代に誕生したファミリーレストランとファストフードは、気軽に利用できる店舗を展開し、手ごろな価格で多様なメニューの食事を提供したことなどから急速に成長してきた。この結果、97年には両者で外食産業全体の年間販売額の2割程度を占めているとみられる。
2.神奈川は全国のなかでもファミリーレストランとファストフードの店舗数が多い地域である。また、年間販売額でみても97年における県内外食産業に占める構成比は両者の合計で2割強にのぼるとみられ、これらの業態が県内外食市場の拡大に果たした役割は全国に比べて大きかったことがうかがわれる。
3.もっとも、90年代に入ってからはファミリーレストランやファストフードにおける既存店の売上高が減少傾向を続けており、これらを経営する企業の収益性も低迷している。その要因としては、景気の長期低迷に加えて、外食産業内の競合および中食産業との競合の激化があげられる。
4.そうした厳しい経営環境下でも良好な収益性を維持している企業では、1店舗あたり売上高や客単価の落ち込みが小さく、また、新規の店舗展開を既存店の集積が厚い地域に集中している、などの特徴がみられる。
5.中長期的に外食市場を展望する場合、注目されるのが人口の高齢化の影響である。高年齢層は若い世代と比べて外食の利用頻度が少ないため、高齢化は外食市場の規模に対してマイナスの要因となる。したがって、今後高年齢層に移る世代の外食頻度の低下をくい止め、高年齢者のマーケットを取り込むための対応を図ることも、ファミリーレストランやファストフードをはじめ外食産業全体にとって重要な戦略といえよう。
- 1.1970年代に誕生したファミリーレストランとファストフードは、気軽に利用できる店舗を展開し、手ごろな価格で多様なメニューの食事を提供したことなどから急速に成長してきた。この結果、97年には両者で外食産業全体の年間販売額の2割程度を占めているとみられる。
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1999-04-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年4月号 神奈川における90年代の工業生産力の変化とその背景
- 要約
- 1.県内製造業の生産活動は90年代に入ってから著しく低迷している。90年を基準とする鉱工業生産指数でみると、全国に比べて神奈川は落ち込み幅が大きく、かつ低下した期間が長期にわたった。この結果、97年時点の水準は全国で最も低いレベルとなった。また、90~97年の間に県内製造業の出荷額の減少幅は3兆円を超え、従業者数も約13万人、工場数も約4千か所それぞれ減少した。こうした落ち込みは特に加工組立型業種において顕著である。
2.このように県内製造業が全国に比べても著しく低迷しているのは、円高の進展を契機に大企業を中心として県内生産拠点を海外や県外に移転する動きが強まり、その背後で中小企業を中心に廃業率が急上昇したためである。
3.一方、県内の生産拠点は高付加価値製品に軸足を移してきており、80年代に比べて90年代の県内従業者1人あたりの付加価値額は急増している。
90年代における県内生産品目の変化を考慮すると、神奈川は90年からの生産の落ち込みに構造変化が大きく影響した地域と結論づけられる。
4.県内製造品の付加価値が高まった背景として、神奈川においては90年代に拠点数が倍増するなど研究開発機能の集積が進んでいることや、それをサポートするサービス業の集積が厚いことなどがあげられる。
すなわち、県内製造業の拠点はモノ造りから研究開発などチエづくり分野へと機能をシフトしてきている。
5.このように神奈川においては製造業の構造変化が著しいが、そうしたなかでの行政の対応としては、モノ造りからチエ造りへと製造業の高度化を促進する一方で、サービス業の振興を広く図るなど、今後の産業構造の変化を見据えた先見性のある施策が望まれる。
- 1.県内製造業の生産活動は90年代に入ってから著しく低迷している。90年を基準とする鉱工業生産指数でみると、全国に比べて神奈川は落ち込み幅が大きく、かつ低下した期間が長期にわたった。この結果、97年時点の水準は全国で最も低いレベルとなった。また、90~97年の間に県内製造業の出荷額の減少幅は3兆円を超え、従業者数も約13万人、工場数も約4千か所それぞれ減少した。こうした落ち込みは特に加工組立型業種において顕著である。
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1999-05-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年5月号 低価格志向と購入数量の絞り込みが目立つ最近の家計消費
- 要約
- 1.90年代前半における「価格破壊」の進展時に強まった消費者の低価格志向は、90年代後半に入っても依然として強い。このことは、最近におけるヒット商品の特性のひとつに「低価格」があることからも推察される。
2.価格破壊の進展時には価格が低下するなかで家計による商品の購入数量が増加したが、90年代後半の局面では購入数量が伸び悩んでおり、消費者は低価格を重視するとともに、量的に支出を抑制する姿勢を強めている。このため、90年代前半に業容を拡大したディスカウントストアなどの業態でも、最近は販売数量の伸び悩みから売上高の増勢が鈍化し、収益性も低下している。
3.しかしながらその一方で、百円ショップやアウトレットモールのように急成長する小売業態もある。これらの業態が好調な要因としては、低価格に買い物の楽しさを付加した売り方が消費者に支持されていることがあげられる。
4.多くの商品で低価格販売が浸透している現状を考えると、小売業者が競争に打ち勝っていくためには、単に価格を引き下げるばかりでなく、売り方の工夫によって集客力を高める努力が必要となる。具体的には、百円ショップやアウトレットモールにみるエンターテイメント性のほか、利便性、商品そのものの価値、付随サービスなどを高めていく戦略がより重要となろう。
- 1.90年代前半における「価格破壊」の進展時に強まった消費者の低価格志向は、90年代後半に入っても依然として強い。このことは、最近におけるヒット商品の特性のひとつに「低価格」があることからも推察される。
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1999-06-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年6月号 不況下でも伸長著しい深夜ビジネス
- 要約
- 1.消費不況のもとで小売りやサービス関連企業の多くが業績悪化に苦しむなか、夜間も昼間と同じように商品・サービスを提供する深夜ビジネスが活況を呈し、関連する企業の好業績が目立っている。
2.深夜ビジネスの潮流は、バブル期の「レジャー志向型」から最近では日常生活に密接に関連した「生活シーン充実型」へと方向転換している。同じく深夜時間帯に日常的な商品・サービスを提供する業態としてはコンビニエンス・ストアがよく知られているが、最近の深夜ビジネスはコンビニと比べ品揃ぞろえやサービスのメニューが豊富かつ専門的なことが強みとなっている。
3.深夜ビジネス伸長の背景には、需要側である消費者行動の変化として、残業時間の減少などにより夜間における自由時間が増えていることがある。一方、供給側である企業の意図としては、市場が飽和状態にあるなかで事業機会の拡大を深夜営業に求めたことなどがあげられよう。
4.ただ、深夜ビジネスが成功するか否かは事業ごとのコスト構造の違いに大きく左右される。すなわち、洗濯業や理容・美容業といった総費用に占める直接人件費の割合が大きい労働集約的な事業では、営業時間延長によるコスト増を抑制し難いため、深夜ビジネスで採算を確保することが困難となる。一方、小売業全般や、レンタルビデオ店などの物品賃貸業、駐車場業などは直接人件費の割合が小さいため深夜ビジネスに向いているといえる。
5.消費者の生活パターンが一段と夜型となるなかで、今後も消費者ニーズに対応した様々な深夜ビジネスの登場が予想される。また、近年導入の機運が高まっているサマータイム制度は新たな深夜マーケット誕生のきっかけとなり得よう。ただ、深夜ビジネスに取り組むにあたっては、事業のコスト構造の特性を考慮するとともに、期間限定で深夜営業を行うなどの試験的運用により本格展開の前にその適否を検討することが必要である。
- 1.消費不況のもとで小売りやサービス関連企業の多くが業績悪化に苦しむなか、夜間も昼間と同じように商品・サービスを提供する深夜ビジネスが活況を呈し、関連する企業の好業績が目立っている。
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1999-07-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年7月号 公的介護保険制度の導入を契機に成長が期待される介護関連ビジネス
- 要約
- 1.わが国には、介護を要する高齢者に対して公的に介護サービスを供給する福祉の制度(措置制度)が従来から用意されている。ただ、利用のしにくさや供給力の不足などから実態としては家族による介護が大きな役割を担っている。
2.2000年4月に導入される予定の公的介護保険制度は、措置制度に代わる介護サービス供給の枠組みである。公的介護保険制度が導入される運びとなったのは、措置制度や家族介護では今後も続くとみられる介護需要の増加と家族の介護能力の低下に対応することが困難であり、需要量に見合った供給力を確保するための新たな仕組みが不可欠となったからである。
3.公的介護保険制度の下では、自由に介護サービスの種類や提供事業者を選択できるようになるため利用者の利便性が高まることが期待される。同時に、民間営利事業者にとっては在宅介護サービス事業の展開が従来に比べて容易になる。このため制度の導入前から、すでに介護ビジネスを手がけている企業が事業を拡大していることに加え、異業種からの参入も本業との相乗効果が期待できる分野を中心に活発化している。
4.在宅介護サービス市場の拡大は今後本格化し、介護関連ビジネスの展開もさらに活発化するとみられる。ただ、介護関連ビジネスは総じて労働集約的であることから高い収益性は期待しがたい。一方、公的介護保険制度の導入当初は需要量が供給力を上回る可能性が高いため、サービス水準の低下が懸念されている。このため、企業には収益性を確保すると同時に、公共性・公益性の認識を持ってサービス水準の維持・向上に努めることが求められる。
- 1.わが国には、介護を要する高齢者に対して公的に介護サービスを供給する福祉の制度(措置制度)が従来から用意されている。ただ、利用のしにくさや供給力の不足などから実態としては家族による介護が大きな役割を担っている。
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1999-08-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年8月号 消費者の選別眼が強まるなかで競争が激化する県内マンション市場
- 要約
- 1.わが国では、90年代半ば以降、新設住宅建築に占める持家系住宅の比重が大きくなっている。とくに3大都市圏では、持家系住宅のなかでもマンション建築の増加が顕著であり、住宅市場におけるマンション市場のウエイトが目にみえて大きくなっている。
2.92年秋以降は、バブル崩壊後に相次いで打ち出された経済対策に呼応するかたちで首都圏のマンション市場が大きく拡大した。この背景には、住宅取得促進政策の後押しやマンション価格の下落によって、首都圏ではマンションの取得がかなり容易となったことがある。なお、都県別にみると、マンション供給の増加は東京都と神奈川県で顕著となっている。
3.最近の神奈川県内におけるマンション供給状況をみると、価格低下が続くなかで(1)専有面積の拡大、(2)郊外地域での大規模マンションの増加、(3)利便性の高い好立地物件の増加、といった特徴がみられる。こうした品質面の向上によって最近県内で供給されるマンションは購入者にとってかなり割安となっている。
4.最近は、販売面の持ち直しなどから首都圏の不動産業者の業況感が徐々に改善してきているが、一方では、物件に対する消費者の選別眼が強まるなかで低価格物件を中心に供給が増加しているため、販売が難しくなっている。今後については、当面は一次取得者を中心に需要が好調に推移するとみられるものの、所得の先行きに対する期待の薄まりもあって消費者の行動がますます慎重化する可能性が高く、不動産業界では販売競争が一段と激しくなると考えられる。
- 1.わが国では、90年代半ば以降、新設住宅建築に占める持家系住宅の比重が大きくなっている。とくに3大都市圏では、持家系住宅のなかでもマンション建築の増加が顕著であり、住宅市場におけるマンション市場のウエイトが目にみえて大きくなっている。
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1999-09-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年9月号 少子化の逆風のなか底堅く推移する90年代の子供向け市場
- 要約
- 1.少子化傾向が続くなか、対象人口の大幅減という事態に直面することとなった子供向け市場は、90年代に入りそれまでの拡大基調から縮小に転じている。ただ、新規需要の拡大などにより子供1人にかける支出額が増えていることから、子供数の減少テンポに比べて子供向け市場の縮小は緩やかなものにとどまっている。
2.家計の支出面をみると、少子化を反映して親の関心や期待が少数の子供に集中していることなどから、消費全体に占める子供向け支出の割合は上昇を続けている。また、この傾向はとりわけ乳幼児を持つ世帯で顕著であり、その要因としては、(1)ベビー用品を中心に従来はなかった利便性の高い商品が次々と登場し、母親の購買意欲を刺激したことに加え、(2)祖父母からの資金的な援助が子供向け支出をかさ上げしていること、などが考えられる。
3.乳幼児向け市場において近年伸びが著しい商品分野の代表例として、紙おむつなどのトイレタリー関連、ベビーフードなどの食関連、さらにチャイルドシートなどがあげられる。仕事を持つ母親の増加を背景とした家事の簡便化ニーズや、衛生面など商品の安全性への関心の高まりに対して、企業側が的確に消費者に訴求する商品を開発し、新しい需要を創出したことが伸長の要因といえる。
4.今後の子供向け市場を展望すると、子供数の減少テンポがこれまでに比べ緩やかになるため、21世紀初頭には拡大に転じると予想される。ただ、消費全体の低い伸びを前提とする限り、子供向け市場も急成長は期待できない。企業としては、子供1人あたりの支出額をいかにして高めるかが子供向け市場で生き残っていくカギとなるため、ニーズを的確にとらえたきめの細かいマーケティングの重要性がますます高まってこよう。
- 1.少子化傾向が続くなか、対象人口の大幅減という事態に直面することとなった子供向け市場は、90年代に入りそれまでの拡大基調から縮小に転じている。ただ、新規需要の拡大などにより子供1人にかける支出額が増えていることから、子供数の減少テンポに比べて子供向け市場の縮小は緩やかなものにとどまっている。
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1999-10-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年10月号 大規模展示場の開設と情報通信技術の活用が進む最近の中古車販売業界
- 要約
- 1.わが国の中古乗用車販売は90年代後半に入って不振が続いている。その要因としては、(1)所得の伸び悩み、(2)良質な中古車の減少、(3)新車の低価格化に伴う中古車購買層の新車購入へのシフト、などが考えられる。
2.こうした販売不振にもかかわらず、中古乗用車の販売を手がける店舗の数は増加している。とりわけ最近では新車ディーラーや中古車の買い取り専門店などの自動車関連企業が中古車の小売り販売に注力していることに加え、情報通信技術を活用して異業種から中古車販売に参入する例も目立っている。
3.神奈川の中古車販売業界には、(1)市場規模が大きいこと、(2)潜在的な需要に恵まれており経営環境が良好であること、などの特徴がある。こうしたマーケットとしての魅力を背景に、神奈川の中古車販売店は全国のなかでも厚い集積を誇っている。また、近年では新車ディーラーなどが中古車を扱うケースが著しく増加している。
4.今後については、自動車市場全体がすでに成熟段階にあるため中古車市場も急速な伸びは期待しがたい。その一方で新規参入の動きが活発なことなどから中古車販売業界における競合はさらに激しさを増すと考えられる。このため個々の販売業者には、(1)収益性の向上、(2)販売機会の拡大、(3)良質な中古車の確保、を実現することがこれまで以上に求められており、その具体的な手段として最近進んでいる展示場の大規模化と情報通信技術の活用が一段と進展するとみられる。そうした動きのなかで、今後の中古車流通は、中古車の買い取りから販売までを一貫して手がけたり、中古車の売り手と買い手をより迅速にかつ効率よく結びつける方向へと徐々に変容していくであろう。
- 1.わが国の中古乗用車販売は90年代後半に入って不振が続いている。その要因としては、(1)所得の伸び悩み、(2)良質な中古車の減少、(3)新車の低価格化に伴う中古車購買層の新車購入へのシフト、などが考えられる。
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1999-11-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年11月号 緩慢な改善がみこまれる今後の県内雇用情勢
- 要約
- 1.90年代に入って、東京圏における雇用情勢の悪化が際立っている。この背景には、経済成長の鈍化などから東京圏の産業が労働力人口の増加ペースを上回るだけの就業機会を提供できなかったことがある。とくに神奈川県内の産業においては、雇用の過剰度合いが全国と比べ大きかったために、企業の雇用吸収力が一層弱まったと考えられる。
2.そうしたなかで、就業構造も大きく変化しており、(1)サービス化の一段の進展、(2)規制緩和の恩恵を受けた分野での雇用拡大、(3)企業による非正規の職員・従業員の活用の活発化、の3つの潮流がみられる。とくに県内においては、製造業における専門・技術職の増大やサービス業における「自然科学研究所」従業者の増加など、より専門的な分野での雇用拡大が目立つ。
3.ただ、そうした就業構造の変化の裏側で、東京圏の労働市場では90年代の後半から需給のミスマッチが拡大し、雇用情勢を一層悪化させる要因となった。神奈川県においても、年齢層別にみた需給の緩和度合いの差が広がるなど、ミスマッチが拡大した。
4.最近時においては県内の雇用関連指標に底入れの兆しが見え始めており、県内の雇用情勢は悪化一辺倒という状況から徐々に落ち着きを取り戻してきている。しかしながら、企業の雇用過剰度合いが依然として大きいことや、ミスマッチの解消にはある程度の時間が必要なことなどを踏まえると、今後の雇用情勢の改善はきわめて緩やかになることが予想される。
- 1.90年代に入って、東京圏における雇用情勢の悪化が際立っている。この背景には、経済成長の鈍化などから東京圏の産業が労働力人口の増加ペースを上回るだけの就業機会を提供できなかったことがある。とくに神奈川県内の産業においては、雇用の過剰度合いが全国と比べ大きかったために、企業の雇用吸収力が一層弱まったと考えられる。
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1999-12-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報1999年12月号 資本ストックからみた県内製造業における過剰設備の現状
- 要約
- 1.1997年春に景気が後退局面に入って以降、全国、神奈川ともに設備投資の不振が際立っている。これは、現実の生産量に比べて生産能力が大幅に上回っているためであり、とりわけ製造業において生産設備の過剰度合いがかつてない水準に高まっている。
2.県内製造業の設備投資が全国と比べて振るわなくなったのは円高不況以降であり、その間、生産能力の調整が全国に先んじて進展した。近年における資本ストックの動きからみると、(1)90年代初頭をピークに減少を続けている、(2)電気機械や輸送機械といった主要業種での落ち込みが顕著である、(3)工場閉鎖にみられるように生産設備を除却する割合が高まっている、などの特徴がある。
3.この間、県内製造業では生産品目の高付加価値化を進めたことなどから資本効率の悪化は全国に比べて小さく、したがって生産設備の過剰度合いについても全国ほどには深刻化していないと考えられる。
4.一方で、近年では県内設備投資に占める非製造業の割合が一段と高まり、約75%に達している。非製造業の中でも、資本の生産効率の高低と設備投資の活発さという点では、サービス業、運輸・通信業、卸売・小売業の成長性が高く、今後の県経済のリード役となることが期待される。
5.神奈川県経済が今後も成長を持続していくためにはこうした成長期待の大きい分野に対して政策面から後押しをする必要があるとともに、生産能力の調整過程にある製造業に対しても事業転換や用地転用などが円滑に進むよう支援していくことが重要である。
- 1.1997年春に景気が後退局面に入って以降、全国、神奈川ともに設備投資の不振が際立っている。これは、現実の生産量に比べて生産能力が大幅に上回っているためであり、とりわけ製造業において生産設備の過剰度合いがかつてない水準に高まっている。
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2000-01-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年1月号 2000年度の神奈川県内経済の見通し
- 要約
- 1.1999年度の県内景気は、財政・金融両面からの政策効果により公共投資と住宅投資が拡大に転じるとともに、消費者心理の好転に伴い個人消費が一部で明るさを取り戻すなど県内需要の落ち込みに歯止めがかかったことから、春から夏にかけて下げ止まりの様相をみせた。もっとも、夏場以降については、経済活動の水準が総じて低位にとどまり、浮揚感を欠く展開が続いている。
2.2000年度を展望すると、上期中は住宅ローン控除制度の期限延長による住宅投資拡大の持続といった政策効果が景気を下支えする展開が予想されるが、企業による設備面や雇用面の調整が継続されるため、民間需要の回復力はぜい弱なものにとどまろう。ただ一方で、企業部門においてはこれまでのリストラ効果によって収益性の改善にある程度目途が立ちつつあり、新たな事業展開のための下地づくりが着実に進展している。このため、年度下期には成長分野を中心に姿勢を前向きに転じる企業が増えるとみられ、企業部門の調整に伴う県内景気へのデフレ圧力は次第に弱まっていこう。
3.実質県内総生産の成長率は、99年度は-0.6%とマイナス成長ながらも98年度の-1.7%(県速報値)に比べ減少幅は縮小する。そして2000年度には+0.2%と4年ぶりにプラス成長に転じる見通しである。
- 1.1999年度の県内景気は、財政・金融両面からの政策効果により公共投資と住宅投資が拡大に転じるとともに、消費者心理の好転に伴い個人消費が一部で明るさを取り戻すなど県内需要の落ち込みに歯止めがかかったことから、春から夏にかけて下げ止まりの様相をみせた。もっとも、夏場以降については、経済活動の水準が総じて低位にとどまり、浮揚感を欠く展開が続いている。
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2000-02-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年2月号 市場の伸びが頭打ちとなるなかで新たな拡販方策を模索する書店業界
- 要約
- 1.わが国の書籍・雑誌販売額は97年に減少に転じて以来、低迷が続いている。これは、不況により消費全般が低迷しているうえ、娯楽の多様化により消費者の読書離れが進んでいるためである。こうしたなか、従来から他の小売業に比べて利益率の低かった書店の事業採算性は近年急速に悪化している。
2.80年代以降の書店業界は異業種との競合と店舗の大型化の波にさらされてきた。すなわち、雑誌販売におけるコンビニエンス・ストアの伸長と郊外を中心とした大型店舗の出店増加である。このため、両者のはざまに立った小規模な書店を中心に書店数は減少に転じている。もっとも大規模書店においても、店舗の大型化は固定費負担の増大につながり、売上高が伸びない状況下では採算性を圧迫する要因になっている。
3.県内の書店業界をみると、異業種との競合や店舗の大型化が進展したことは全国と同様である。ただ、全国と比べると神奈川は、(1)大規模化の進展度合いが比較的小さいこと、(2)1店舗あたり売上高が高いなどの点で市場に恵まれていること、(3)売場面積あたりの販売効率が大きいこと、などの点で特徴的である。このため、まだ大型店の出店余地があるとみられ、今後出店がさらに増えて競争が激化する可能性もある。
4.書店の経営環境が厳しさを増すなかで、近年は業界内外の変化がさらに激しくなっている。なかでもインターネット書店の急増が注目を集めている。書店と消費者の双方にとってメリットの大きいインターネット書店は、日本においても書籍や雑誌の販売チャネルとして定着する可能性が高い。今後も市場規模の大幅な伸びが期待できないなか、インターネット書店を含めた書店間競争がさらに激しくなると考えられ、書店にとっては生き残りをかけた販売、流通面での工夫が重要性を増してきている。
- 1.わが国の書籍・雑誌販売額は97年に減少に転じて以来、低迷が続いている。これは、不況により消費全般が低迷しているうえ、娯楽の多様化により消費者の読書離れが進んでいるためである。こうしたなか、従来から他の小売業に比べて利益率の低かった書店の事業採算性は近年急速に悪化している。
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2000-03-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年3月号 90年代後半に厳しさを増した県内家電量販店業界の経営環境
- 要約
- 1.90年代に入ってわが国の家電販売額全体が伸び悩むなか、家電量販店の販売額は増加を続けている。こうした背景には、豊富な品ぞろえや安値による販売という特質が多様化、低価格志向の強まりといった消費者のし好の変化に合致したことのほか、大店法の運用弾力化を受けて家電量販店各社が新規出店や既存店の増床といった積極的な店舗戦略を採ったことがある。
2.神奈川県内においても、90年代の半ばから家電量販店による積極的な店舗展開が行われた。ただその結果、最近では同一商圏内における量販店同士の競合が一段と激しくなっている。
3.また、県内の家電量販店の経営環境がひときわ厳しくなっているのは、90年代に急伸したパソコンなど情報関連機器の販売額の増勢が県内において比較的鈍かったためとみられる。事実、東京圏における購買力の流出入の動向をみると、県内に居住する世帯の情報関連機器に対する購買力の一部が県外へ流出している。
4.今後については、調理家電や家事家電、AV機器などの分野において買い換え需要が一巡することなどから、家電全体の販売額は当面伸び悩みが予想される。もっとも、なかには今後の販売増を見込める品目も少なくなく、とくにデジタル家電やインターネット家電、情報家電などと呼ばれている新分野に対する期待は大きい。したがって、これらの新規分野にどれだけ機敏に対応できるかが県内家電量販店各社の明暗を分ける重要なポイントになる。
- 1.90年代に入ってわが国の家電販売額全体が伸び悩むなか、家電量販店の販売額は増加を続けている。こうした背景には、豊富な品ぞろえや安値による販売という特質が多様化、低価格志向の強まりといった消費者のし好の変化に合致したことのほか、大店法の運用弾力化を受けて家電量販店各社が新規出店や既存店の増床といった積極的な店舗戦略を採ったことがある。
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2000-04-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年4月号 近年急ピッチで整備が進む国や自治体のベンチャー支援体制
- 要約
- 1.90年代半ば以降、国や地方自治体はベンチャー企業の支援、とりわけ創業支援の体制整備を急ピッチで進めている。そうした背景には、従来のリーディング産業の不振や、創業活動の停滞とそれを反映した雇用創出力の低減など、わが国経済の活力が減退していることへの危機意識があると考えられる。
2.実際、かつてわが国経済のけん引役であった自動車や家電製品などの生産量は、90年代に入り頭打ち傾向が鮮明となっている。また、開業率の低下が顕著となるとともに、それを反映して比較的小規模な事業所の新設による雇用増加のテンポも大幅に鈍化している。
3.そうしたなか、近年相次いで打ち出された支援策としては、中小企業創造活動促進法、新事業創出促進法などがある。一連の施策は中小企業を一律に弱者とみなして、大企業との格差是正を目的とした従来の施策と異なり、研究開発に意欲的な企業や創業活動の支援に主眼を置いている点が特徴といえる。
4.わが国でも起業家や投資家などベンチャー企業に関与する層のすそ野が広がりつつある。今後は民間のベンチャー支援ビジネスと公的な支援体制との相乗効果が生まれることによりベンチャー企業の活動および創業が一段と活発化し、ひいてはわが国および県内経済が活力を取り戻すことが期待されよう。
- 1.90年代半ば以降、国や地方自治体はベンチャー企業の支援、とりわけ創業支援の体制整備を急ピッチで進めている。そうした背景には、従来のリーディング産業の不振や、創業活動の停滞とそれを反映した雇用創出力の低減など、わが国経済の活力が減退していることへの危機意識があると考えられる。
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2000-05-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年5月号 産業連関表からみた90年代前半の県内産業構造の変化
- 要約
- 1.先頃発表された95年神奈川県産業連関表によれば、90年代前半の県経済の特徴は製造業の低迷とサービス経済化の進展に集約されることが、諸側面から確認できる。まず、生産面からは、全産業の名目県内生産額は90年に比べて0.6%増とほぼ横ばいとなったが、そのうち第2次産業は同13.9%減と大幅に落ち込んだの対し、第3次産業は同21.6%増となった。
2.需要構造面からは、第3次産業との関わりが比較的深い消費支出が増加したのに対して、第2次産業と密接な民間投資や県外需要が大きく落ち込んだため、需要全体は90年に比べ3.8%落ち込んだ。また、投入構造をみると、中間投入比率が低下する中で研究開発費などサービス業からの投入ウエイトが高まる傾向にあり、そうしたなかで全産業の粗付加価値率は上昇している。
3.県際取引面からも、電気機械や輸送機械といった業種において移輸出の大幅な減少から黒字幅が縮小する反面、対事業所サービスなどのサービス業では赤字幅が縮小傾向にあることが明らかになった。
4.このような諸側面をまとめて、90年代前半の生産額の増減を需要要因と構造要因に分けて他府県と比較すると、大都市圏に属する府県においては、製造業の構造要因による生産額の減少額が大きい一方、非製造業の構造要因による生産増加額が大きい傾向がある。製造業と非製造業をあわせてみると、神奈川の場合は構造要因による生産押し上げ効果の方が押し下げ効果より大きく、かつ押し上げ額も他府県に比べて大きいことから、構造変化は県経済を前進させる方向に作用しているとみられる。
- 1.先頃発表された95年神奈川県産業連関表によれば、90年代前半の県経済の特徴は製造業の低迷とサービス経済化の進展に集約されることが、諸側面から確認できる。まず、生産面からは、全産業の名目県内生産額は90年に比べて0.6%増とほぼ横ばいとなったが、そのうち第2次産業は同13.9%減と大幅に落ち込んだの対し、第3次産業は同21.6%増となった。
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2000-06-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年6月号 景気低迷下でも成長する県内ベンチャーのプロフィール
- 要約
- 1.中小企業創造活動促進法の認定企業などから抽出した県内ベンチャー企業328社について従業員数や売上高などの基本属性を分析した結果、平均像として社歴23年、従業員数25人、資本金30百万円の中小企業が、6.4億円の売上高で7百万円の当期純利益を計上しているという姿が浮かび上がった。
2.ただ、企業ごとにみると、成長ステージの違いなどに起因する業績のばらつきが大きい。たとえば、会社設立年別に成長性や収益性を比較してみると、設立から5~15年程度の急成長期、同5年程度までのスタートアップ期の若い企業では、成長性は高いものの、初期投資に伴う償却負担などから収益性については必ずしも高くないという特徴がみられる。
3.また、近年急成長を遂げている企業の顔ぶれをみると、ハイテク分野に強みを持つ製造企業やソフトウェアの開発企業が名を連ねている。なお、売上高など企業規模の点では、十分に株式公開の実力を備えた県内ベンチャー企業も相当数に上っている。
4.成長企業を伸ばしていくことこそが地域経済・産業を活性化させ、雇用を創出する切り札である。そのためには官民が一体となって成長企業の発掘に努め、それらを積極的に支援していくことが求められよう。神奈川県経済の将来を展望するうえでも、成長企業を育んでいくための土壌づくりを地道に行っていくという視点が大切である。
- 1.中小企業創造活動促進法の認定企業などから抽出した県内ベンチャー企業328社について従業員数や売上高などの基本属性を分析した結果、平均像として社歴23年、従業員数25人、資本金30百万円の中小企業が、6.4億円の売上高で7百万円の当期純利益を計上しているという姿が浮かび上がった。
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2000-07-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年7月号 にぎわいの創出に役立つ地域イベント
- 要約
- 1.地域イベントは地域のにぎわいを生み出すための重要な取り組みの一つである。県内には、わずか数日間の開催期間で10万人以上の観客を集める地域イベントが35もあり、これらのイベントは地域活力の源となっている。
2.集客面からみた地域イベントの特徴は、景気の変動に左右されず安定した集客が見込めること、主要なイベントは新設商業施設などに匹敵する集客力をもつことの2点に集約できる。
3.こうした地域イベントの効果は、客観的に把握しやすい金額に換算して計られることが多い。そこで、集客数10万人のイベントを想定してその経済波及効果を試算するとおよそ2億円に達する。茅ヶ崎市の4つのイベントについての実際の調査結果(当社実施)をみてもほぼ同水準の結果が得られている。この金額は県内の平均的な大型小売店の1か月分の販売額に近い規模である。
4.加えて、数量的にとらえにくいものの、地域イベントは住民の地域への愛着を強めたり、観光客に開催地に対する良好なイメージを生み出すなど、無視し得ない効果をもつ。
5.そうした開催効果をより高めていくためには、地域イベントのコンセプトを明確にしていくことや、地域づくり全体のなかでイベントの開催を考えていくという視点がとくに重要となる。また、イベントのテーマや構成、運営方法等を継続的に見直し、必要に応じて改良を加え、その効果を観察していくことも有効である。見方を変えると、そのようなPLANDOSEE(プラン・ドゥ・シー)の繰り返しが可能であることが、地域イベントの強みであるといえよう。
- 1.地域イベントは地域のにぎわいを生み出すための重要な取り組みの一つである。県内には、わずか数日間の開催期間で10万人以上の観客を集める地域イベントが35もあり、これらのイベントは地域活力の源となっている。
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2000-08-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年8月号 連結ベースでみた県内上場製造企業の2000年3月期決算
- 要約
- 1.神奈川県内の上場製造企業58社について、新しい会計基準の下で発表された2000年3月期の連結決算を集計した結果によると、減収傾向が続くなかで3年ぶりの経常増益に転じたことが確認できた。また、経常増益率が単独ベースの数字を上回るなど、親会社の業績が回復するとともに子会社など連結対象企業についてもグループ全体の収益増加に貢献していることがわかった。
2.ただ、2000年度から適用が始まる退職給付会計など新会計基準への対応を多くの企業が前倒しで実施したために特別損失が大きく膨らんだ結果、経常増益にもかかわらず当期純利益は赤字幅が拡大している。
3.減収ながら経常増益となった要因として、(1)損益分岐点分析によって、既往リストラによる固定費削減の効果が確認されたほか、(2)セグメント情報から海外の連結対象企業が増益に寄与したことを把握できた。また、(3)個社別にみると、IT関連企業の好調が続くとともに、不振企業の業績悪化に歯止めがかかり、58社全体の利益を底上げしたことが明らかとなった。
4.各社の2000年度業績見通しを集計した結果によると、3年ぶりに増収に転じるとともに、経常利益の増加傾向も続く見通しとなっている。損益分岐点分析を用いて行ったラフな試算によれば、58社合計で固定費の削減がなくても増益を達成できる見通しとなっており、全体としてみればリストラの動きはすでに峠を越したと考えられる。ただ、自動車・同部品を中心に収益見通しの達成に向けてさらに固定費削減が必要な企業もあるなど、一部でリストラ圧力はなお残存するとみられる。
- 1.神奈川県内の上場製造企業58社について、新しい会計基準の下で発表された2000年3月期の連結決算を集計した結果によると、減収傾向が続くなかで3年ぶりの経常増益に転じたことが確認できた。また、経常増益率が単独ベースの数字を上回るなど、親会社の業績が回復するとともに子会社など連結対象企業についてもグループ全体の収益増加に貢献していることがわかった。
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2000-09-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年9月号 今後10年間で倍増が見込まれる県内の住宅リフォーム市場
- 要約
- 1.わが国の住宅リフォーム市場は90年代を通じて拡大傾向をたどった。その背景には、70年代に大量に建築された住宅が築後20年を経てリフォームを必要とする時期を迎えたことなどがある。神奈川県内においても市場は拡大トレンドで推移しており、99年度時点の市場規模は約3千億円と住宅関連市場全体の15.7%を占めている。
2.そうした住宅リフォーム市場への企業の参入は70年代後半から始まったが、とりわけ90年代においてはフランチャイズ展開などのかたちで企業の取り組みが一段と積極化した。県内でも、過去10年間において企業の事業展開が最も目立った市場の一つとなっている。ただ、その裏返しとして最近では企業間の受注競争が激化している模様であり、事業の採算は一段と厳しくなっている。
3.今後10年程度の県内住宅リフォーム市場を展望すると、世帯数の増加ペースが鈍化することなどから新設住宅市場が縮小し、リフォームの対象となる住宅ストックの増加ペースも緩やかになる。しかし一方で、バブル期に大量供給され、これからリフォーム適齢期を迎える住宅が住宅ストックのなかで大きなウエイトを占めてくることなどから、リフォームを実施する住宅の割合は高まろう。その結果、県内の住宅リフォーム市場は2010年度に約7千億円と99年度の2.3倍に膨らむと見込まれる。
4.こうした市場の拡大を自社の業績に結びつけていくためには、地域の特性を把握し、そのうえで自社の強みが発揮できる分野を積極的にアピールしていくなどの営業展開を図っていくことが一層重要となる。とりわけ県内の場合には、マンションリフォームやバリアフリーなどの分野で市場の大幅な拡大が期待できるだけに、そうした工事の発生が見込まれる世帯への働きかけが有効であろう。
- 1.わが国の住宅リフォーム市場は90年代を通じて拡大傾向をたどった。その背景には、70年代に大量に建築された住宅が築後20年を経てリフォームを必要とする時期を迎えたことなどがある。神奈川県内においても市場は拡大トレンドで推移しており、99年度時点の市場規模は約3千億円と住宅関連市場全体の15.7%を占めている。
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2000-10-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年10月号 大店立地法施行がもたらした県内大型小売店の出店戦略への影響
- 要約
- 1.2000年6月1日、従来の大店法に代わり、新たに大店立地法が施行された。大店立地法は、大店法のように大規模小売店舗の出店を抑制したり、店舗面積の大きさなどに需給調整的な制限を課すものではなく、大型店の出店を前提にしたうえで周辺地域の生活環境を保持することに主眼が置かれている。
2.大店立地法で審査事項となる交通、騒音、廃棄物に関する数値基準を満たすことは、出店に伴う諸コストを引き上げる方向に働くと考えられる。小売業者は大店立地法下で見込まれるコストの上昇と手続きの煩わしさを避けるため、大店法下での出店を急ぎ、計画を前倒したとみられる。
3.そうした駆け込み出店の反動と小売業者の様子見が重なり、神奈川県内においても大店立地法の下での出店申請は施行後3か月を経た8月末時点でわずか2件にとどまっている。したがって、経過措置が終了する2001年2月以降、少なくとも1年近い出店空白期間が生じることが予想される。
4.新規出店に空白期間が生じることによる影響としては、既存店の販売不振を補ってきた新規開店効果がはく落することがあげられる。近年の大型店開店による販売額押し上げ効果は、県内の場合、年間で大型店販売額全体の4~6%程度、金額にして1~1.5千億円と推計される。これは県内でも有数の百貨店1店舗分の売上高が毎年増えている計算である。
5.県内の小売業界では当面、新規オープンといった話題もなく、盛り上がりを欠いた展開にとどまることが予想される。そうしたなかで、効果的なリニューアルなど既存店のテコ入れがより重要性を増してこよう。
- 1.2000年6月1日、従来の大店法に代わり、新たに大店立地法が施行された。大店立地法は、大店法のように大規模小売店舗の出店を抑制したり、店舗面積の大きさなどに需給調整的な制限を課すものではなく、大型店の出店を前提にしたうえで周辺地域の生活環境を保持することに主眼が置かれている。
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2000-11-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年11月号 拠点再編やリストラなど構造変化が進んだ90年代後半の県内製造業
- 要約
- 1.先頃まとまった事業所・企業統計調査の結果によれば、99年央時点での県内事業所数は30万6,258か所と前回調査(96年央)比年平均-1.5%となり、初めての減少となった。製造業の事業所(本社と工場の合計)が同-3.0%と90年代入り後減少傾向にあるうえ、増加を続けてきた非製造業も同-1.4%とマイナスに転じたためである。従業者数についても製造業で同-4.3%と大幅に減少し、非製造業も同-1.3%と減少に転じた。そして製造業での減少幅が非製造業のそれを上回った結果、全従業者に占める製造業のウエイトは20.8%と全国平均の21.3%を初めて下回った。
2.こうした背景には90年代後半の県内製造業を取り巻く環境が非常に厳しかったことがあげられよう。すなわち95年に急激に進展した円高を契機に生産拠点の海外移転が加速したほか、景気の低迷が長期化したなかで生産設備・雇用者数・債務の過剰が大きな負担となり、生き残りをかけたリストラが果断に行われたことを色濃く反映したものとみられる。たとえば、神奈川においては99年までの3年間で中小規模の事業所や本社以外の工場での廃業率が高かったほか、閉鎖に至らない事業所においても従業者数を47都道府県中最も大幅に削減している。
3.しかしながら一方で、神奈川においては製造業の事業所開業率が全国2番目の高さとなったことなど、明るさもみられる。また、民生用電気機械や電子計算機関連、光学機械、測定器などで開業率が高めであったことが、最近のIT関連主導の生産回復の素地となったと推察される。
4.今後も、県内製造業事業所の生産機能の縮小傾向は続くとみられる。ただ、すでに厚い集積を誇る研究開発拠点が効果的に機能するためには、試作などのモノづくりの先端を支える基盤が失われてはならない。苦しい状況を乗り越えてきた企業の活力発揮が期待されるとともに、近年充実してきた各種支援策などの実効性が今後の県内製造業の役割をより高めることにつながろう。
- 1.先頃まとまった事業所・企業統計調査の結果によれば、99年央時点での県内事業所数は30万6,258か所と前回調査(96年央)比年平均-1.5%となり、初めての減少となった。製造業の事業所(本社と工場の合計)が同-3.0%と90年代入り後減少傾向にあるうえ、増加を続けてきた非製造業も同-1.4%とマイナスに転じたためである。従業者数についても製造業で同-4.3%と大幅に減少し、非製造業も同-1.3%と減少に転じた。そして製造業での減少幅が非製造業のそれを上回った結果、全従業者に占める製造業のウエイトは20.8%と全国平均の21.3%を初めて下回った。
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2000-12-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2000年12月号 景気低迷の影響で拡大が止まった90年代終盤の県内サービス業
- 要約
- 1.総務庁「平成11年事業所・企業統計」によると、神奈川県内における非製造業の事業所数と従業者数はともに前回(96年)調査比年平均1.4%減と初めての減少となった。産業別にみると、建設業の事業所数と従業者数が前回調査の大幅増から減少に転じたほか、運輸・通信業や商業では事業所数がそれまでの横ばいから減少に転じ、前回調査で急増した従業者数も今回は減少した。また、今回の調査ではサービス業も事業所数と従業者数が初めて減少している。
2.サービス業の事業所数の動きについて業種をさらに細かくみると、対個人サービス業では生活関連や趣味・娯楽関連、子供向け教育ビジネスなどの業種で減少が目立つ反面、医療や福祉関連の業種では増加している。生活関連などの業種で事業所数が減少した背景には、家計や企業のサービス支出が減少したことや、少子化の進展があると考えられる。一方、医療や福祉関連の業種で増加がみられた背景には、高齢化の進展や消費者の「健康」や「癒し」に対する欲求の高まりがある。
3.一方の対事業所サービス業では、土木建築サービス業などで事業所数が減少する反面で、アウトソーシング関連の業種やソフトウェア業などでは事業所数が増加を続けている。土木建築サービス業で減少がみられたのは建設投資が低迷しているためであり、また、アウトソーシング関連やソフトウェア業で増加がみられたのは企業が企業外の労働力を一層活用するようになっていることや情報化投資が再び盛り上がったためであると考えられる。
4.以上をまとめると、90年代終盤に県内サービス業の拡大が止まったのは、家計などの支出の減少や建設投資の低迷といった景気悪化によるマイナス要因が、消費形態の多様化や社会経済の構造変化によって新たなニーズが生まれるというプラス要因を上回って現れたためであると考えられる。この点、景気低迷下においても医療・福祉関連やソフトウェア業などの業種が拡大を続けていることが注目される。今後、県経済が発展していくためには、消費ニーズの多様化やビジネスニーズの高度化に対応したニュービジネスの活力により、サービス業が発展することが不可欠である。
- 1.総務庁「平成11年事業所・企業統計」によると、神奈川県内における非製造業の事業所数と従業者数はともに前回(96年)調査比年平均1.4%減と初めての減少となった。産業別にみると、建設業の事業所数と従業者数が前回調査の大幅増から減少に転じたほか、運輸・通信業や商業では事業所数がそれまでの横ばいから減少に転じ、前回調査で急増した従業者数も今回は減少した。また、今回の調査ではサービス業も事業所数と従業者数が初めて減少している。
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2001-01-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年1月号 神奈川県内経済の見通し2001年度
- 要約
- 1.2000年度の神奈川県内景気は、アジア向け輸出の拡大などを背景に製造業の生産活動の水準が高まるとともに、リストラ効果により企業収益の回復が鮮明となるなど、企業部門を中心とした回復の姿が定着した。ただ、夏場以降は需要拡大のテンポが鈍り、回復の動きはやや足踏みとなっている。
2.2001年度を展望すると、県内民需の回復力が総じてぜい弱なものにとどまり、成長率の低下は避けられないとみられる。もっとも、IT関連財に対する需要の堅調な伸びが引き続き期待できること、雇用・所得環境が企業収益の回復継続によって改善に向かうことなどから、自律回復の動きは持続すると考えられる。
3.2000年度の実質県内総生産の成長率は+2.2%と、99年度の+1.7%(県速報値)と比べて伸びが高まり、2年連続のプラス成長を果たす。また、2001年度には+1.8%と幾分伸びが鈍化するものの、年度下期には再び巡航速度に戻ると予想される。21世紀初めの年において、県内経済はどうやらプラス成長でスタートを切ることができそうである。
- 1.2000年度の神奈川県内景気は、アジア向け輸出の拡大などを背景に製造業の生産活動の水準が高まるとともに、リストラ効果により企業収益の回復が鮮明となるなど、企業部門を中心とした回復の姿が定着した。ただ、夏場以降は需要拡大のテンポが鈍り、回復の動きはやや足踏みとなっている。
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2001-02-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年2月号 姿が見えてきた京浜臨海部の活性化策
- 要約
- 1.神奈川県の京浜臨海部は、工場数、従業者数が県全体の1割強、また工場敷地面積は3分の1のシェアを占めるなど、素材、エネルギー、機械関連を中心に厚い工業集積がみられる。
2.ただ長い目でみると、臨海部の工業集積は減退基調にある。その背景には、サービス化といった経済・産業構造の変容や円高の進展など製造業を取り巻く外部経済環境の変化に伴って生産機能見直しが進んだ一方、都市圏工業地帯に関わる工業制限諸規制が企業の事業再編への取り組みに対する重荷となったことがある。とくに90年代に入ると、不況の長期化もあいまって、立地産業の土地生産性が低下しており、遊休地の発生懸念が高まっている。
3.そうしたなか、近年では、工業等制限法の緩和が進むなど京浜臨海部の再編整備は、都市圏工業地域の活性化といういわば国家的プロジェクトとして位置づけられており、臨海部活性化は新たな段階に入ったとみられる。また、県や横浜・川崎両市の主導する事業の一部の具体化が進むなど京浜臨海部活性化の姿が目にみえるかたちで明らかになってきた。
4.京浜臨海部活性化の方向は、大きく産業機能の再編と雇用の創出、まちづくりの整備にわかれ、前者では研究開発や物流機能を重視した拠点型開発、また後者では東海道貨物支線の貨客併用化等の交通基盤の整備やファクトリーパークの建設などによる住工共生をめざした街づくりが指向されている。
5.今後の臨海部活性化を促進するうえでは、(1)民間企業の土地利用を促す国家的見地からのインセンティブの付与、(2)グローバルな視点からの再開発計画の策定、(3)地域の住民に愛される地域づくり、といった観点が重要となろう。
- 1.神奈川県の京浜臨海部は、工場数、従業者数が県全体の1割強、また工場敷地面積は3分の1のシェアを占めるなど、素材、エネルギー、機械関連を中心に厚い工業集積がみられる。
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2001-03-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年3月号 住宅ローンの増大が重荷となり低迷を続けた90年代の県内家計消費
- 要約
- 1.今後の神奈川県内景気を展望するうえで家計消費の持ち直しが待望される。しかし、最近の状況をみると、家計消費の足どりは依然として鈍い。この背景には厳しい雇用・所得環境が続いているうえ、90年代以降に県内家計の平均消費性向が大幅に低下したことがある。
2.家計全体としてとらえた平均消費性向が低下した原因としては、(1)相対的に平均消費性向が低い世帯主年齢50歳代以上の世帯ウエイトが高まったことと、(2)40歳代以下の世帯の平均消費性向が低下したことの2つがあげられる。このうち(1)の世帯ウエイトの変化については、神奈川の場合、全国とは違って50歳代前半で平均消費性向が下がらないため、90年代はむしろ家計全体の平均消費性向を押し上げる方向に影響した。
3.一方、(2)の要因については、県内家計全体の平均消費性向を大幅に押し下げている。40歳代以下の世帯の平均消費性向が低下したのは、この年齢層ではバブル崩壊後に多額の住宅ローンを抱える世帯が増えたことを背景に、住宅ローン返済負担が増大したり、貯蓄不足感が高まるなど、経済的な面でのゆとりがなくなってきたためと考えられる。
4.今後10年程度を展望すると、(1)相対的に平均消費性向が高い若年層のウエイトが低くなることや、(2)多額の住宅ローンを抱えた世帯では長期間にわたって平均消費性向が回復しないことなどから、県内家計全体の平均消費性向が一段と低下すると予想される。今後は経済的ゆとりがなくなった世帯の将来不安を少しでも取り除くべく、家計収入を中長期的に安定させるための取り組みを急ぐ必要があろう。
- 1.今後の神奈川県内景気を展望するうえで家計消費の持ち直しが待望される。しかし、最近の状況をみると、家計消費の足どりは依然として鈍い。この背景には厳しい雇用・所得環境が続いているうえ、90年代以降に県内家計の平均消費性向が大幅に低下したことがある。
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2001-04-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年4月号 産業構造の大幅な転換に直面する近郊工業都市・藤沢
- 要約
- 1.藤沢市は東京からおよそ50kmに位置し、製造業を基盤産業とする代表的な近郊工業都市である。同市の2000年における市内総生産は1兆6千億円(当社推定)に上っており、経済規模では神奈川県下19市の中で4番目に大きい。大都市近郊の工業都市に共通した現象として、円高不況に見舞われた80年代半ば以降90年代にかけて製造業の空洞化が顕著にみられたが、藤沢市は同期間中の産業構造の変化が県内で最も大きかった。
2.藤沢市の産業構造が大きく変化するなかでみられた特徴的な動きとしては、(1)工業生産力のすう勢的な減退、(2)新設着工における持家系住宅の比重の高まり、(3)生活関連産業の充足の3点があげられる。まず、(1)については、従来の量産工場を研究開発機能に特化させたり、物流拠点として再生させるなど生産機能を縮小する方向でその役割を見直していることが背景にある。
3.(2)については、企業のリストラに伴い放出された事業用地がマンション建設用地の供給源となったことなどを背景に市内の住宅建設が活発化するなかで、従来よりも定住志向の強い住民が増加していることを示唆する。また、(3)については、市内北部を中心に人口流入が続いていることに対応する格好で生活関連産業の集積が進んだことを示している。
4.そうしたなか、自治体の産業振興策も従来の生産者向きのものから生活者サイドに立ったものへと軸足が移ってきた。また、企業経営の立場からみると、住民の定住志向の強まりに対応して、これまで以上に地域に根差したマーケティング活動が重要であり、具体的な方策としては顧客の囲い込み戦略が有効かつ生き残りのカギとなろう。
- 1.藤沢市は東京からおよそ50kmに位置し、製造業を基盤産業とする代表的な近郊工業都市である。同市の2000年における市内総生産は1兆6千億円(当社推定)に上っており、経済規模では神奈川県下19市の中で4番目に大きい。大都市近郊の工業都市に共通した現象として、円高不況に見舞われた80年代半ば以降90年代にかけて製造業の空洞化が顕著にみられたが、藤沢市は同期間中の産業構造の変化が県内で最も大きかった。
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2001-05-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年5月号 制度改革が進展するなかで変革を迫られる病院経営
- 要約
- 1.低成長下にもかかわらずわが国の医療費は増加傾向を続けており、98年度の国民医療費は前年比2.6%増加して29.8兆円となった。当社の試算によれば同年の神奈川県民医療費は1.6兆円となり、その規模は現状の医療制度を前提とすれば高齢化の進展を背景に今後も着実に増加し、2010年には2.5兆円、2020年には3.4兆円に達する。その半面で国や各種保険組合の負担は増加しており、これまで有効に機能してきたわが国の医療制度は改革を迫られている。
2.このように医療費が増加を続けているにもかかわらず、病院の経営状況は人件費や設備費負担が重いことなどから総じて厳しい。(1)1日あたりの患者数が多い半面、(2)病床利用率が低く、(3)病床あたり医師数や事務職員数が多いなどの特徴をもつ神奈川の病院経営も総じて苦しいと推察される。そうしたなか、医薬分業や業務の外部委託、各種制度の変更への対応など、病院経営をめぐる新たな動きが県内においても盛んにみられるようになっている。
3.今後については、医療制度改革が進展するなかで病院の経営環境はこれまで以上に厳しさを増してこよう。そうしたなか、医療サービスを利用者が納得して購入する体制づくりという視点が病院に求められるところであり、そのためにも、明確な経営ビジョンの策定や、質とコストを重視した医療サービス提供体制の整備などが必要である。
- 1.低成長下にもかかわらずわが国の医療費は増加傾向を続けており、98年度の国民医療費は前年比2.6%増加して29.8兆円となった。当社の試算によれば同年の神奈川県民医療費は1.6兆円となり、その規模は現状の医療制度を前提とすれば高齢化の進展を背景に今後も着実に増加し、2010年には2.5兆円、2020年には3.4兆円に達する。その半面で国や各種保険組合の負担は増加しており、これまで有効に機能してきたわが国の医療制度は改革を迫られている。
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2001-06-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年6月号 循環型社会の形成に向けて成長が期待される県内の静脈産業
- 要約
- 1.環境問題に対する関心や意識が高まるなか、その克服に向けての取り組みが活発化している。わが国では昨年から今年にかけて、経済社会のあり方を「循環型」へと転換していくための法律が相次いで施行された。これらの法律では、生産から廃棄に至る経済活動のあらゆる段階にわたって企業や消費者に環境負荷の低減に向けた役割分担を求めている。
2.こうしたなか、企業の対応も活発になっている。神奈川においても、自社の廃棄物や使用後の自社製品の再生・再資源化を進める動きが盛んになっている。他方で、それとともに資源の再生・再資源化自体を業とする静脈産業の業容も拡大しているとみられ、また最近では、新たな環境関連法の導入に合わせて静脈産業に新規参入する企業も目立ってきている。
3.県内において静脈産業が着実に育ちつつある背景としては、(1)静脈産業に携わる企業が効率的に多くの廃棄物を集めることができる、(2)同産業が事業用地や人員を確保するうえで、地元企業や自治体との調整が進みやすい環境がある、という2点において神奈川が恵まれた地域であることがあげられる。
4.このような地域の特徴を活かし、今後の県内静脈産業の成長を図るには、事業者や消費者によるリサイクルの達成状況に関する監視体制を強めることや、動脈産業にも目を配った産業振興策を展開することなどが課題となろう。
- 1.環境問題に対する関心や意識が高まるなか、その克服に向けての取り組みが活発化している。わが国では昨年から今年にかけて、経済社会のあり方を「循環型」へと転換していくための法律が相次いで施行された。これらの法律では、生産から廃棄に至る経済活動のあらゆる段階にわたって企業や消費者に環境負荷の低減に向けた役割分担を求めている。
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2001-07-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年7月号 開発プロジェクトをテコに産業の活性化を図る中核市・横須賀
- 要約
- 1.横須賀市は、東京から50㎞圏、横浜からは20㎞圏の三浦半島にある人口約43万人、面積約100k㎡の都市である。同市の市内総生産は1兆5千億円(当社推定、2000年)と、県下19市の中で5番目に大きい。また、産業構造上の特徴としては、造船や自動車といった製造業のイメージが強い地域であるが、県内の他都市と比べてそのシェアは必ずしも大きくなく、むしろサービス業や卸・小売業など第3次産業のシェアが大きい点があげられる。
2.横須賀の工業については、(1)工業製品出荷額が少数の大規模工場に集中している、(2)自動車を中心とした輸送機械が圧倒的なシェアを占める、という特徴がある。ただ、ここにきて関東自動車工業の深浦工場、日産自動車の久里浜工場と、市内メーカーでは生産拠点の閉鎖・再編の動きが相次いでいる。
3.他方、市内小売業の特徴としては、(1)1店舗あたりの規模が小さい、(2)設立年の古い店舗が多い、(3)市内中心部に商業集積が偏っている、(4)郊外部で大型店のシェアが高まっている、の4点をあげられる。この先、小売業者が生き残りを図るには、拡大する高齢者世帯の消費市場に焦点を合わせていくとともに、地理的な制約から商圏が狭いことを逆手にとってドミナント戦略を徹底するなど、売り方の点でも柔軟に工夫を凝らすことが重要であろう。
4.競争環境のグローバル化に伴い量産機能の首都圏立地がますます難しくなるなか、横須賀においては特定の企業に過度に依存した産業構造からの転換が急務である。そのためにも、造船、自動車に次ぐ新たな基幹産業を模索する動きは当面続くとみられる。この点、横須賀リサーチパークに代表されるような研究開発型企業の集積、ひいては、そうしたプロジェクトをテコにした市内企業の活性化効果に期待がかかっている。
- 1.横須賀市は、東京から50㎞圏、横浜からは20㎞圏の三浦半島にある人口約43万人、面積約100k㎡の都市である。同市の市内総生産は1兆5千億円(当社推定、2000年)と、県下19市の中で5番目に大きい。また、産業構造上の特徴としては、造船や自動車といった製造業のイメージが強い地域であるが、県内の他都市と比べてそのシェアは必ずしも大きくなく、むしろサービス業や卸・小売業など第3次産業のシェアが大きい点があげられる。
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2001-08-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年8月号 ブロードバンドの普及を契機にさらなる拡大が期待されるIT関連産業
- 要約
- 1.インターネットの利用人口が急増するとともに、DSLなどのブロードバンド接続が急速に普及するなどデータ伝送速度の高速化もめざましく、その結果やりとりされる情報量は飛躍的に増えている。神奈川においても情報化の進展は著しく、家庭関連の情報化指標をもとに都道府県別の情報化度を試算したところ、神奈川は東京に次いで2番目の先進県であるとの結果を得た。
2.情報化の進展を支えるIT関連市場も拡大しており、2000年にはパソコンなどのプロダクツ市場が前年比+39.7%、ネットワークサービスなどのサービス市場が同+26.7%、家庭用ゲームソフトやDVDソフトなどのコンテンツ市場が同+8.4%となり、あわせてほぼ10兆円の市場規模となった。
3.県内におけるそれぞれの市場動向をみると、コンテンツ企業の集積は薄いものの、プロダクツ市場は2000年に急拡大し、サービス市場もCATVインターネットやDSL加入者数の急増により急速に拡大している。ただ、2001年には米国経済の減速を背景にIT生産は頭打ちとなり、サービス市場も低価格化による競争の激化がみられはじめた。
4.ブロードバンドの普及によりインターネットを用いた映像配信などが実用化されつつあり、当面はコンテンツ配信を巡るビジネスモデルの構築に向けた試行錯誤が続くとみられる。高品質な魅力あるコンテンツほど容量が大きくなるだけに、伝送速度のさらなる高速化を実現するサービスや機器の生産が不可欠であり、3つの市場の三位一体となった拡大が期待される。
- 1.インターネットの利用人口が急増するとともに、DSLなどのブロードバンド接続が急速に普及するなどデータ伝送速度の高速化もめざましく、その結果やりとりされる情報量は飛躍的に増えている。神奈川においても情報化の進展は著しく、家庭関連の情報化指標をもとに都道府県別の情報化度を試算したところ、神奈川は東京に次いで2番目の先進県であるとの結果を得た。
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2001-09-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年9月号 成長会計からみたバブル崩壊以降の製造業低迷の背景
- 要約
- 1.製造業の中長期的な付加価値の成長は、最も基本的な生産要素である労働、資本の投入量の増加、そしてイノベーションなどによる生産性の向上によってもたらされる。80年代まではこれら3つの要因がいずれも高い伸びで推移し、製造業の高成長を支えてきた。
2.しかし90年代に入ると、労働投入量は、海外への生産拠点シフトなどを背景に国内で過剰雇用が発生したため減少傾向をたどるようになった。また、資本ストック投入量も、バブル期の過剰投資で積み上がった設備の調整が長引きマイナスの伸びに転じている。
3.生産要素投入の現象が続くなかで、製造業の持続的な成長を可能にするのは生産性の上昇である。成長会計の手法により生産性を表すTFPを計測したところ、その伸びは90年代に入って鈍化していることが分かった。
4.製造業全体では生産性が伸び悩んでいるものの、業種別・地域別にTFPを計測すると、業種別には情報化投資が活発化している電気機械、地域別には大都市圏に比べて新規投資がおう盛な九州や東北などの地方圏において90年代に入ってからもTFP上昇率が高まっていることが確認できた。
5.こうしたTFPの計測結果から判断すると、製造業が生産性上昇率を高めるには、質の高い新規投資を積極的に実施していくことが有効である。ただし、生産性上昇によって生産能力を拡大しても、需要が同時に拡大しても、需要が同時に拡大しなければ、受給ギャップが開き業績がさらに悪化することにもなりかねない。需要の拡大を伴いながら生産応力を高めるには、生産性の上昇を生産工程の効率化によって実現するとともに、需要を喚起するような付加価値の高い新製品の開発によって達成することが望ましい。
- 1.製造業の中長期的な付加価値の成長は、最も基本的な生産要素である労働、資本の投入量の増加、そしてイノベーションなどによる生産性の向上によってもたらされる。80年代まではこれら3つの要因がいずれも高い伸びで推移し、製造業の高成長を支えてきた。
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2001-10-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年10月号 ファミリー・高齢者向け供給の促進が望まれる今後の県内賃貸住宅市場
- 要約
- 1.これまで神奈川県内の賃貸住宅市場は、人口の社会増の増減による影響を強く受けてきた。しかし、80年代終盤から90年代序盤にかけての期間は県内への人口流入が急減する一方で貸家建築が高水準で推移したため、90年代中盤に県内賃貸住宅市場は供給過剰状態に陥った。その後、県内の貸家建築は大幅に抑制されたが、供給過剰状態は最近になっても払しょくされていない。
2.また、県内において賃貸住宅市場の供給過剰状態が長期化している背景として、90年代半ば以降に持家系住宅への住宅需要のシフトが進んだこともあげられる。20歳前後人口の減少などを背景に親元から賃貸住宅に住み替える動きが鈍る一方で、バブル崩壊以降、価格などの面で持家系住宅の取得環境が大幅に改善したことから、賃貸居住世帯による住宅取得の動きが強まった。
3.今後を展望すると、県内の賃貸住宅需要は当面拡大を続けると見込まれる。ただし、ファミリー層や高齢者層の需要拡大が見込まれるなど賃貸住宅に入居する世帯の属性が大きく変化することが予想され、賃貸オーナーをはじめとする供給サイドがそうした需要構造の変化に対応していくことが重要となる。
4.最近では、定期借家権制度が導入されたり高齢者の賃貸入居を支援する制度が設けられるなど政策面においても様々な対応がとられてきている。今後、賃貸オーナーなどがこうした制度を積極的に利用することにより、ファミリー向けや高齢者向けの賃貸住宅供給が一層促進されることが望まれる
- 1.これまで神奈川県内の賃貸住宅市場は、人口の社会増の増減による影響を強く受けてきた。しかし、80年代終盤から90年代序盤にかけての期間は県内への人口流入が急減する一方で貸家建築が高水準で推移したため、90年代中盤に県内賃貸住宅市場は供給過剰状態に陥った。その後、県内の貸家建築は大幅に抑制されたが、供給過剰状態は最近になっても払しょくされていない。
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2001-11-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年11月号 東京大都市圏における周辺都市の比較(前編)
- 要約
- 1.近隣の市町村に対して就業機会を提供する都市を中心市と定義したうえで、特別区部を除く一都三県の都市の中から抽出を試みたところ、神奈川8、東京3、埼玉7、千葉9の合計27都市が選ばれた。これらの中心市には、業務核都市の大半が含まれており、その多くが特別区部の10%通勤圏でもある。
2.また、90年から95年にかけての一都三県における就業機会の創出に寄与したのは、特別区部における就業人口の増加が目立った80年代とは一変して、上であげた中心市である。もっとも、都市の機能別に中心市の就業人口をとらえると、業務機能、商業・サービス機能に関わる就業人口は引き続き増加しているものの、生産機能についてはわずかながら減少に転じている。
3.生産機能という側面から中心市の特徴をみると、1.製造品出荷額等の上位を神奈川県内の都市が占める、2.神奈川の工業都市が大企業立地型である、3.素材型業種が多い臨海部で従業者数の減少が顕著である半面、加工組立型の集積が厚い内陸部で比較的堅調である、の3点を指摘できる。
4.80年代半ばの円高不況以来、製造業における就業人口の減少傾向は続いているものの、職業別に内訳をみると、技能工が減るかたわらで専門的職種が増えている都市もあり、この間、製造業内部での機能転換が進展した状況がうかがえる。また、そうした傾向が色濃い都市の顔ぶれをみると、幸区や中原区、相模原市など神奈川県内の都市が目立っている。すなわち、生産拠点の役割を見直す際に、機能転換を進める動きが神奈川に立地する製造企業において顕著であったことを示していよう。
- 1.近隣の市町村に対して就業機会を提供する都市を中心市と定義したうえで、特別区部を除く一都三県の都市の中から抽出を試みたところ、神奈川8、東京3、埼玉7、千葉9の合計27都市が選ばれた。これらの中心市には、業務核都市の大半が含まれており、その多くが特別区部の10%通勤圏でもある。
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2001-12-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2001年12月号 東京大都市圏における周辺都市の比較(後編)
- 要約
- 1.1990年代入り後の東京大都市圏において、就業機会創出の主役が変化している。すなわち、地域別には東京の都心エリアからその周辺に位置する中心市へ、また、都市機能別には生産機能から業務機能や商業・サービス機能へと重心が移っている。ただ、神奈川の中心市においては、すでにそうした機能の集積が進んでいることなどから、変化のスピードという点で他県と比べて緩やかである。
2.そうした結果、東京都心部への一極集中傾向には歯止めがかかっている。しかしながら、なお都心エリアに業務機能が集中していることを反映して、中心市の多くは業務機能と比べて商業・サービス機能の比重が大きい。神奈川の場合、他県に比べ業務系の集積が厚く、またその中でも事務職や管理職ではなく、研究者などを含む専門・技術職の比重が大きいという特色がある。
3.次に、商業機能について中心市の別にみると、横浜市は小売販売額の規模、売場効率、拠点性いずれの面においても高水準であり、中心市の中でも商業集積の厚さが際立っている。このほか柏市、立川市、藤沢市、さいたま市など大手百貨店の立地する都市では総じて商業機能が高い。なお、川崎市や横須賀市は売場効率が高いうえ、規模も大きいものの、特別区部や横浜市と競合するため、拠点性が低位にとどまっている。
4.周辺の市町村から多くの就業人口を引き寄せているのは、中心市の中でもとくに横浜市やさいたま市、千葉市の県庁所在市である。これらは、業務など諸機能の集積がすでに厚い都市であるうえに、業務核都市としての政策的な後押しもあってさらに集積が進展しており、東京大都市圏の周辺都市における新たな一極集中問題という見方もできよう。
- 1.1990年代入り後の東京大都市圏において、就業機会創出の主役が変化している。すなわち、地域別には東京の都心エリアからその周辺に位置する中心市へ、また、都市機能別には生産機能から業務機能や商業・サービス機能へと重心が移っている。ただ、神奈川の中心市においては、すでにそうした機能の集積が進んでいることなどから、変化のスピードという点で他県と比べて緩やかである。
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2002-01-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年1月号 2002年度の神奈川県内経済の見通し
- 要約
- 1.2001年の神奈川県内景気は、年央まで浮揚感が残った結果、下降局面入りは全国に比べ若干遅れたが、夏場以降は全国の後を追って減退基調が明瞭になった。生産の抑制が進んだ結果、現状、企業が感じる在庫の過剰感にも天井感が出てきたが、他方で求職者数の増勢が強まるなど労働需給の緩和が目立ち始めており、景気の局面は在庫調整から雇用調整へと進んでいる。
2.2002年度の神奈川県経済は、構造改革の進展下で厳しい雇用・所得環境が続くことから、家計消費は低調に推移するとみられる。また近時の企業業績の悪化を反映して設備投資も落ち込むなど県内の最終需要は減退基調をたどろう。年度末にむけて、米国経済の底入れを受けた輸出の持ち直しを契機に明るい兆しが見え始めるものの、景気の回復軌道が明瞭になるのは翌年度になると見込まれる。
3.以上のような県内経済の勢いを県内総支出の伸びで示すと、2001年度が前年比-2.2%、2002年度も同-1.0%とマイナス成長が続くと予測した。マクロベースのパフォーマンスはこのように厳しいものの、近年では、ミクロレベルでの新技術や新事業への取り組みが徐々に成果をあげている例も目立ってきている。景気拡張局面への転換はそうした供給サイドの諸々の事業革新が呼び水になることが期待され、新年度はそうした取り組みが一段と進む、新しい成長に向けた地固めの年となろう。
- 1.2001年の神奈川県内景気は、年央まで浮揚感が残った結果、下降局面入りは全国に比べ若干遅れたが、夏場以降は全国の後を追って減退基調が明瞭になった。生産の抑制が進んだ結果、現状、企業が感じる在庫の過剰感にも天井感が出てきたが、他方で求職者数の増勢が強まるなど労働需給の緩和が目立ち始めており、景気の局面は在庫調整から雇用調整へと進んでいる。
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2002-02-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年2月号 一部に明るさが見え始めた百貨店業界
- 要約
- 1.個人消費の低調が続くなかで、総じて小売業の業況は厳しい。なかでも百貨店の苦戦は際立っており、2001年の年間売上高は9.6兆円と88年依頼の10兆円割れとなり、ピークであった91年に比べ2割以上減少した。神奈川の百貨店については90年代に集積の厚みを増すなかで、東京への購買力流出に歯止めがかかってきたものの、売上高は減少傾向にあり、2001年は7,058億円とピーク比(91年)11.1%低下している。
2.しかしながら、これまでの売場改革への取り組みが奏功し、2001年には売上高に持ち直しの動きがみられるようになった。商品別にはブランド品販売の好調なバッグや靴、アクセサリーを含む身の回り品や、「デパ地下」といわれる食料品売り場のにぎわいに象徴されるようように食料品が売上高を伸ばしている。実際、2001年に増収となった首都圏の店舗を見ると、海外有名ブランドの強化や食品売り場の改装等により集客力を増した例が多く見受けられる。
3.加えて、人件費や物流費などのコスト削減効果により利益面も持ち直してきた。上場および店頭公開している百貨店(18社、単独ベース)の営業利益は、2000年度に前年比20.4%増となったのに続き2001年度も増益となる見込みである。
4.このように百貨店の業況に持ち直しがみられる背後で、激しい店舗間競争の結果、閉店に追い込まれる店舗が増加している。すなわち、「復活した」百貨店はこれまでの競争に勝ち残った百貨店といえよう。今後を展望すると、首都圏における百貨店売上高の拡大が見込めないことや、他業態との競争もさらに厳しさを増すことが想定されるため、各店にはこれまで以上に独自性が求められるほか、売場改革やコスト削減を進めることが必要だ。
- 1.個人消費の低調が続くなかで、総じて小売業の業況は厳しい。なかでも百貨店の苦戦は際立っており、2001年の年間売上高は9.6兆円と88年依頼の10兆円割れとなり、ピークであった91年に比べ2割以上減少した。神奈川の百貨店については90年代に集積の厚みを増すなかで、東京への購買力流出に歯止めがかかってきたものの、売上高は減少傾向にあり、2001年は7,058億円とピーク比(91年)11.1%低下している。
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2002-03-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年3月号 起業支援により活力維持を目指す業務核都市・相模原
- 要約
- 1.相模原市は高度成長期以降に急成長した新興の工業都市である。市内総生産は2兆1千億円(当社推計、2000年)と、県下19市の中では横浜、川崎に次いで3番目に大きい。同市は県下でも都市化の波が比較的後になって訪れた地域であり、市民の平均年齢は2000年10月時点で38.3歳と、厚木市の37.8歳に次いで県下で2番目に若いという特徴がある。
2.同市の産業構造をみると、製造業が今なお重要な地位を占めている。その特徴として、(1)業種構成の点で電気機械、一般機械のシェアが大きいものの、比較的偏りが小さいこと、(2)県内他都市と比べて90年代入り後の出荷額の落ち込みが小さいこと、(3)中小・零細規模の工場群が厚みをもって集積していること、を指摘できる。
3.他方、市内小売業については、(1)核となる突出した商業集積地がないものの、(2)90年代入り後国道16号線沿いのロードサイドを中心に進出した大型店が目立っている。ただ、(3)1店舗あたりの売場面積が大型化するかたわらで売場面積あたりの販売額で示される売場効率には改善がみられない。
4.相模原においては、開業率の高さに象徴されるように市域企業の若さも特徴のひとつであり、さらに、自治体と地元企業とが一丸となって起業支援に力を注いでいる。地域経済・産業が活力を維持し、今後とも成長を遂げるためには、そうした若い力が源泉となることが期待されよう。
- 1.相模原市は高度成長期以降に急成長した新興の工業都市である。市内総生産は2兆1千億円(当社推計、2000年)と、県下19市の中では横浜、川崎に次いで3番目に大きい。同市は県下でも都市化の波が比較的後になって訪れた地域であり、市民の平均年齢は2000年10月時点で38.3歳と、厚木市の37.8歳に次いで県下で2番目に若いという特徴がある。
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2002-04-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年4月号 競争力維持のため生産機能のアジア移転を加速する電気機械産業
- 要約
- 1.わが国の電気機械産業は、80年代後半以降、厳しい国際競争に直面しており、AVやIT(情報技術)関連分野では製品価格の下落基調が鮮明となっている。各メーカーは価格が急低下するなかでも利益を出せるようにするため、80年代後半以降、生産拠点を生産コストの安い海外へとシフトしてきた。
2.生産拠点の海外移転は人件費負担の重いAV製品から始まったが、90年代後半以降は、市場シェアの確保をめぐってIT製品の価格競争が激化したことなどから同製品や部品の製造拠点も海外へのシフトが進むようになった。地域別には、人件費などの生産コストが国際的に割安なアジア地域への進出が圧倒的に多い。近年では、アジア地域のなかでもより安価な労働コストを求めてASEAN地域から中国へ拠点を移すメーカーが増えている。
3.製造拠点の海外シフトが進む傍ら、国内生産拠点の国際競争力は急速に弱まりつつある。労働コストの面から各国電機メーカーの相対的な競争力を比較すると、わが国では90年代以降、賃金の上昇や円高の進展が生産性の上昇を打ち消したことから、コスト競争力が大幅に低下している。
4.電気機械産業の生産拠点を国内に残すためには、生産性の改善により労働コストを大幅に引き下げる必要がある。1.為替レートが現状水準で推移、2.賃金上昇率も過去5年間の平均で推移するとの前提をおいたうえ、2010年までに85年当時のコスト競争力を回復するために必要な生産性上昇率を計算すると年率10.4%となる。今後、高度成長期に匹敵する高さの労働生産性上昇率を実現するには、研究・開発などにより一層の力を注ぎ、国内において生産する品目をより付加価値の高い分野にシフトしていくことが肝要である。
- 1.わが国の電気機械産業は、80年代後半以降、厳しい国際競争に直面しており、AVやIT(情報技術)関連分野では製品価格の下落基調が鮮明となっている。各メーカーは価格が急低下するなかでも利益を出せるようにするため、80年代後半以降、生産拠点を生産コストの安い海外へとシフトしてきた。
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2002-05-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年5月号 2000年国勢調査が示す神奈川の人口や就業状態の変化
- 要約
- 1.2000年に実施された国勢調査の結果が順次発表され、次のような神奈川県の人口や就業状態の概要が明らかになってきた。
2.まず、神奈川県の人口総数は、全国の6.7%にあたる849.0万人となった。95年調査と比べた増加率は3.0%となり、その前の5年間と比べて増勢は鈍ったものの、全都道府県中では3番目に高い成長となった。この間、横浜市都筑区や川崎市宮前区などでは、東京圏の他地域との比較においても高率の人口増がみられ、「人口の都心回帰」が県北東部で鮮明になっている。
3.人口の年齢構成という点からは、働き手世代である生産年齢人口(15~64歳)の伸び率が前回調査比+0.4%にとどまると同時に、65歳以上の老年人口が全国で2番目の高い伸び(+28.7%)となるなど、他の都市圏域と同様、地域の特性であった神奈川の「若さ」も急速に熟年化の度合いを増している。
4.就業状態に目を向けると、県民のうち働く意思を持つ労働力人口は、前回調査比で0.4%減となった。男女別には、男性で減少する一方、女性で増加と両者間の動きが相反するなかで、女性労働力率のM字カーブのフラット化が進んだ。また県民のうちで職に就いている就業者の数は、95年から2000年の間に0.7%減と労働力人口の減少率を上回った。製造業、建設業の減少が目立つ一方、サービス業での増勢が続くという業種別の増減格差に対応して、男性就業者数の減少、女性就業者数の増加という性別の方向感の違いが明らかになった。
5.最後に昼夜間の人口比をみると、90.1と5年前調査から0.7ポイント上昇した。これは、人口規模が大きい団塊ジュニア世代が就業する年齢となったため他都県への通学者が減少したことが主な上昇要因となった。一般的に昼夜間人口比の変動に大きな影響を与えることが多い就業者はほとんど変化がなかった。
- 1.2000年に実施された国勢調査の結果が順次発表され、次のような神奈川県の人口や就業状態の概要が明らかになってきた。
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2002-06-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年6月号 少子高齢化の進むなか2015年頃にピークを打つ神奈川の人口
- 要約
- 1.国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、わが国の人口は2006年をピークに減少過程に入る。神奈川においてもピークの時期は2015年頃と後にずれるものの、2010年代後半には人口減少局面を迎える。
2.県内人口を年代別に予測したところ、高齢者が急ピッチで増加するほか、団塊ジュニア世代の比重が大きいという特色を反映して、今後10年程度は40代人口が急増し、またその子供に当たる10代人口もこれまでの急減から微増に転じるという結果を得た。
3.県内世帯数については、高齢者夫婦や高齢者単身世帯が急増することから、今後20年程度は増勢を維持し、2020年には373万世帯に達する。ただ世帯の小家族化が進むため、県内家計消費総額は緩やかな増勢から2010年代には頭打ちとなろう。内訳をみると、少子化の進展を背景に教育費の減少が続く反面、世帯数の増加を映じて教養娯楽費や住居費などは増勢を維持する。
4.このように今後の県内家計消費は頭打ちから減勢が明らかになるものの、拡大するビジネスチャンスも想定できる。たとえば、今後10年を経ずに団塊世代が定年退職を迎えることなどから、日中に自宅付近で過ごす人の数は2000年からの10年間で3割増加する。今後、わが国経済が成熟度合いを増すなかで、個人向け製品やサービスを供給する事業者にとって、人口構成の変化への対応を先取りすることが新たな市場開拓のカギとなろう。
- 1.国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、わが国の人口は2006年をピークに減少過程に入る。神奈川においてもピークの時期は2015年頃と後にずれるものの、2010年代後半には人口減少局面を迎える。
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2002-07-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年7月号 厳しさが続く神奈川県下の雇用情勢
- 要約
- 1.神奈川県下の雇用情勢は2001年度下期以降急ピッチで悪化した。悪化の内容を子細にみると、(1)製造業からの離職者が急増している、(2)性別には男性、年齢階級別には若年層と中高年層で増えているという特徴がある。ただ、(3)若年層では自己都合、中高年層では事業主都合による離職者がそれぞれ多いという違いがある。
2.また、(1)年齢、(2)職種、(3)賃金の3つの側面においてミスマッチが発生していることから、この先景気が順調に回復軌道をたどったとしても、雇用情勢の改善テンポは緩やかなものにとどまらざるを得ないと考えられる。
3.そうした状況下、政府はセーフティネットを中心とした雇用対策を矢継ぎ早に打ち出している。2001年度の第1次補正予算では緊急地域雇用創出特別交付金として3,500億円が計上され、これを振り分けられた地方自治体が緊急かつ臨時的な雇用創出を目的に、地域の実情に応じた事業を年明けから開始している。
4.もっとも、いかに眼前の状況が厳しくとも、中長期的に雇用創出を図るための取り組みを怠ってはならない。それぞれの自治体としては公共職業安定所や商工会議所などと協力して、まずは各地の雇用情勢の実態を的確に把握することが肝要であろう。そのうえで、具体的な雇用創出計画の策定を視野に入れつつ、人材育成と産業振興を着実に進めることが必要である。
- 1.神奈川県下の雇用情勢は2001年度下期以降急ピッチで悪化した。悪化の内容を子細にみると、(1)製造業からの離職者が急増している、(2)性別には男性、年齢階級別には若年層と中高年層で増えているという特徴がある。ただ、(3)若年層では自己都合、中高年層では事業主都合による離職者がそれぞれ多いという違いがある。
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2002-08-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年8月号 脱DRAMへの動きを加速し始めた国内半導体メーカー
- 要約
- 1.世界の半導体出荷額は持ち直しの動きが続いている。米国半導体工業会(SIA)によると、2002年1~3月期は7四半期ぶりに前期を上回り、4、5月もそれぞれ前月を上回る伸びが続いている。ただ、こうした動きは主に在庫調整の進展によるもので、大口需要先であるパソコン等の需要は依然として低迷していることから、回復力が乏しい状態となっている。
2.世界市場をリードしてきた日本の半導体メーカーは、90年代半ば以降低コストなどを武器に攻勢をかけるアジア企業にシェアを奪われている。加えて、2001年度決算においてDRAMの価格低迷などから大幅な赤字に陥ったことから、大手メーカーは抜本的な事業再編に取り組み始めた。
3.その一端がメモリー依存からの脱却を目指したMCU(マイクロコントローラ)への注力である。MCUは家電など広い分野で使われており、パソコンや通信関連への依存度が高いメモリーに比べて、安定的な収益を見込むことができる。
4.なかでも、注目を集めているのが自動車向け半導体である。自動車への電子部品の搭載拡大に加えて、ITS(高度道路交通システム)の普及により、これまで以上に高性能な半導体の需要増が見込めることなどがその理由であり、今後の市場拡大が期待されている。
- 1.世界の半導体出荷額は持ち直しの動きが続いている。米国半導体工業会(SIA)によると、2002年1~3月期は7四半期ぶりに前期を上回り、4、5月もそれぞれ前月を上回る伸びが続いている。ただ、こうした動きは主に在庫調整の進展によるもので、大口需要先であるパソコン等の需要は依然として低迷していることから、回復力が乏しい状態となっている。
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2002-09-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年9月号 規制緩和と企業のリストラ指向を追い風に成長する人材派遣業
- 要約
- 1.わが国の人材派遣業は、1986年の「労働者派遣法」施行以来、順調な拡大を遂げている。多くの企業のリストラ指向の下で非正規雇用が浸透するとともに、漸進的に派遣可能業種を拡げる形で規制緩和が進んできたことがその背景にある。厚生労働省のまとめによると、2000年度の人材派遣業の事業所数は1万か所、派遣労働者の総数は1,386千人、売上高は1兆7千億円に達している。
2.業界の調査によると、2001年以降、前年のITブームの反動で景気が冷え込む下で、短期派遣を中心に派遣労働者数は伸び率が大幅に鈍化した。また、競合激化の下で、派遣料金の下落傾向が目立ち始めた。
3.人材派遣業は売上高に占める利益率の割合が低く、安定した派遣者数の拡大が利益の確保のためには不可欠であり、その点、派遣業務の多様化による業容の拡大が期待されている。そうした多様化の方向性の一つは「新卒派遣」、「中高年派遣」といった年齢別の派遣業務であり、いま一つは「紹介予定派遣」に代表される人材派遣と人材紹介が複合した派遣サービスである。今後の人材派遣業界は、そうした2つの業務の方向性を軸に総合化と専門化の二極化が進むと考えられる。
- 1.わが国の人材派遣業は、1986年の「労働者派遣法」施行以来、順調な拡大を遂げている。多くの企業のリストラ指向の下で非正規雇用が浸透するとともに、漸進的に派遣可能業種を拡げる形で規制緩和が進んできたことがその背景にある。厚生労働省のまとめによると、2000年度の人材派遣業の事業所数は1万か所、派遣労働者の総数は1,386千人、売上高は1兆7千億円に達している。
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2002-10-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年10月号 近年における神奈川県内事業所数・従業員数の動向
- 要約
- 1.総務省「事業所・企業統計調査」の2001年調査結果(速報)が発表された。神奈川県内の事業所数、従業者数はともに47都道府県中4番目の規模であった。可住地面積あたりの事業所数は全国で3番目に高く、一方、居住人口比でみた従業者数は他の都市圏都府県と比べて見劣りしている。
2.今回調査で注目されるのは、47都道府県全てで事業所数が前回96年のレベルを下回ったことである。従業者数も前回調査比プラスであったのは、沖縄、滋賀の2県にとどまった。80年代に入ってから全国に比べ高めの伸びが続いた県内事業所数、従業者数も今回調査で減少に転じた。
3.県内産業別にみて、事業所数の減少に対するマイナスの寄与度が最も大きかったのは、卸売・小売業、飲食店で、従業者数においては製造業の減少寄与度が最大であった。他方、サービス業が主な産業で唯一増加したが、総数を押し上げるまでには至らなかった。
4.県内地域別には、サービス業立地の進んだ横浜市都筑区、川崎市麻生区など政令2市の北西部での増加が目立った。卸売・小売業、飲食店や製造業の減少が進んだ横浜市中区、南区といった地域で逆に事業所数、従業者数の減少が大きかった。
5.産業構成の上でサービス業の存在感は一段と高まった。従業者数の構成比でみて、サービス業は31.7%と最も大きな割合を占めるに至った。他方で製造業のウエイトは17.5%と20%を切った。
6.事業所数や従業者数の変動を法人関連取引推進の観点からみると、産業別、地域別の変化に即した営業戦略が重要さを増すと同時に、多様で小規模なサービス企業の増加を意識した効率的なアプローチが求められているといえる。
- 1.総務省「事業所・企業統計調査」の2001年調査結果(速報)が発表された。神奈川県内の事業所数、従業者数はともに47都道府県中4番目の規模であった。可住地面積あたりの事業所数は全国で3番目に高く、一方、居住人口比でみた従業者数は他の都市圏都府県と比べて見劣りしている。
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2002-11-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年11月号 スポーツを中心に停滞した近年の神奈川県民の余暇活動
- 要約
- 1.わが国余暇市場は1996年をピークに縮小が続いており、2001年も前年比2.3%減の83.1兆円とピーク時と比べて8.6%減少している。90年代後半における余暇市場縮小の主因は参加人口の減少と1回あたり平均費用の低下である。総じていえば、参加人口が増えている余暇種目ではプラス成長を維持している反面、参加人口が減少に転じた種目ではマイナス成長に転じたうえ、平均費用の低下が市場の縮小に拍車をかけたとみられる。
2.神奈川県においても余暇市場は90年代後半に縮小に転じている。96~2001年における余暇参加人口の動きをみると、(1)若者のスポーツ離れが目立つ、(2)ゴルフなど職場の人とのつきあい的色彩が濃い余暇活動の低下が顕著である、(3)高齢者の余暇活動は活発化しているなどの特徴がみられた。
3.2001年の余暇行動パターンを前提にして、2011年までの県内余暇参加人口を予測したところ、人口の増勢鈍化と少子高齢化の進展するなか、園芸・庭いじりや読書などの趣味娯楽や国内旅行などの旅行・行楽への参加人口は総じて堅調に推移する一方で、ボウリングやスキー・スノーボードなどスポーツ参加人口の減少が見込まれるとの結果を得た。ただ、マイナス成長が見込まれる種目であっても、マーケットの構造変化に対応した参加率アップ方策によりプラス成長に復することは十分可能である。潜在需要を掘り起こすためにはマーケットの変化を先取りする努力と創意工夫が今後一層重要となろう。
- 1.わが国余暇市場は1996年をピークに縮小が続いており、2001年も前年比2.3%減の83.1兆円とピーク時と比べて8.6%減少している。90年代後半における余暇市場縮小の主因は参加人口の減少と1回あたり平均費用の低下である。総じていえば、参加人口が増えている余暇種目ではプラス成長を維持している反面、参加人口が減少に転じた種目ではマイナス成長に転じたうえ、平均費用の低下が市場の縮小に拍車をかけたとみられる。
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2002-12-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年12月号 持家系住宅市場の落ち込みを加速する需要前倒しの反動
- 要約
- 1.昨年の終盤から神奈川県内における持家系住宅市場の冷え込みが鮮明となっている。この背景として、(1)県内世帯数の増勢鈍化により、県内の住宅需要に中長期的な縮小圧力がかかり続けていることと、(2)ここ1~2年は金融面や政策面において持家の建築や購入を後押しする力が弱まっていることのほか、(3)これまでの政府による住宅取得促進策を受けて、県内世帯が持家の建築や購入を前倒しで進めたことの反動が現れはじめていることが考えられる。
2.実際、県内世帯の持家率は1998年から2000年にかけて大幅に上昇しており、住宅取得促進税制が拡充されたこの間に県内世帯による持家の取得が急速に進んだことを示している。もっとも、持家率の変化をみるうえでは高齢化の進展や世代間の持家志向の違いがもたらす影響を取り除いてみる必要があり、そのための手段としてコウホート分析が考えられる。
3.そこで、持家率のデータにコウホート分析を施してみたところ、神奈川県の場合、時勢の変化による影響を示す「時代効果」は98年から2000年の間においても上昇を続けていたことがわかった。また、その「時代効果」を用いて住宅取得促進税制の拡充による需要前倒し分を試算したところ、99年と2000年の2年間で着工戸数の2.2か月分に相当する1万3千戸という結果を得た。
4.以上の試算結果を踏まえると、県内持家系住宅市場は今後しばらく厳しい展開が続くと予想される。とりわけ、需要が中長期的な縮小局面にあるなかでは、需要前倒しの反動減によるインパクトはひときわ大きなものとなる。このため、住宅の建築や販売を行っている企業には品質や価格面で競争力のある商品を提供していくことが一層強く求められることになろう。
- 1.昨年の終盤から神奈川県内における持家系住宅市場の冷え込みが鮮明となっている。この背景として、(1)県内世帯数の増勢鈍化により、県内の住宅需要に中長期的な縮小圧力がかかり続けていることと、(2)ここ1~2年は金融面や政策面において持家の建築や購入を後押しする力が弱まっていることのほか、(3)これまでの政府による住宅取得促進策を受けて、県内世帯が持家の建築や購入を前倒しで進めたことの反動が現れはじめていることが考えられる。
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2002-12-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2002年12月号 成長パターンの転換を迫られる県央の拠点都市・厚木
- 要約
- 1.厚木市は、生産や流通といった諸機能が集積する首都圏における拠点都市のひとつである。2000年時点の就従比は128.2%と、昼間の就業人口が夜間のそれを大きく上回っている。市内総生産は1兆1千億円(当社推計、2000年)に上り、人口では県内8位にとどまるものの、経済規模においては就従比の高さを反映して6位にまで浮上する。
2.同市の産業を概観すると、工業製品出荷額において首都圏有数の規模を誇る製造業だけでなく、大消費地に向けた流通基地としても重要な役割を担っているほか、研究開発拠点の一大集積地となっている。また、企業のこれまでの設備投資行動からは、量産から研究開発へと市内拠点の機能転換が図られた結果、空洞化の影響は軽微にとどまっている様子がうかがえる。
3.厚木における小売業の特徴としては、(1)周辺都市から購買力を吸収している、(2)設立年の新しい店舗が多い、(3)売場面積の小さい店舗の販売額シェアが比較的高い、の3点をあげることができる。近年の新規出店はロードサイドが主流であり、他方、本厚木駅周辺では大型店の撤退が相次いでいる。そのうえ、商店街もとくに駅から離れたところでは空き店舗が目立つなど、中心市街地の再生はまさに喫緊の課題となっている。
4.近年の人口の都心回帰現象によって人口流入のテンポが鈍化しており、従来の成長パターンが崩れ始めた。この先、高齢化のスピードが一気に加速する公算も大きく、その際には住民ニーズも大幅に変化することが予想される。企業も行政もそうした変化にいち早く対応することが肝要であろう。
- 1.厚木市は、生産や流通といった諸機能が集積する首都圏における拠点都市のひとつである。2000年時点の就従比は128.2%と、昼間の就業人口が夜間のそれを大きく上回っている。市内総生産は1兆1千億円(当社推計、2000年)に上り、人口では県内8位にとどまるものの、経済規模においては就従比の高さを反映して6位にまで浮上する。
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2003-01-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年1月号 2003年度の神奈川県内経済見通し
- 要約
- 1.2002年の神奈川県経済は、米国、アジア経済が輸出をけん引するとともに、工業生産に下げ止まり感が明らかになるなど、年初から緩やかな持ち直し傾向となった。もっとも、夏場以降は、米国経済の減速とともに輸出の増勢が鈍化し、また株価下落が続くなかで企業や家計の心理に陰りがみられるなど、横ばいから弱含み基調となっている。
2.2003年度の県内経済は、所得・雇用環境の一段の悪化が見込まれる下で、構造改革の推進に伴う先行き不透明感が消費マインドを湿らせることから、個人消費が減速し、年度初めは調整色が強まろう。もっとも、年度の下期に入ると、企業収益の改善を受けて設備投資が増加に転じるうえ、米国経済の回復とともに輸出も再び増勢となるなど、企業部門の活況が広がる形で緩やかな持ち直しに向かうとみられる。
3.以上の動きを県内総支出の伸び率で示すと、2001年度の実質県内総支出(実績見込み)は前年比-1.3%、続く2002年度(予測)は同+0.1%とわずかなプラス成長に転じるとみられる。さらに2003年度には、年度後半に改善方向に向かうとはいえ、年度始めの景気の出足が悪いことが響いて成長率は0.3%のマイナスと前年を若干下回る着地となると予測した。
- 1.2002年の神奈川県経済は、米国、アジア経済が輸出をけん引するとともに、工業生産に下げ止まり感が明らかになるなど、年初から緩やかな持ち直し傾向となった。もっとも、夏場以降は、米国経済の減速とともに輸出の増勢が鈍化し、また株価下落が続くなかで企業や家計の心理に陰りがみられるなど、横ばいから弱含み基調となっている。
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2003-02-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年2月号 所得が減少するなかで底堅く推移した家計部門の消費支出
- 要約
- 1.雇用・所得情勢が厳しさを増している。税務統計によると、2001年におけるわが国の給与所得者数は53百万人と前年より0.4%増加したものの、1人あたり平均給与が同1.5%減少した結果、給与総額は同1.2%減となった。続く2002年は給与所得者数が再び減少に転じたうえ、平均給与も減少が続いたとみられることから給与総額は5年連続でのマイナスとなった模様である。
2.それにもかかわらず、2002年の家計消費全体は堅調に推移した。たとえば、同年における世帯の消費水準は前年を上回ったとみられ、また品目別にも一部の奢侈品に動きが見られる。
3.このように家計消費が底堅かった要因としては(1)所得の伸びが低下するなかで消費水準を維持しようとする力(ラチェット効果)が働いたこと、(2)世帯数が増加を続けていること、(3)世帯全体のなかでウエイトを増している高齢者世帯の消費が堅調であったこと、があげられる。神奈川を含む大都市圏ではこうした要因の影響が国内他地域と比べて、比較的強かったと考えられる。
4.今後については、雇用・所得環境の悪化が見込まれることなどから勤労世帯の消費活動は弱含むものの、高齢者消費が下支えすることが期待される。しかしながら、中期的には高齢者層の資産分布の2極化が見込まれることや、社会保障制度などの改革が進むことなどから、足下では堅調な高齢者消費も抑制的な方向に進む可能性がある。
- 1.雇用・所得情勢が厳しさを増している。税務統計によると、2001年におけるわが国の給与所得者数は53百万人と前年より0.4%増加したものの、1人あたり平均給与が同1.5%減少した結果、給与総額は同1.2%減となった。続く2002年は給与所得者数が再び減少に転じたうえ、平均給与も減少が続いたとみられることから給与総額は5年連続でのマイナスとなった模様である。
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2003-03-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年3月号 1990年代後半に急上昇した一都三県における民営事業所の廃業率
- 要約
- 1.神奈川県を含む一都三県では、1990年代半ば以降、新規に開業する事業所の数が伸び悩むかたわらで廃業する事業所が急増している。そうした過程において、(1)店舗や工場が減少し、他方で専用施設が増加している、(2)本社等は開業がほとんどなく、一方的に廃業が増えている、(3)従業者について正社員を非正社員へ代替する動きが進んでいる、などの構造変化を伴いつつ就業機会は全体として縮小した。
2.事業所の形態別にとらえると、店舗等、事務所、工場等では事業所数・従業者数がともに純減となるなかで、病院や学校などの専用施設のみが増加に寄与したことがわかる。なお、工場等の男性従業者の減少がとりわけ神奈川県において顕著であることは特筆できよう。
3.事業所数・従業者数のいずれについても本社等の減少が目立ち、結果、雇用の受け皿として支店等の重要性が高まっている。また、正社員以外の就業形態をとる従業者が増えており、とくに女性の場合、一都三県全体で半数近くがパートタイマーなどの非正社員である。業種別には、小売業や飲食店、道路貨物運送業などを中心に正社員から非正社員への代替が進んでいる。
4.このようないくつかの構造変化は各地域の状況を直ちに一変するわけではないものの、かなりの確度の高さで先行きの方向性について示しているといえる。従来の延長線上から離れて、各地域の将来像を考えていくためには、じっくりと腰を据えて、そうした変化をとらえ直す取り組みが必要ではなかろうか。
- 1.神奈川県を含む一都三県では、1990年代半ば以降、新規に開業する事業所の数が伸び悩むかたわらで廃業する事業所が急増している。そうした過程において、(1)店舗や工場が減少し、他方で専用施設が増加している、(2)本社等は開業がほとんどなく、一方的に廃業が増えている、(3)従業者について正社員を非正社員へ代替する動きが進んでいる、などの構造変化を伴いつつ就業機会は全体として縮小した。
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2003-04-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年4月号 設備投資の長期低迷下で多様な業務への進出を急ぐリース業界
- 要約
- 1.1963年にわが国初のリース会社が誕生して以降、リース市場は飛躍的に拡大してきた。しかしバブル崩壊以降、設備投資が低迷していることなどを背景に、リース市場は90年代初頭以降、低調な動きとなっている。経済産業省の「特定サービス産業実態調査」によると2001年のリース年間契約高は2年連続で増加しているもののピーク時の水準には依然として到達していない。
2.近年、リースの取扱件数は増加傾向にある反面、取扱額の動きは一進一退となっている。ITの進展で情報関連機器のリース利用が高まる一方、製造業の空洞化などで産業機械や工作機械など1件当たりの金額の高い機器の利用が減少しつつあることがそうした二面性の背景にある。
3.そのようななか、リースに関連する投資税制の新設といった外的環境や競争激化による企業間のM&A、リース手段の多様化といった業界内の変化が注目されている。
- 1.1963年にわが国初のリース会社が誕生して以降、リース市場は飛躍的に拡大してきた。しかしバブル崩壊以降、設備投資が低迷していることなどを背景に、リース市場は90年代初頭以降、低調な動きとなっている。経済産業省の「特定サービス産業実態調査」によると2001年のリース年間契約高は2年連続で増加しているもののピーク時の水準には依然として到達していない。
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2003-05-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年5月号 今後一段の拡大が見込まれる県内オフィス床面積の需給ギャップ
- 要約
- 1.神奈川県内の賃貸オフィス市場ではこのところ市況が悪化する傾向にある。今年はとくに、2003年に東京都心部で大型オフィスビルのオープンが相次ぐ「2003年問題」と、団塊世代の定年退職により2010年を前にオフィス需要が減少する「2010年問題」に対する懸念が高まっていることもあり、今後の行方が注目される。
2.オフィス市場の動向について考えるためには、その前段階としてオフィス床面積の需給状況を把握しておく必要がある。そこで、まず、自社ビル分も含めた県内オフィス床面積を当社で推計してみたところ、県内では1990年代後半からの長期にわたってストック調整が続いており、2002年1月時点の供給量は2,447万平方メートルになるという結果になった。
3.一方、需要面についてはオフィスワーカー数の減少と歩調を合わせて縮小する方向にある。県内オフィスワーカー数の変化をみると、(1)企業が人件費を抑制するために雇用調整を行ったこと、(2)企業がオフィス機能を統合する際に、統合の場所として東京都心部が選択される傾向が強まったこと、などを背景に90年代後半から減少傾向となっている。そこで、オフィスワーカー1人あたりの床面積が一定という前提のもとで県内のオフィス需要量を推計してみると、96年時点で2,217万平方メートル、2001年時点には2,042万平方メートルとなる。
4.以上の結果、県内のオフィス余裕率は96年の6.1%から2001年には16.6%へと10%ポイント以上上昇したとみられる。また、それらのことを踏まえたうえで「2003年問題」や「2010年問題」が今後の県内オフィス床面積の需給バランスにどの程度の影響を及ぼし得るかについて試算してみると、それぞれが県内オフィス余裕率を3~4%程度押し上げる可能性があるという結果が得られた。このことから、県内のオフィス床面積の需給は今後さらに軟化すると予想される。
- 1.神奈川県内の賃貸オフィス市場ではこのところ市況が悪化する傾向にある。今年はとくに、2003年に東京都心部で大型オフィスビルのオープンが相次ぐ「2003年問題」と、団塊世代の定年退職により2010年を前にオフィス需要が減少する「2010年問題」に対する懸念が高まっていることもあり、今後の行方が注目される。
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2003-06-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年6月号 シルバー層の力を活かして県内観光の活性化を
- 要約
- 1.わが国の国内観光は、バブル期に大きく拡大したのち停滞している。また団体・グループ中心の観光から家族中心の観光へと変質している。さらに最近は観光関連消費の節約傾向が顕著となり、あまりお金をかけずに身近で気軽に楽しむ傾向も表れている。また観光活動では「温泉浴」「自然の風景を見る」「動植物園・郷土資料館等の見物」「季節の花見」など、癒しと教養や体験などの目的志向が強まった。
2.神奈川県では、新しいエリアの整備や新規施設の開業効果などを背景に段階的に観光客を増やしてきた横浜を除いて、バブル期以降は観光客数の低迷傾向が続いている。地域により持ち直しの兆しもみられるものの、特に団体旅行や法人需要の減少で箱根・湯河原の低迷が目立った。横浜を中心にホテルの増加と大型化が進み、箱根・湯河原地域を除いてホテル化の傾向が著しい。
3.県内で発生する観光消費に伴う経済波及効果は、およそ1兆9千億円、雇用誘発効果は22.6万人と推計された。
4.60歳以上のシルバー層は、高齢化の進展に伴って観光への参加人口の大幅な増加が見込まれ、また観光関連消費が盛んであり、かつ観光活動への参加意欲が高い。
5.神奈川県を訪れる外国人旅行者は、全国で4番目のおよそ80万人で、アジアからの旅行者が6割弱を占める。アジア中心とした外国人旅行者を増やすことは、経済振興の意味もあるが、国際的な相互理解を深める面からも大切である。
6.今後の観光振興はシルバー需要の取り込みがカギであり、一方でその経験や知識を生かして雇用面でも活用をしていく必要がある。また、永続性のある観光振興のため、地域として差別化できる魅力を見直し発掘し、また観光の大きな力であるホスピタリティを地域全体でも発揮できるよう、地域内で連携しながら地道に取り組むことも大切である。
- 1.わが国の国内観光は、バブル期に大きく拡大したのち停滞している。また団体・グループ中心の観光から家族中心の観光へと変質している。さらに最近は観光関連消費の節約傾向が顕著となり、あまりお金をかけずに身近で気軽に楽しむ傾向も表れている。また観光活動では「温泉浴」「自然の風景を見る」「動植物園・郷土資料館等の見物」「季節の花見」など、癒しと教養や体験などの目的志向が強まった。
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2003-07-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年7月号 潜在需要の取り込みにより成長が期待される神奈川のホテル業
- 要約
- 1.わが国のホテル数は増加を続けている。1980年代までの高成長に比べれば、増勢は鈍化したものの、90年代後半も年率3%増加して、2002年3月には8,363軒、客室数は63.8万室となった。今後も東京で高級・中堅ホテルや低料金の宿泊特化型ホテルが開業ラッシュを迎えることなどからホテル数は増加を続け、ホテルは宿泊施設としての重みを増そう。
2.法人企業統計によれば、ホテル業の業績は売上高が伸び悩むなかで業界全体として経常赤字が続いたバブル崩壊後から立ち直りつつある。利益を圧迫した固定費のうちウエイトが高い人件費を中心に経費節減に努め、2001年度には経常黒字を確保した。
3.2001年度の個別ホテルデータを当社で集計したところ、次のような特徴がみられた。まず、客室部門については平均客室料金が低下したものの、宿泊客数が増加したため、客室売上高は前年比0.9%増加した。ホテル間の競争激化などを背景に、東京で客室料金の落ち込みが大きかった一方、人気テーマパークの集客が好調であった関西や千葉では宿泊客数が大きく伸びている。神奈川においては、宿泊客数がわずかに減少したものの、客室料金の上昇により前年比0.3%の増収となった。消費者や企業の根強い低価格志向や、インターネットを通じた予約システムの普及などを背景に今後も客室料金は低下が続くとみられることから、価格引き下げに見合った宿泊客数を確保できるかどうかが業績回復のためのカギとなろう。
4.ホテル業界の今後を展望すると、シルバーマーケットの拡大やアジア諸国の経済成長を背景とした海外観光客の増加などから、宿泊需要が増加することが期待される。国や自治体が注力する観光施策を実効あるものとし、さらに自社に取り込むためには、インターネットを通じて有効にホテルや観光スポットの魅力をアピールするなど、潜在需要を掘り起こすためのマーケティング戦略の重要性が今後いっそう増してくるだろう。
- 1.わが国のホテル数は増加を続けている。1980年代までの高成長に比べれば、増勢は鈍化したものの、90年代後半も年率3%増加して、2002年3月には8,363軒、客室数は63.8万室となった。今後も東京で高級・中堅ホテルや低料金の宿泊特化型ホテルが開業ラッシュを迎えることなどからホテル数は増加を続け、ホテルは宿泊施設としての重みを増そう。
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2003-08-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年8月号 商業統計からみた近年の神奈川県内小売業の動向
- 要約
- 1.経済産業省「商業統計調査」の2002年調査速報によると、神奈川県内小売業の商店数は61,943店、売場面積は7,128千平方m、従業者数は484千人であった。また年間の商品販売額は8兆4,644億円に達した。商店数、売場面積は47都道府県中4番目、従業者数、年間商品販売額は同3番目の規模である。
2.1商店あたり従業者数は7.8人で全国平均6.1人の1.27倍、また1商店あたり年間商品販売額は1億3千7百万円で同1.31倍と、県内小売業の特徴である平均的な事業規模の大きさがみてとれる。
3.商店数はすう勢的な減少傾向にあり、逆に売場面積は拡大が続いている。年間商品販売額は90年代の終盤から減退している。91年を100.0とすると、商店数は79.9と約2割、年間商品販売額は91.4と約1割いずれも低いレベルである。他方で売場面積は126.9と91年当時の約1.3倍に達している。
4.商店数の減少を産業小分類の別にみると前回調査以降、28業種のうち25業種で減少した。前回調査比でプラスとなった3業種はドラッグストアなど新業態の伸長が増加に寄与している。また今回減少した業種のなかにも、ホームセンターといった業態では商店数の増加をみている。
5.県内では、県央や横浜市の内陸部で大規模小売店・商業施設の開業が相次ぎ、売場面積を押し上げた。そうした大規模店等の進出の結果、たとえば横浜市では都筑区など郊外部の集客力が上がる一方で、西区や中区といった広域的商業中心部の集客力が下がるなど地域間の商勢に変化がみられる。
6.売場面積が拡大を続けるなか、年間販売額が減少傾向にあることで、売場面積あたり販売額といった効率性指標は低下が続いている。もっとも、都道府県間で比較すると、神奈川県の場合は売場面積シェアに比べて販売額シェアがなお大きく、今後も大型商業施設の進出と競合の一段の激化が予想される。
- 1.経済産業省「商業統計調査」の2002年調査速報によると、神奈川県内小売業の商店数は61,943店、売場面積は7,128千平方m、従業者数は484千人であった。また年間の商品販売額は8兆4,644億円に達した。商店数、売場面積は47都道府県中4番目、従業者数、年間商品販売額は同3番目の規模である。
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2003-09-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年9月号 進むオフィス需要の“都心”一極集中
- 要約
- 1.本誌2003年5月号で指摘したように、1990年代終盤以降の神奈川県内ではオフィス需要の縮小によりオフィス床面積の需給ギャップが急拡大している。県内オフィス需要の縮小には企業が県内のオフィス機能を東京都心部に集約する傾向にあることが強く影響しているとみられるが、こうした都心部へのオフィス需要の流出は、言うなれば、東京一極集中の様相が“東京圏”一極集中から“都心”一極集中に変わり始めたことの一端とみることができよう。
2.オフィス需要が都心に集中するのは、都市の集積メカニズムを源とする都心の強大な企業吸引力と立地コストの高さによる他地域への移転圧力の差が拡大したためと解釈できる。実際に、都道府県別のオフィスワーカー数を立地コストの水準や従業者の集積密度、市場規模の大きさといった3要因により説明する関数を推計すると、90年代終盤以降は主に他地域との市場規模格差の拡大により東京の企業吸引力が相対的に強まったことが確認できる。
3.以上を認識したうえで今後を展望すると、県内オフィス需要全体としては都心への流出傾向が続き、縮小傾向をたどる可能性が高い。しかしながら、部分的には、都心ではなく神奈川において需要の拡大が見込まれる分野もあると考えられる。したがって、今後の対応を考えるうえでは、オフィス需要を業種や職種、企業の成長段階などの多面的な切り口で分類し、神奈川ではどのような分野で強みを発揮できるのかを見極める必要がある。
4.その際に重要なのは、各分野のオフィス需要にどの程度の成長性が見込めるかという視点と、それぞれの分野のオフィス需要に対して各地域がどの程度の吸引力を持っているかという視点である。たとえば、試みにそれらの2要因を判断軸として業種別のオフィス需要動向を分析してみると、県内ではメーカー系企業の需要が有望との結果が出る。そうした手法を参考にオフィス需要動向についての多面的な分析を進めて行けば、今後の県内オフィス床面積の需給ギャップの拡大に対応するための手がかりが見出せると考えられる。
- 1.本誌2003年5月号で指摘したように、1990年代終盤以降の神奈川県内ではオフィス需要の縮小によりオフィス床面積の需給ギャップが急拡大している。県内オフィス需要の縮小には企業が県内のオフィス機能を東京都心部に集約する傾向にあることが強く影響しているとみられるが、こうした都心部へのオフィス需要の流出は、言うなれば、東京一極集中の様相が“東京圏”一極集中から“都心”一極集中に変わり始めたことの一端とみることができよう。
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2003-10-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年10月号 新たなけん引役を模索して構造調整を推し進める神奈川の製造業
- 要約
- 1.県内製造業の生産活動は2001年以降、大きく落ち込んでいる。工業統計によると、県内製造業の製造品出荷額は2000~2002年の間に年平均9.2%減と3.8兆円減少した。この落ち込み幅は90年代前半における5年分の減少額に匹敵する。一方、従業者数も6.6万人、工場数も2.4千か所それぞれ減少している。
2.また、他の都道府県と比較しても出荷額の減少額が全都道府県中で最大となるなど、神奈川の生産活動の落ち込みは目立っている。県内地域別には臨海部よりも内陸部で、業種別には加工組立型業種、なかでも電気機械の落ち込みが大きい点が近年の特徴としてあげられよう。
3.国内製造業の生産活動が大きく落ち込む反面で、海外生産比率は急上昇している。県内企業においても海外生産拠点は90年代に急増し、2002年には308に達している。近年は国際的な生産ネットワークの構築や日本への逆輸入を生産拠点の設置目的とする企業が増加している。
4.一方、1人あたり付加価値額が低下するなど県内製造拠点の製品高付加価値化に向けた動きは停滞しているとみられる。さらに県内製造業における高い生産性、大規模性などの特徴も突出した優位性は陰を潜めつつある。しかし、神奈川の製造業は化学製品や電気機械製品を中心に47都道府県中でトップシェアにある生産品目を多く擁しているほか、県内製造業の高い製品開発力を示唆する品目も多くあげられる。
5.わが国景気の回復とともに県内の生産活動もほどなく底を打つことが期待される。しかし、今後も量産品を中心に生産機能の海外移転が続くとみられるため、長期的には神奈川の生産機能は減勢をたどることが避けがたい。今後の県内製造業は、技術開発を通じた国内立地製造業の競争力強化に向けて重要な役割を果たしていくことが期待される。
- 1.県内製造業の生産活動は2001年以降、大きく落ち込んでいる。工業統計によると、県内製造業の製造品出荷額は2000~2002年の間に年平均9.2%減と3.8兆円減少した。この落ち込み幅は90年代前半における5年分の減少額に匹敵する。一方、従業者数も6.6万人、工場数も2.4千か所それぞれ減少している。
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2003-10-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年10月号 テレビジョン放送の利便性が大きく向上する地上デジタル放送
- 要約
- 1.これまでアナログ放送のみだった地上テレビジョン放送では、本年12月から3大都市圏の一部でデジタル放送が開始される。現在のスケジュールでは、2006年末までに全国で放送が開始された後、2011年にアナログ放送が停波となり、デジタル放送に一本化される予定となっている。
2.地上デジタル放送では、A.映像・音声の高品質化、B.データ放送の充実、C.移動体通信端末向け放送、などが可能となり、地上アナログ放送に比べてテレビの利便性が向上すると期待される。
3.地上デジタル放送開始による消費への影響をみると、対応機器の新規需要が考えられる。神奈川県について対応チューナーの需要を試算すると1,024億円となる。加えて、好調が続いているプラズマディスプレイ(PDP)テレビなど高級テレビの普及への追い風となる。
4.設備投資については、1999年以降民放事業者によるデジタル化関連投資が増加傾向にある。加えて、CATV事業者については光ファイバー化などケーブル関連の投資も必要となっており、今後地上デジタル放送の放送地域拡大に伴い設備投資が拡大するとみられる。
- 1.これまでアナログ放送のみだった地上テレビジョン放送では、本年12月から3大都市圏の一部でデジタル放送が開始される。現在のスケジュールでは、2006年末までに全国で放送が開始された後、2011年にアナログ放送が停波となり、デジタル放送に一本化される予定となっている。
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2003-11-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年11月号 官民あげて動き始めた若年雇用問題への取り組み
- 要約
- 1.若年層の雇用問題は、新卒市場の冷え込み、若年離職者の増大、いわゆるフリーターの増加と、その実相は多岐にわたっている。若年雇用に関しては、これまで中高年と比べて原因究明や解決に向けた取り組みが後回しにされてきたきらいもあるが、最近になり企業が既往のリストラでかなり身軽になってきたこともあって、政府や産業界をはじめ広範な関心を集めている。
2.新卒市場の冷え込みは若年層に対する労働需要減退の象徴である。その背景には中高年雇用者の過剰感があるが、今後中高年のリストラが一巡しても、直ちに若年雇用が拡大するわけではないと考えられる。すなわち、企業の人材ニーズは新しい産業分野に対応した新たな職種を中心に高まると予想され、求職者が希望する職種とはギャップが生じるためである。
3.また、求人と求職の間には、年齢その他の採用条件においても様々なミスマッチが存在する。インターネットハローワークから入手した求人データ等を用いて分析した結果によると、たとえば、システムエンジニアといった専門・技術職に関しては、企業が採用にあたって業務経験と若さを同時に求める傾向があり、そのことが労働市場で条件に合った人材を見つけにくくしている可能性が高い。ただ、ミスマッチ発生の要因は職種によって違いが大きいため、その解消に特効薬はなく、職種ごとのきめ細かい対応が必要となろう。
4.今年に入り政府・産業界は相次いで若年者に関する雇用対策を打ち出しており、官民あげた取り組みがようやく動き始めることになった。企業ひいてはわが国経済が持続的な成長を遂げるために次代を担う人材の育成が絶えず必要となることに関して異論はなかろう。国および地方公共団体には、基礎的な職業能力の育成という点でこれまで以上に効果的な施策展開を期待したい。
5.とはいえ、人材育成に関してその役割を全うできるのは、やはり長年ノウハウを蓄積してきた民間企業をおいて他にない。景気動向に落ち着きがみられる今こそ、そうした責務をあらためて認識し、インターンシップやトライアル雇用の受け入れ等、可能なものから即実行に移すことが求められる。
- 1.若年層の雇用問題は、新卒市場の冷え込み、若年離職者の増大、いわゆるフリーターの増加と、その実相は多岐にわたっている。若年雇用に関しては、これまで中高年と比べて原因究明や解決に向けた取り組みが後回しにされてきたきらいもあるが、最近になり企業が既往のリストラでかなり身軽になってきたこともあって、政府や産業界をはじめ広範な関心を集めている。
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2003-12-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2003年12月号 物流の構造変化と物流産業の動向
- 要約
- 1.産業空洞化の進展により、国内の企業から出入荷される貨物の物流重量は、90年代以降特に製造業で減少し、全体でも出荷量は90年代前半から、入荷量は90年代後半から減少に転じた。
2.国内の貨物輸送量は、重量では96年以降減少傾向にあり、取り扱う貨物量が減少している。また輸送距離の長距離化もあり、仕事量を表す輸送トンキロでは増加ないしは横ばい傾向にある。
3.自動車貨物輸送は重量でみて国内貨物輸送の9割を担っている。しかし、貨物量減少による競争激化や荷主企業のコスト削減要求が強いため、トラックによる一般貨物運送料金の低下傾向が続いており、事業者の売上や収益の圧迫要因になっている。
4.大手(上場)の陸運企業は人員削減を中心に収益を確保し、総合的な物流サービスの提供で売上の落ち込みにも歯止めがかかりつつある。しかし、設備活用の効率低下で生産性はあまり上昇していない。中小が主体のトラック貨物運送事業者は、売上減少および収益率低下の傾向が続いている。人員と設備削減は進めているものの、料金低下と取扱量の減少で生産性が低下している。
5.神奈川県は全国的にみても物流量が多いが、90年代以降に本格化した生産機能の流出で製造業の出入荷量の落ち込みが大きく、卸売業でも卸売を介さない取引の増加や東京へのシフトで減少した。また製造業、卸売業では、貨物出荷の小口化が大きく進んだ。
6.神奈川県のトラック貨物輸送は、出入荷量の減少を反映し輸送重量は減少傾向にある。しかし、自家用から営業用へのシフトが全国以上に大きく進んだことと、輸送距離の長距離化もあり、輸送トンキロはあまり落ち込んでいない。
7.神奈川県のトラックが主体の道路貨物運送業は、全国や1都3県と比べると従業者でみた規模は比較的大きいのが特徴である。また道路貨物運送事業所は、91~96年に規制緩和の影響もあり増加したものの、厳しい環境を反映して96~2001年には廃業率が大幅に高まり、事業所数も減少に転じた。
8.国内の物流事業者は、荷主の発展に貢献できる付加価値の高い総合的な物流サービスの提供が求められている。また、リサイクルなど新たな分野の需要創出への取り組みも、今後の発展のために必要となるだろう。
- 1.産業空洞化の進展により、国内の企業から出入荷される貨物の物流重量は、90年代以降特に製造業で減少し、全体でも出荷量は90年代前半から、入荷量は90年代後半から減少に転じた。
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2004-01-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年1月号 2004年度の神奈川県内経済見通し
- 要約
- 1.2003年の神奈川県経済はイラク戦争などによる世界景気の減速や冷夏の影響などから夏場にかけて踊り場的局面を迎えたものの、戦争などの終結に伴って輸出が増勢に転じるとともに生産活動に底打ちの兆しがみられるなど、秋口以降は企業部門を中心に景気の持ち直しに向けた動きが明らかになった。
2.2004年度の県内経済は企業部門が主導するかたちの景気回復が持続すると考えられる。輸出の増勢が続くなか、企業収益の急回復を受けて設備投資が増勢を維持する。一方で、家計の税・社会保険料負担の増加を背景に個人消費は増勢の鈍化が見込まれる。また、厳しい財政情勢を受けて公共投資の減少が続くとともに、住宅投資も調整が続くと考えられる。
3.県内経済の勢いを県内総支出の伸び率で示すと、2003年度が前年比+0.6%、続く2004年度も同+1.0%となる。神奈川の場合、生産拠点の再編など経済の構造調整圧力が他地域より強めに作用していることから成長率は低めにとどまることになろう。しかしながら、3年続けてプラス成長となることで県経済にも徐々にではあるが明るさが広がっていくことが期待される。
- 1.2003年の神奈川県経済はイラク戦争などによる世界景気の減速や冷夏の影響などから夏場にかけて踊り場的局面を迎えたものの、戦争などの終結に伴って輸出が増勢に転じるとともに生産活動に底打ちの兆しがみられるなど、秋口以降は企業部門を中心に景気の持ち直しに向けた動きが明らかになった。
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2004-02-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年2月号 近年における神奈川県内の建設投資の動向と2004年度の見通し
- 要約
- 1.国土交通省「建設総合統計」によると、神奈川県内で行われる建設投資は1991年度をピークに減少傾向となり、90年代半ばまでは全国を上回るペースで落ち込んだ。しかしながら、90年代終盤から2002年度までの期間については縮小ペースが比較的緩やかにとどまった。これは、マイホーム需要の増大や鉄道関連工事の増加などを背景に民間投資が底堅く推移したためである。
2.2003年度に入ってからの状況をみると、県内建設投資は再び縮小のペースを速めているように見受けられる。実際に、民間投資については、県内新設住宅着工戸数が分譲マンションの在庫調整が進められたことなどから上期を中心に急速な落ち込みを示しているほか、住宅投資以外においても、事業用建築物の着工工事費予定額などが夏場まで前年実績を下回って推移した。さらに、公共投資についても建設業の公共機関からの受注金額が減少傾向にある。
3.さらに2004年度についても、県内建設投資は縮小を続けるとみられる。すなわち、持家や分譲一戸建ての建築が2003年度の駆け込み的な需要増の反動から冷え込むと予想されるなど、住宅投資は減少を続ける可能性が高く、また、公共投資についても、厳しい財政事情から政府・自治体は投資的経費を抑制せざるを得ない状況にある。ただ、民間の非住宅投資については、企業業績の改善を背景に緩やかな増加が続くと予想される。
4.以上をまとめると、県内建設投資は2003年度が前年比7.9%減の3兆2千億円強の見込み、2004年度が同3.4%減の3兆1千億円強の予想となる。建設投資の規模は概ね80年代前半の水準に、また、減少ペースはバブル崩壊から90年代半ばまでに近いスピードとなる。もっとも、そうした厳しい環境下においても、リフォーム・リニューアル市場などのように部分的には長期的な成長が望める分野がある。今後はそうした新分野を開拓していけるかどうかが県内建設業の発展の重要なカギとなろう。
- 1.国土交通省「建設総合統計」によると、神奈川県内で行われる建設投資は1991年度をピークに減少傾向となり、90年代半ばまでは全国を上回るペースで落ち込んだ。しかしながら、90年代終盤から2002年度までの期間については縮小ペースが比較的緩やかにとどまった。これは、マイホーム需要の増大や鉄道関連工事の増加などを背景に民間投資が底堅く推移したためである。
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2004-03-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年3月号 神奈川消費総合指数からみた県内消費の現況
- 要約
- 1.神奈川の景気は企業部門を中心とした回復が続いている。一方で個人消費は依然として低調であり、その持ち直しが今後の景気拡大の力強さを考えるうえでポイントとなることから、消費動向を迅速かつ正確に把握する重要性が高まっている。
2.神奈川において利用可能な消費関連統計をみると、以下のような問題点があった。すなわち、(1)GDP統計は四半期ベースで発表が遅い、(2)各販売統計ではサービス関連支出の捕捉ができない、(3)家計調査では総額ベースの消費額の変化が把握できない、といったことである。
3.そこで、本稿では地域における消費動向を総合的かつ迅速に捉えることを目的とした神奈川消費総合指数の作成を行った。当指数では、(1)月次で推計を行っている、(2)財に加えてサービス関連消費も含んでいる、(3)世帯数を考慮することで県内消費を規模として捉えることができる、といった点が利点としてあげられる。
4.神奈川消費総合指数の推移をみると、近年の県内消費は、2002年において保健・医療や通信、自動車購入費などにより押し上げられたことから上向きの動きとなったものの、2003年入り以降は一進一退の動きが続いている。
- 1.神奈川の景気は企業部門を中心とした回復が続いている。一方で個人消費は依然として低調であり、その持ち直しが今後の景気拡大の力強さを考えるうえでポイントとなることから、消費動向を迅速かつ正確に把握する重要性が高まっている。
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*本稿に関するプレスリリースはこちらです。
2004-04-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年4月号 身近な生活領域を中心に広がりを見せるコミュニティビジネス
- 要約
- 1.コミュニティビジネスは、介護や子育て、リサイクル、まちづくりなど、生活に関わる身近な問題を解決するために、地域の住民が主体となって継続的に行っていく事業である。それは、地域社会への貢献を目的として、行政機関や民間企業が手がけないような事業に取り組むことから、公と私の中間にある「共益」を担う存在と位置づけられる。
2.近年、コミュニティビジネスが様々な分野で広がっている要因として、(1)社会環境の急激な変化によって日々の暮らしにおいても従来の枠組みでは解決できない問題が生じ、それへの対応が求められるようになっていること、(2)他方で、個人の意識やライフスタイルの変化から、地域の問題に関心を持ち地域に根ざした活動を支える人々が増加傾向にあることなどがあげられる。そのため、地域住民や行政機関などを中心に、コミュニティビジネスを通じて住民同士の結びつきや地域密着型の生活サービスが生まれ、それらが地域の活性化につながることを期待する向きが増えている。
3.コミュニティビジネスの実態をみると、事業は高齢者や障害者への生活支援、子育て支援、不用品のリサイクルなど、生活関連分野を中心に多岐にわたる。また、組織形態はNPO法人(特定非営利活動法人)をはじめ、株式会社や有限会社、任意団体などの形で運営され、事業規模も年間数億円に達する団体から100万円程度のところまであるなど、多様性に富んでいる。
4.今後、コミュニティビジネスが地域に浸透していくには、事業者への信頼の確立、担い手となる人材や安定的な資金源の確保といった点がカギとなる。最近では、コミュニティビジネスが認知されるのに伴い行政や経済団体などによる支援の動きが広がりつつあり、こうした支援は単に個々の事業者の育成にとどまらず、地域内でヒト、モノ、カネ、サービスが循環する仕組みを育成する一助ともなろう。
5.企業の視点から見た場合、コミュニティビジネスの事業スタイルは、地域社会への配慮など社会的責任を意識した経営を実践する際の参考にもなり得る。また、その事業のなかには消費者ニーズが潜んでいる可能性も高く、企業経営者にとって、新たな着眼点を提示するものとなるだろう。
- 1.コミュニティビジネスは、介護や子育て、リサイクル、まちづくりなど、生活に関わる身近な問題を解決するために、地域の住民が主体となって継続的に行っていく事業である。それは、地域社会への貢献を目的として、行政機関や民間企業が手がけないような事業に取り組むことから、公と私の中間にある「共益」を担う存在と位置づけられる。
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2004-05-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年5月号 回復の動きが広がりつつある神奈川県内景気
- 要約
- 1.年明け以降の神奈川県内景気は、好調な企業部門に続いて、これまで低調に推移してきた家計部門でも持ち直しの動きがみられるようになっており、総じてみると回復の裾野が広がりつつある。
2.すなわち企業部門では輸出の増勢が続き、製造業の生産水準が高まるともに、企業収益も改善し、さらには設備投資の増勢も明らかとなっている。また、家計部門も住宅投資が急回復しているとともに、株価の回復や雇用不安の後退を背景とした消費マインドの改善にともなって個人消費も持ち直しに転じつつある。
3.先行きについては、企業のリストラ意欲が根強いことなどを背景に個人消費の回復は緩やかにとどまると考えられる。一方、鋼材などの原材料価格の高騰によって生じた企業収益への悪影響は売上高の伸びや一段のコスト削減努力により緩和されるとみられ、企業部門は引き続き堅調な回復が見込まれる。
- 1.年明け以降の神奈川県内景気は、好調な企業部門に続いて、これまで低調に推移してきた家計部門でも持ち直しの動きがみられるようになっており、総じてみると回復の裾野が広がりつつある。
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2004-06-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年6月号 何が東京圏の転入超過幅の拡大をもたらしたのか
- 要約
- 1.近年の東京圏における転入超過幅の拡大は、非東京圏からの転入の増加というよりは、非東京圏への転出の減少によるところが大きい。転入は1995年に増加に転じたが、転入の中心となる非東京圏の若年人口が減少を続けたことから増勢は緩やかにとどまった。一方で転出は93年にピークをつけて以降、減少を続けている。これは主に、これまでの転入の長期的な水準の低下を反映して、Uターン移動が減少しているためと考えられる。
2.転入と転出の推移を男女別にみると、90年代以降は相対的に女性の移動が堅調となっている。これは、進学や就職に際しての女性の移動が従来よりも広域的に行われるようになったためと考えられる。
3.また、年齢階級別にみると、近年の転入の増加は20~40歳代前半の年齢層で顕著であり、一方の転出の減少は10代後半~20歳代の年齢層を中心に起きている。この背景を探るためにライフステージの変化ごとの移動状況をみてみると、まず、高校卒業後の進学や就職に伴う移動では、少子化の影響を受けて転入と転出がともに減少傾向をたどっている。また、転出の減少については、80年代の中ごろから強まる傾向にあった進学先や就職先としての非東京圏の吸引力が90年代終盤以降に弱まり始めたことも一因になっている。
4.次に、大学卒業後の就職に伴う移動では、東京圏の転出超過幅の縮小が確認される。他方で東京圏の大学を卒業した非東京圏出身者が増加傾向にあることを考え合わせると、この転出超過幅の縮小はどちらかといえば転入の増加による部分が大きいと思われる。
5.さらに90年代以降は、東京圏に本社を置く企業が非東京圏にある支社の人員を減らす一方で東京圏の本社人員を増強する動きが観察される。こうした企業行動の変化は転勤に伴う人口移動に影響を与え、20~40歳代の広範な年齢層における転入の増加と転出の減少をもたらした可能性が高い。
- 1.近年の東京圏における転入超過幅の拡大は、非東京圏からの転入の増加というよりは、非東京圏への転出の減少によるところが大きい。転入は1995年に増加に転じたが、転入の中心となる非東京圏の若年人口が減少を続けたことから増勢は緩やかにとどまった。一方で転出は93年にピークをつけて以降、減少を続けている。これは主に、これまでの転入の長期的な水準の低下を反映して、Uターン移動が減少しているためと考えられる。
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2004-07-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年7月号 コスト削減と増収により大幅増益となった県内上場企業の2003年度決算
- 要約
- 1.2003年度の神奈川県内上場企業にある決算を集計したところ、売上高が前年比5.3%増、経常利益が同61.9%増と、2年連続の「増収増益」になった。また、増収増益であった企業数は集計対象85社中50社と半数以上にのぼった。
2.2003年度決算の特徴は、従来のコスト削減に代わって売上高の増加が経常利益の増加を支える最大の要因になったことである。売上高は国内の民間設備投資の拡大を受けて工作機械メーカーやトラックメーカーなどで拡大し、アジア向けを中心に海外売上高も順調に伸びた。加えて、固定費などのコストも引き続き厳しく削減されたため、経常利益の回復幅は過去10年間で最も高い水準となっている。
3.こうした増収効果やコスト削減効果に伴い、企業の収益体質は安定感を増している。県内上場企業全体について損益分岐点比率を算出したところ、2003年度は73.6%と前年度の81.4%から大幅に低下した。
4.2004年度について各社の業績見通しを集計すると、売上高が前年比4.3%増、経常利益についても同20.8%増と引き続き「増収増益」が見込まれている。そこで、それらの見通し等を前提に2004年度の損益分岐点比率を計算すると71.9%となる。また、この比率を用いることにより試算を行うと、2004年度の売上高見通し等を前提とすれば、固定費を2003年度比で3%増加させても2004年度の県内上場企業全体の経常利益は増益になるという結果になる。
- 1.2003年度の神奈川県内上場企業にある決算を集計したところ、売上高が前年比5.3%増、経常利益が同61.9%増と、2年連続の「増収増益」になった。また、増収増益であった企業数は集計対象85社中50社と半数以上にのぼった。
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2004-08-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年8月号 価格の低下が続く一方で数量は堅調に増加した近年の神奈川3港輸出
- 要約
- 1.神奈川県内の貿易港を通じた輸出金額は2002年以降増加に転じている。当社が独自に作成した神奈川3港の貿易指数によれば、輸出価格は小幅な低下が続いているものの、輸出数量が堅調に増加していることが明らかになった。
2.輸出数量の伸び(2001~2003年)を地域別にみると、米国やEU向けに比べて、アジア向けは高い伸びとなっている。なかでも、中国向けについては消費需要と設備投資の拡大を背景に2年間で約1.5倍と高伸した。
3.品目別には輸送用機械や非鉄金属、一般機械などの輸出数量が大幅に増加した一方で、電気機器や精密機器類は大きく減少している。2002年以降の増加が堅調な輸送用機械の内訳をみると、主力の乗用車に加えて、貨物自動車や自動車の部分品についても上向きの動きが続いている。
4.一方、電気機器においては、県内における生産拠点が減少していることや空輸の拡大によって輸出数量は減少傾向となっている。ただ、映像機器など一部の品目において、従来の主力商品から、高付加価値品へのシフトの動きも出てきている。
- 1.神奈川県内の貿易港を通じた輸出金額は2002年以降増加に転じている。当社が独自に作成した神奈川3港の貿易指数によれば、輸出価格は小幅な低下が続いているものの、輸出数量が堅調に増加していることが明らかになった。
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2004-09-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年9月号 2004年度・2005年度の神奈川県内経済見通し(2004年9月改訂)
- 要約
- 1.2004年前半の神奈川県経済は、輸出の増加などを背景に生産活動の持ち直しが明らかとなるとともに、好調な企業収益を受けて設備投資が増加するなど企業部門が主導するかたちで景気の回復が続いた。また厳しさの残る雇用・所得情勢を背景にこれまで出遅れてきた個人消費も好天に恵まれたゴールデンウィークやアテネ五輪開催に伴うデジタル家電ブームなどを受けて堅調となるなど、年前半の県景気は明るさの目立つ展開となった。
2.2004年度の県内景気は年度後半に軽微な調整局面を迎えると考えられる。これは海外景気の減速を受けて輸出の伸びが鈍化するとともに、現下の景気の原動力となっている企業部門の勢いが鈍るためである。加えて秋口以降は、家計の租税・社会保険料負担が増すなかで、好調であった上半期の反動もあって個人消費の増勢鈍化が見込まれる。続く2005年度は個人消費の弱含みが続くほか、住宅投資の調整や公共投資の減少が続くものの、年度の後半には海外景気の持ち直しとともに輸出が勢いを取り戻すと考えられる。加えて、既往リストラにより企業の収益体質が強化されていることから、企業収益の回復と設備投資の増勢は持続することが見込まれる。
3.県内経済の勢いを県内総支出の伸び率で示すと、2004年度が前年比+1.3%(前回1月予測の+1.0%を上方修正)、続く2005年度も同+1.7%となる。神奈川の場合、国内外における設備投資の振幅の影響が大きめに受けることや、将来の生き残りをかけた研究開発などの設備投資活動が今後の県内では勢いを増してくると見込まれることから、2004年度の成長率は低めにとどまるものの、2005年度は前年度を上回る経済成長をとげることになろう。
- 1.2004年前半の神奈川県経済は、輸出の増加などを背景に生産活動の持ち直しが明らかとなるとともに、好調な企業収益を受けて設備投資が増加するなど企業部門が主導するかたちで景気の回復が続いた。また厳しさの残る雇用・所得情勢を背景にこれまで出遅れてきた個人消費も好天に恵まれたゴールデンウィークやアテネ五輪開催に伴うデジタル家電ブームなどを受けて堅調となるなど、年前半の県景気は明るさの目立つ展開となった。
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2004-10-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年10月号 移動の短距離化と都心回帰現象が並行した東京圏内の人口移動
- 要約
- 1.近年の東京圏の内部では80年代後半に比べ活発な人口移動が行われている。この背景としては、人口規模の大きい1960年代後半生まれや1970年代前半生まれの世代がライフステージの変化が起こりやすい20歳代後半~30歳代前半に達したことや、30歳代や40歳代の持家取得が盛んになったことなどがあげられる。
2.また、近年の東京圏内部における人口移動の変化を空間的に捉えた場合、(1)市区町村の内部での移動が活発化している、(2)市区町村界を越えるような移動では、東京都心部をはじめとする中核地から周辺部への移動の動きが弱まる一方で周辺部から中核地への移動の動きが強まる傾向が東京圏全体で観察される(都心回帰現象)、という2つの特徴がみてとれる。
3.このうち、市区町村の内部での人口移動が活発になった背景としては、地価の地域間格差の縮小等によって他地域への転出のメリットが薄まり、他地域への転出を抑制するサンクコストの存在感が移動先の選択において相対的に高まったことが考えられる。
4.また、都心回帰現象の背景としては、(1)中核地から周辺部への転出が市区町村内移動の増加に振り替わったという側面、(2)東京圏内の中核地での住宅供給がマンションを中心に大量に行われ、職住近接を望む消費者の支持を集めた、(3)それ以前の人口の郊外化によって、若年層を中心に中核地と周辺部との間の人口分布格差が広がっていた、(4)東京都と神奈川県の間の人口移動に関しては、東京都の企業の拠点集約も影響した、という4点が考えられる。
- 1.近年の東京圏の内部では80年代後半に比べ活発な人口移動が行われている。この背景としては、人口規模の大きい1960年代後半生まれや1970年代前半生まれの世代がライフステージの変化が起こりやすい20歳代後半~30歳代前半に達したことや、30歳代や40歳代の持家取得が盛んになったことなどがあげられる。
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2004-11-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年11月号 企業部門主導の回復が続いた2004年度上半期の神奈川県内景気
- 要約
- 1.2004年度上半期の神奈川県内景気を概観すると、企業部門をけん引役とする回復が続いている。すなわち、企業部門では輸出の増勢が続き、製造業の生産水準が引き続き高まるとともに、企業収益の改善を受けて設備投資も活発化している。一方の家計部門についても、足下の住宅投資が駆け込み需要などから増加し、個人消費も雇用・所得情勢の改善とともにアテネ五輪開催に伴ったデジタル家電需要が盛り上がるなど、総じて底堅く推移した。
2.先行きについては、雇用・所得環境の大幅な改善が期待できないなかで家計の税・社会保障費負担が増してくることから個人消費の回復は緩やかにとどまるであろう。一方、海外景気の減速に伴い輸出に増勢鈍化の兆しがみられることや、原油や鋼材など原材料価格の高騰が長期化するなど、景気の減速懸念が徐々に広がり始めている。しかしながら、既往リストラにより強固となった県内企業の収益体質などを反映して、企業収益や設備投資は増勢を維持すると考えられる。したがって、今後の県内景気は一時的に調整局面を迎えるものの、大幅に落ち込む可能性は低いといえよう。
- 1.2004年度上半期の神奈川県内景気を概観すると、企業部門をけん引役とする回復が続いている。すなわち、企業部門では輸出の増勢が続き、製造業の生産水準が引き続き高まるとともに、企業収益の改善を受けて設備投資も活発化している。一方の家計部門についても、足下の住宅投資が駆け込み需要などから増加し、個人消費も雇用・所得情勢の改善とともにアテネ五輪開催に伴ったデジタル家電需要が盛り上がるなど、総じて底堅く推移した。
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2004-12-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2004年12月号 乗用車の輸入減少や県内生産の低迷から低調に推移した神奈川3港輸入
- 要約
- 1.1996年から2003年における神奈川3港の輸入額は、全国ベースで上向きの動きとなるなかで低調に推移した。財別にみると、神奈川3港では工業用原料や食料品が増加したものの、資本財や非耐久消費財、耐久消費財は減少している。
2.当社で独自に作成した神奈川3港の輸入貿易指数を用いて財別の輸入額の動きをみると、工業用原料では市況要因などにより輸入価格が大幅に上昇したことが輸入額の増加に寄与する一方、食料品では、食品輸入に対する規制緩和などを背景とした輸入数量の増加が輸入額を押し上げている。
3.一方、輸入額が減少した耐久消費財、非耐久消費財、資本財では、いずれも価格が低下するなかで、数量面の動きに違いがみられた。まず、耐久消費財は、主要内訳品目である乗用車の輸入数量が大幅に減少したことが輸入額を大きく押し下げた。また、非耐久消費財をみると、輸入数量に増加の動きがみられたものの、輸入価格の低下から金額ベースでは減少した。一方、資本財では、事務用機器などで輸入価格が低下するなか、県内製造業生産の低迷を背景とした輸入数量の伸び悩みが輸入額の減少につながった。
- 1.1996年から2003年における神奈川3港の輸入額は、全国ベースで上向きの動きとなるなかで低調に推移した。財別にみると、神奈川3港では工業用原料や食料品が増加したものの、資本財や非耐久消費財、耐久消費財は減少している。
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2005-01-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年1月号 2005年度の神奈川県内経済見通し
- 要約
- 1.2004年の神奈川県経済は、年初から半ばにかけて輸出の増加を背景に生産活動の持ち直しが明確化し、好調な企業収益を反映して設備投資が増加するなど企業部門主導の景気回復が続いた。ただ秋口以降は海外景気減速に伴う輸出の増勢鈍化や、天候不順などを背景に底堅く推移してきた個人消費も弱めの動きとなるなど、景気の減速感が次第に強まってきた。
2.2005年度の県内経済は、年度前半に景気の調整色が一時的に強まる可能性があるものの、後半になると踊り場的局面を脱して持ち直しに向かうと考えられる。これは海外景気が再び上向くにつれて、輸出増に伴う生産活動の持ち直しが徐々に明らかとなるためである。一方で家計の税・社会保険料負担の増加を背景に個人消費は増勢が鈍化し、住宅投資もマイナスに転じるものの、設備投資は企業収益の回復が続くことから増勢を維持すると考えられる。
3.県内経済の勢いを県内総生産の伸び率で示すと、2004年度が前年比+2.0%、続く2005年度も同+1.5%となる。神奈川の場合、県内自治体の誘致政策の奏功などを背景に大型投資が進捗することから設備投資が成長率を底上げし、前年度に比べて成長は鈍化するものの、3年続けてのプラス成長となる。
- 1.2004年の神奈川県経済は、年初から半ばにかけて輸出の増加を背景に生産活動の持ち直しが明確化し、好調な企業収益を反映して設備投資が増加するなど企業部門主導の景気回復が続いた。ただ秋口以降は海外景気減速に伴う輸出の増勢鈍化や、天候不順などを背景に底堅く推移してきた個人消費も弱めの動きとなるなど、景気の減速感が次第に強まってきた。
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2005-02-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年2月号 近年見直され始めた製造業の都市圏立地
- 要約
- 1.近年わが国の製造業では、国内とくに都市圏への立地を見直す機運にある。2003年の工場立地件数は前年比24.6%増の1,052件と、前年の844件から2年ぶりに1千件台を回復した。地域別にみると、三大都市圏(556件)が地方圏(496件)を高度成長期以来、事実上初めて上回った。
2.工場建設の動きでとくに目立つのは、シャープの大型液晶パネル(三重県亀山市)などデジタル家電関連で、1件あたりの投資額が軒並み500億円を上回っている。神奈川県内でも、日産自動車が横浜工場でエンジンの生産能力を増強するなど、「工場は出ていく一方で再び戻ることはない」という近年の“常識”を覆す動きがみられている。
3.こうした背景には、研究開発と製造の密接な関わり合いが求められる、いわゆる“摺り合わせ型”の製品分野への需要増に対応した設備投資が拡大していることなどに加えて、地方公共団体による積極的な誘致活動が功を奏したことも見逃せない点であろう。
4.立地選択を企業の競争戦略の観点からとらえると、これまで最も障害となってきた高地価の問題が解消に向かったため、人材確保、支援産業の存在など都市圏有利となる方向に条件が整ってきた。そうした状況下で、補助金や税優遇などの助成措置がインセンティブとして効果を発揮したものと考えられる。実際、90年代半ば以降の47都道府県別の工場立地件数を賃金、地価などを説明変数とした関数推計を行ったところ、地方自治体による助成・あっせんが工場立地を増加させるうえで効果ありとの結果が得られた。
5.政策サイドからみると、既存の産業集積と関連の深い企業の誘致は地域経済を活性化するための起爆剤としてたいへん効果的である。需要が存在しないところでは、基盤技術を有した中小企業であっても衰退を免れず、また有力なベンチャー企業も育たない。金融支援から企業誘致に至るまでのポリシーミックスを効果的かつ継続的に遂行していくことが肝要であろう。
- 1.近年わが国の製造業では、国内とくに都市圏への立地を見直す機運にある。2003年の工場立地件数は前年比24.6%増の1,052件と、前年の844件から2年ぶりに1千件台を回復した。地域別にみると、三大都市圏(556件)が地方圏(496件)を高度成長期以来、事実上初めて上回った。
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2005-02-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年2月号 2005年度の神奈川県内建設投資の見通し
- 要約
- 1.神奈川県内の建設投資は2000年度から2002年度までの3年間、底入れをうかがう動きが続いていた。しかし、昨年11月に発表された2003年度の建設投資は前年比11.2%減と大きく落ち込む格好になっている。
2.もっとも、2004年度に入ってからの県内の建設活動をみると、公共投資が引き続き減少傾向となっているものの、民間の住宅建築は分譲住宅の好調などにより増加基調となっている。また、企業業績の改善などを背景に企業の設備投資関連についても持ち直す傾向にある。当社が建築着工統計等の先行指標を用いて推計したところ、2004年度の県内建設投資は前年比0.1%減と、前年度とほぼ同水準になる見込みになった。
3.2005年度を展望すると、民間の住宅建築は持家系住宅に対する需要の冷え込みなどから再び減少に転じると考えられる。また、公共投資についても厳しい財政事情のもと引き続き減少すると見込まれる。一方、企業の設備投資関連については企業業績の改善が続くと想定され、今後も堅調に推移する可能性が高いとみられる。
4.それらの結果、2005年度の県内建設投資は前年比1.6%減になると予測した。公共投資が同4.7%減と減少ペースを緩めながらも引き続き前年を下回り、民間の居住用投資も同3.3%減と再び減少する。一方で、非居住用の民間投資が同3.4%増と回復傾向を維持する。県内の建設投資は2003年度以降、3年連続で減少するものの、2004年度から2005年度にかけての減少の勢いは比較的緩やかなものにとどまろう。
- 1.神奈川県内の建設投資は2000年度から2002年度までの3年間、底入れをうかがう動きが続いていた。しかし、昨年11月に発表された2003年度の建設投資は前年比11.2%減と大きく落ち込む格好になっている。
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2005-03-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年3月号 少子化などにより伸び悩むなか新しい動きがみられるコンテンツ市場
- 要約
- 1.1990年代前半まで拡大が続いた国内のコンテンツ市場規模は、90年代後半以降横ばいで推移している。内訳をみると、映像については拡大傾向が続く一方、音楽、ゲーム、出版は90年代半ばをピークとして縮小している。
2.コンテンツ市場伸び悩みの主因として、若年人口の減少があげられる。ゲームについてみると、主要なユーザーである15~19歳の人口が大幅に減少しており、加えて20~39歳では多忙などを理由に「ゲーム離れ」が進んでいる。
3.一方で、90年代後半からは、携帯電話やインターネットといった急速に普及した情報インフラを用いたコンテンツの活用が広がっている。携帯電話向けでは、着メロなど音楽サービスの市場規模が2003年時点で907億円と2000年の5倍以上に伸びている。インターネット関連でも、オンラインゲームの市場規模が2000年の9億円から2003年に198億円になるなど拡大している。
4.コンテンツは商品であると同時に文化財としての一面があり、質的な面から評価をされることも多い。特に近年では、日本のアニメやゲームといった分野において国際的に評価が高まっている。こうしたコンテンツを支える消費者として注目を集めているのがいわゆる「オタク」である。オタクはゲームやアニメなどついて「強いこだわり」を持った熱心なファンであり、90年代以降インターネットの普及によって潜在層が一気に顕在化したとみられる。
5.一部の企業ではこうしたオタクによる需要の取り組みを積極的に進めており、「萌え」関連にみられるように、メイド喫茶などコンテンツにとどまらないケースも出てきている。このように消費者心理や行動を十分に把握し、ニッチな市場において潜在的な需要を掘り起こすことは、今後人口(特に若年層)が減少局面を迎え規模を追求するマーケティングが難しくなるなかで、企業が消費者のニーズをとらえる方法のひとつとして有用と考えられる。
- 1.1990年代前半まで拡大が続いた国内のコンテンツ市場規模は、90年代後半以降横ばいで推移している。内訳をみると、映像については拡大傾向が続く一方、音楽、ゲーム、出版は90年代半ばをピークとして縮小している。
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2005-04-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年4月号 2期連続で低下した神奈川県内中堅・中小企業の業況判断
- 要約
- 1.業況判断
神奈川県内中堅・中小企業の2005年3月末時点の業況判断D.I.は全産業ベースで▲18と前回12月調査の▲16に比べて2ポイント悪化した。製造業は競争激化に伴う販売価格の低下などを背景に、一般機械や電気機械が悪化したことなどから前回調査の▲7から今回▲16へと9ポイント低下した。一方の非製造業はサービスや建設の改善により▲24から▲20へと4ポイント上昇した。なお、3か月先の予想については▲17とわずかな改善が見込まれている。
2.企業業績等
1~3月の企業業績は売上・損益ともに悪化した。続く4~6月はそれぞれ「悪化」超幅が縮小する見通しになっている。また製造業の受注及び在庫動向も今後は改善に向かう見通しになっている。価格動向については、1~3月に仕入価格動向D.I.の「上昇」超幅が前四半期に比べて縮小した一方で、販売価格D.I.は「低下」超幅が拡大している。
3.設備投資
2005年度の設備投資計画は「実施する」とした企業がほぼ半数を占めている。投資額を前年度より増額する企業は4割強、逆に減額する企業は2割弱にとどまっている。
- 1.業況判断
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2005-05-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年5月号 変容を迫られる中国における拠点機能
- 要約
- 1.中国経済は高成長が続いている。2004年は経済の引き締めが図られたにもかかわらず実質経済成長率は9.5%となった。設備投資や輸出の好調が続いているほか、個人消費が勢いを増している。高成長をけん引する外資企業のウエイトは大きく、工業生産の3割、輸出入額の半分以上を占めている。
2.わが国企業の事業活動という点でも中国のウエイトは高まっている。2004年度におけるわが国製造業の中国での現地生産比率は11.6%に達したとみられる。県内企業の中国拠点も急増しており、2004年には218か所と2000年比5割増加した。また神奈川3港の対中輸出入額は2004年度も前年に比べて約1割増加しており、神奈川においても中国との経済関係は緊密さを増している。
3.そうしたなか、安価で豊富な労働力に着目した輸出生産拠点としての中国におけるビジネスのあり方は変わりつつある。県内企業の中国拠点に対するヒアリング調査を行ったところ、地域差はみられるものの人件費の高騰と人手の確保がこれまでよりも困難となったとの声が聞かれた。
4.現地市場への拡販や現地調達率のアップなど真の意味での「現地化」を進めるためには、人事や労務、購買など中国拠点の企業体としての陣容の充実を図り、中国経済の激しい変化に適切に対応していくことが重要となろう。
- 1.中国経済は高成長が続いている。2004年は経済の引き締めが図られたにもかかわらず実質経済成長率は9.5%となった。設備投資や輸出の好調が続いているほか、個人消費が勢いを増している。高成長をけん引する外資企業のウエイトは大きく、工業生産の3割、輸出入額の半分以上を占めている。
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2005-06-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年6月号 趣味的消費の担い手として注目される30歳代未婚の単独世帯
- 要約
- 1.2000年から2005年にかけて、一都三県では30歳代の未婚・単独世帯の増加傾向が続いている。その要因は、第2次ベビーブーマーが30歳代に入ったことに加えて、男女とも30歳代の未婚率上昇が続いていることがあげられる。
2.東京および神奈川において、30歳代人口に占める未婚・単独世帯の割合が高い地域をみると、女性については渋谷区、中野区、杉並区など東京への集中が目立つ。他方、男性は、東京都区部に加えて、県内でも川崎市中原区、同多摩区、横浜市西区、さらに厚木市など県央地域にも同割合が高い地域が広がっている。
3.消費支出のうち交際費など裁量のはたらく余地の大きい「趣味的消費」について、一都三県における30歳代未婚・単独世帯の支出規模を推計した結果によると、2005年時点で7,476億円に上る。ひとつひとつは小さいものの、全体では名目個人消費の1%を占める規模であり、また自由度の高い購買力としても注目に値する。
4.市区別に趣味的消費の規模をみると、神奈川県内では相模原市、横浜市港北区など未婚・単独世帯が多い地域が上位を占める。もっとも、趣味的消費の相当部分が東京に漏出している可能性が高く、企業のマーケティングや地方自治体による地域活性化を考えるうえで、こうした地元購買力をいかにして取り込んでいくかが重要なポイントのひとつとなろう。
- 1.2000年から2005年にかけて、一都三県では30歳代の未婚・単独世帯の増加傾向が続いている。その要因は、第2次ベビーブーマーが30歳代に入ったことに加えて、男女とも30歳代の未婚率上昇が続いていることがあげられる。
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2005-07-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年7月号 購買力流出に歯止めがかかる近年の神奈川県内小売業
- 要約
- 1.経済産業省「平成16年商業統計調査(速報)」によると、一都三県の小売業では2002年以降2004年にかけて、商店数、従業者数のすう勢的な減少が続くかたわら、売場面積は引き続き増加した。商品販売額については東京都と神奈川県で増加に転じた結果、一都三県計でもおおむね下げ止まった。
2.神奈川県に関して業態別に商品販売額の動向をみると、百貨店の不振が続く一方、総合スーパーや食料品専門店など食料品ウエイトの高い業態では増加に転じた。また、ドラッグストアやホームセンターといった"新業態"では低迷が目立つ結果となった。
3.神奈川県では全60市区町村のうち、2002年から2004年の間に売場面積が増加した地域は29、反対に減少した地域は31と、減少地域が増加地域を上回った。増加した地域の中では、藤沢市の増加面積が最も大きく、次いで横浜市西区、川崎市高津区と続く。反対に、減少した地域では厚木市の減少面積が最も大きく、次いで茅ヶ崎市、相模原市と続いている。
4.商業販売力の地理的な勢力分布の変化としては、神奈川県内の主要な拠点地域で小売吸引力係数が低下する一方で、従来購買力流出の著しかった地域において同係数が上昇するという現象がみられた。当面の見通しとして、ベビーブーマー世代の定年退職者の大量発生、いわゆる2007年問題を商機ととらえ、そうした新規需要を積極的に取り込んでいくことが地域商業の発展のために肝要である。
- 1.経済産業省「平成16年商業統計調査(速報)」によると、一都三県の小売業では2002年以降2004年にかけて、商店数、従業者数のすう勢的な減少が続くかたわら、売場面積は引き続き増加した。商品販売額については東京都と神奈川県で増加に転じた結果、一都三県計でもおおむね下げ止まった。
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2005-08-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年8月号 2005年度・2006年度の神奈川県内経済見通し(2005年8月改訂)
- 要約
- 1.2005年前半の神奈川県内景気は回復の踊り場的局面が続いた。これは、輸出が弱含む中で企業の生産活動も横ばい圏内で推移するなど、外需を起点とする企業部門のけん引力が弱まったためである。一方で堅調な企業収益の伸びを背景に設備投資の回復が続いたほか、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費が2004年終盤の落ち込みから持ち直すなど、県内需要は総じて底堅く推移した。
2.2005年度の県内景気は年度後半に海外景気が上向いて企業部門のけん引力が再び勢いを増してくることから、踊り場的局面から脱却すると考えられる。県内自治体による誘致策の奏功などを背景に設備投資は力強さを増す反面で、家計部門は租税・社会保障費負担が増す中で前年度に比べて個人消費の増勢が鈍化することになろう。続く2006年度は雇用・所得情勢は改善が続くものの定率減税の規模縮小など租税等の負担が増大することから、個人消費の伸びはさらに鈍化するとみられる。ただ、輸出の増加とともに企業部門を中心に回復の動きが広がることから、県内景気は緩やかな回復を持続すると予測した。
3.県内経済の勢いを県内総生産の伸び率で示すと、2005年度が前年比+1.0%(前回1月予測の+1.5%を下方修正)、続く2006年度も同+1.6%となる。神奈川の場合、大型投資の進捗を背景に設備投資の伸びは高めとなる一方で、輸出低迷のマイナスの影響が大きめに出ることから2005年度の成長率は低めにとどまる。続く2006年度は輸出の持ち直しとともに前年度を上回る経済成長をとげ、4年連続のプラス成長となろう。
- 1.2005年前半の神奈川県内景気は回復の踊り場的局面が続いた。これは、輸出が弱含む中で企業の生産活動も横ばい圏内で推移するなど、外需を起点とする企業部門のけん引力が弱まったためである。一方で堅調な企業収益の伸びを背景に設備投資の回復が続いたほか、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費が2004年終盤の落ち込みから持ち直すなど、県内需要は総じて底堅く推移した。
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2005-09-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年9月号 中小製造業の創造的ネットワークの形成に向けて(前編)
- 要約
- 1.1980年代半ば以降、わが国中小製造業の経営基盤を成してきた系列取引のネットワーク(いわゆる下請・系列関係)は大きく変容してきた。また、その一方で、近年では、中小企業が系列関係にない他企業や大学・研究機関などとの連携によって新技術・新製品開発や新分野進出などに取り組む事例がみられるようになっている。下請・系列関係の変容を中小製造業を取り巻く縦方向のネットワークの変容とすれば、他企業等との連携により新分野進出などに取り組む動きは横方向のネットワークの変容ととらえることができる。
2.横浜市が平成16年度に実施した調査の結果から、縦・横両方向のネットワークの変容を横浜市内の中小製造業についてみると、まず、縦方向の変容に関しては、系列外のメーカーに向けた取引がますます活発になるといった変化、すなわち専属的な関係から開放的な関係への変化が確認される。また、それ以外にも、中小製造業が大手メーカーの示した仕様に改善案を提案したり、あるいは複数の製造業者をコーディネートして効率的な生産体制を企画し、大手メーカーに提案したりする、役割分担の変化、すなわち従属的・下請型の関係から自立的・企画提案型の関係への変化も生じている。
3.一方、横方向のネットワークの変容に関しては、過去5年間に新製品・新技術開発や新分野進出に取り組んだ市内中小製造業のうちの4割強が取組にあたって「親会社・関連会社以外のメーカー」との連携を実施しており、また、社外との連携を実施した企業の4分の1強が「商社などの卸売業」から連携相手の紹介や仲介を受けているなどの動きが確認できる。さらに、市内企業同士の連携が少ない一方で、連携相手の紹介や仲介では主に市内のネットワークが活用されていることなど、横方向のネットワーク活用の広域的な促進策を考えるうえで興味深い事象も観察されている。
※本稿は、横浜市が平成16年度に弊社に委託して実施した「創造的ネットワーク形成のための新たな産業支援システム検討調査」の報告書の一部を再編集したものである。同調査結果の本誌への掲載をご了承いただいた横浜市に感謝申し上げる。
- 1.1980年代半ば以降、わが国中小製造業の経営基盤を成してきた系列取引のネットワーク(いわゆる下請・系列関係)は大きく変容してきた。また、その一方で、近年では、中小企業が系列関係にない他企業や大学・研究機関などとの連携によって新技術・新製品開発や新分野進出などに取り組む事例がみられるようになっている。下請・系列関係の変容を中小製造業を取り巻く縦方向のネットワークの変容とすれば、他企業等との連携により新分野進出などに取り組む動きは横方向のネットワークの変容ととらえることができる。
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2005-10-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年10月号 年末に向けて改善が見込まれる神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断神奈川県内中堅・中小企業の2005年9月末時点の業況判断D.I.は全産業ベースで前回調査比横ばいの▲18となった。製造業では、一般機械や電気機械が悪化する一方で鉄鋼・非鉄などで改善して、全体では前回と同水準の▲6となった。一方の非製造業は卸・小売の悪化などから▲27から▲29へとわずかに低下した。なお、3か月先の予想については受注や売上高が上向いてくることなどから全産業ベースで▲12と改善が見込まれている。
2.企業業績等7~9月期の企業業績は売上高が改善したものの、損益は小幅に悪化した。続く10~12月期にはそれぞれ改善し、売上高は「増加」超、損益も「好転」超に転じる見通しである。また10~12月期には製造業受注が「増加」超に転じ、在庫調整も引き続き進展する見通しになっている。
3.価格動向7~9月期には仕入価格動向D.I.の「上昇」超幅が前の四半期に比べて拡大する一方で、販売価格D.I.は「低下」超幅が縮小した。なお、仕入れ価格上昇による損益の下振れリスクは売上高や生産の持ち直しとともに低下する見通しとなっている。
4.トピック来春の新卒採用を予定している企業の割合は55%と前年調査に比べて上昇した。なお、中小企業においてもほぼ半分が新卒採用を予定している。
- 1.業況判断神奈川県内中堅・中小企業の2005年9月末時点の業況判断D.I.は全産業ベースで前回調査比横ばいの▲18となった。製造業では、一般機械や電気機械が悪化する一方で鉄鋼・非鉄などで改善して、全体では前回と同水準の▲6となった。一方の非製造業は卸・小売の悪化などから▲27から▲29へとわずかに低下した。なお、3か月先の予想については受注や売上高が上向いてくることなどから全産業ベースで▲12と改善が見込まれている。
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2005-11-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年11月号 中小製造業の創造的ネットワークの形成に向けて(後編)
- 要約
- 1.横浜市が平成16年度に実施した調査によれば、過去5年間に新製品・新技術開発や新分野進出に取り組んだ企業の取り組み成果に対する評価は、他企業等との連携を行った企業の方が行わなかった企業よりも高くなる傾向にある。また、連携を行った企業のなかでも、第三者による連携相手の紹介や仲介を受けた企業の方が受けなかった企業に比べて成果に対する評価が高い。これらの事実から、連携や紹介・仲介など横方向のネットワークの活用が新分野進出等の取り組みに一定の効果を持つことが確認できる。
2.また、ネットワークの活用パターンによる連携効果の違いに関わる分析結果からは以下のような示唆が得られる。すなわち、(1)連携相手の知識や能力などについての情報を事前に入手できるようになれば、連携による新分野進出等の取り組みが成果をあげやすくなる。(2)連携を効果的なものにするためには、連携相手と「お互いの技術レベルや仕事の進め方等について良く知っている」ような関係を築くことが重要である。また、そのような関係を構築するうえでも、事前に連携相手の知識や能力などについての情報を入手することが有効である。(3)連携相手の知識や能力などに関する中小製造業の希望を把握する力に長けた者が連携相手の紹介・仲介者となる場合に、連携による取り組みが成果をあげやすい、などである。
3.これらを踏まえると、中小製造業による横方向のネットワークの活用を促進していくうえで最も必要とされるのは、技術や知識、能力などに関する企業間の信頼関係を強化していく取り組みである。そうした信頼関係を基盤に、中小製造業同士、または中小製造業とそれ以外の多様な主体との結びつきが広がっていけば、地域の企業集積が創造的ネットワークとして成熟し、地域経済の発展に寄与することになろう。
※本稿は、横浜市が平成16年度に弊社に委託して実施した「創造的ネットワーク形成のための新たな産業支援システム検討調査」の報告書の一部を再編集したものである。同調査結果の本誌への掲載をご了承いただいた横浜市に感謝申し上げる。
- 1.横浜市が平成16年度に実施した調査によれば、過去5年間に新製品・新技術開発や新分野進出に取り組んだ企業の取り組み成果に対する評価は、他企業等との連携を行った企業の方が行わなかった企業よりも高くなる傾向にある。また、連携を行った企業のなかでも、第三者による連携相手の紹介や仲介を受けた企業の方が受けなかった企業に比べて成果に対する評価が高い。これらの事実から、連携や紹介・仲介など横方向のネットワークの活用が新分野進出等の取り組みに一定の効果を持つことが確認できる。
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2005-12-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2005年12月号 中国経済の現状と展望
- 要約
- 1.2005年7~9月期の実質GDP成長率が前年比+9.4%となるなど、中国景気は好調に推移している。雇用・所得環境やセンチメントの改善、農村減税の効果などによって個人消費が堅調さを増しているほか、企業の投資活動も高水準を維持している。金融引き締め下にあっても、投資の過熱感が払拭されないのは、中央政府の管轄が及ばない地方プロジェクトが拡大していることや非正規ルートの資金調達が増えていることなどによる。7月下旬に通貨人民元が対ドルで2%切り上げられたが、その影響は限定的なものにとどまり、輸出にスローダウンの兆しは出ていない。2005年10~12月期も内・外需がそろって高い伸びを示すとみられ、2005年通年の実質GDPは前年比+9.4%と3年連続で9%台の高成長を達成しよう。
2.2006年の中国経済を展望すると、景気過熱を抑制するための金融引き締め政策が継続されるが、2008年開催の北京オリンピックや2010年開催の上海万博に向けてインフラ整備などが加速するため、企業の投資は高い伸びで推移すると見込まれる。また、個人消費についても雇用・所得環境が引き続き良好となるなか、10%を超える成長が期待できる。一方、中国当局は人民元改革の一貫として、2006年内に人民元を対ドルで2~4%程度切り上げるとみられ、この影響で輸出の伸びは鈍化し、外需の成長への寄与は低下する公算が大きい。外需の伸びは鈍化するものの内需が高い伸びを示すことから、実質経済成長率は前年比+9.1%と高成長路線が続く見通しだ。
3.もっとも、中国景気の先行きに対するリスク要因も決して少なくない。2006年の中国経済を見通すにあたっては、(1)鳥インフルエンザ流行の影響や、(2)金融引き締め強化による新たな不良債権の増加、(3)人件費上昇に伴う直接投資の減少といったリスクに十分な注意を払っておく必要がある。
※本稿はBRICs経済研究所代表の門倉貴史氏に寄稿していただいたものである。
- 1.2005年7~9月期の実質GDP成長率が前年比+9.4%となるなど、中国景気は好調に推移している。雇用・所得環境やセンチメントの改善、農村減税の効果などによって個人消費が堅調さを増しているほか、企業の投資活動も高水準を維持している。金融引き締め下にあっても、投資の過熱感が払拭されないのは、中央政府の管轄が及ばない地方プロジェクトが拡大していることや非正規ルートの資金調達が増えていることなどによる。7月下旬に通貨人民元が対ドルで2%切り上げられたが、その影響は限定的なものにとどまり、輸出にスローダウンの兆しは出ていない。2005年10~12月期も内・外需がそろって高い伸びを示すとみられ、2005年通年の実質GDPは前年比+9.4%と3年連続で9%台の高成長を達成しよう。
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2006-01-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年1月号 2006年度の神奈川県内経済見通し
- 要約
- 1.2005年の神奈川県内景気は、秋口まで回復の踊り場的局面が続いたものの、終盤になってようやく上向いた。これは、年後半から中国や米国向け輸出が増勢に復し、外需を起点とする企業部門の回復力が持ち直してきたためである。また、神奈川県の「インベスト神奈川」など自治体による企業誘致策を呼び水として設備投資の増勢が続いたほか、雇用・所得環境の改善などを背景に個人消費も持ち直すなど、県内需要は総じて底堅く推移した。
2.2006年度の県内景気は民間需要がけん引する自律的な回復を遂げると予測する。海外景気の拡大を背景に輸出の増勢が強まるとともに、県内製造業の生産活動や企業収益も上向きとなろう。そうしたなか、公共投資は減少が続き、住宅投資も高水準となった2005年度を下回るとみられるものの、設備投資は堅調な伸びを持続する。個人消費も定率減税の規模縮小など租税等の負担が増加するなかで、雇用・所得情勢の改善が進むことから底堅く推移しよう。
3.県内経済の勢いを県内総生産の伸び率で示すと、2005年度が前年比+1.5%、続く2006年度も同+2.5%となる。神奈川の場合、大型投資の進捗を背景に設備投資の伸びが高めとなり、生産能力の拡充に伴って移輸出も増加に転じると考えられる。この結果、2006年度の成長率は前年度を上回る経済成長をとげ、4年連続のプラス成長となろう。
- 1.2005年の神奈川県内景気は、秋口まで回復の踊り場的局面が続いたものの、終盤になってようやく上向いた。これは、年後半から中国や米国向け輸出が増勢に復し、外需を起点とする企業部門の回復力が持ち直してきたためである。また、神奈川県の「インベスト神奈川」など自治体による企業誘致策を呼び水として設備投資の増勢が続いたほか、雇用・所得環境の改善などを背景に個人消費も持ち直すなど、県内需要は総じて底堅く推移した。
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2006-02-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年2月号 神奈川県経済の持続的発展のために何をすべきか
- 要約
- 1.神奈川をはじめとした大都市圏経済は、戦後復興期から高度成長期を経て近年に至るまで、人口の集中と資本の大量投入を背景に地方圏と比べて高成長を遂げてきた。都市と地方の間には効率性格差が存在し、規模の経済性や範囲の経済性が大都市圏の成長率を高める方向に作用してきたと考えられる。
2.今後、神奈川県経済が持続的に発展するためには、10年以上の長期にわたって進展が予想される次の3つの環境変化に正面から向き合わなければならない。すなわち、(1)総人口の本格的減少局面の到来と東京圏拡大の終焉、(2)いっそうのグローバル化の進展に伴う競争条件激化、(3)人々の価値観やライフスタイルの緩慢ながら不可逆的な変化のそれぞれに対し、いち早く察知し、適切な対応をとることが企業および地域の将来を左右するカギとなろう。
3.地域経済のパフォーマンスを測るうえで目標とすべき政策変数は、人口減少が不可避な状況にあって“県内総生産”から“1人あたり県民所得”へと移行せざるを得ない。1人あたり県民所得を増加させるためには、(1)労働力率の上昇、(2)失業率の低下、(3)雇用者所得の拡大、(4)企業所得の拡大、(5)財産所得の拡大の5つをバランス良く達成する必要がある。
4.上記の各変数をコントロールするための具体的な施策としては、(1)女性や高齢者の就労支援、(2)生活関連サービス産業の振興、(3)新リーディング産業の誘致、(4)産業人材の育成、(5)生活インフラの整備・維持をあげることができる。目先の損得勘定に振り回されることなく、長期かつ総合的な視点から一貫した政策と、腰を据えて真摯に取り組む姿勢が今求められている。
- 1.神奈川をはじめとした大都市圏経済は、戦後復興期から高度成長期を経て近年に至るまで、人口の集中と資本の大量投入を背景に地方圏と比べて高成長を遂げてきた。都市と地方の間には効率性格差が存在し、規模の経済性や範囲の経済性が大都市圏の成長率を高める方向に作用してきたと考えられる。
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2006-03-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年3月号 拡大する県内住宅地の地価格差
- 要約
- 1.近年の神奈川県内では、住宅地価が下げ止まりに向かって着実に歩を進めている。しかしその一方で、2000年ごろを境に地域間や地点間の地価格差が拡大する傾向にある。これは、それぞれの土地の利用価値に応じて地価が決まるという、市場メカニズムの下での合理的な地価形成が進んでいることの現れである。また、そのような土地市場の構造変化の結果として、地域間の住宅地価動向の差には各地域の住宅地市場の勢いが鮮明に反映されるようになっている。
2.県内の基準地別の地価動向を分析した結果によれば、各地の地価動向の差につながった利用価値の具体的な評価軸の一つとして、交通利便性の違いがあることは間違いないといえる。また、それ以外では、指定容積率の高さといった各地の開発可能性の違いや、住環境の違いも近年の住宅地価の格差拡大に影響を及ぼしたと考えられる。
3.これらのことが示唆するのは、第1に、今後も、それぞれの地域が住まいを構える場所としてどれだけ多くの人々から支持されるかが、各地の住宅地価動向を左右するということである。また第2に、そのようないわば、地域の魅力に対する市場の評価は、交通利便性などの外生的な要因のみによって決まるのではなく、住環境の整備状況などの内生的な要因によっても異なることである。さらに第3として、今後は、住宅地価の地域間格差が各地の地域経営のあり方を考える上での貴重な情報をもたらし得るということである。
- 1.近年の神奈川県内では、住宅地価が下げ止まりに向かって着実に歩を進めている。しかしその一方で、2000年ごろを境に地域間や地点間の地価格差が拡大する傾向にある。これは、それぞれの土地の利用価値に応じて地価が決まるという、市場メカニズムの下での合理的な地価形成が進んでいることの現れである。また、そのような土地市場の構造変化の結果として、地域間の住宅地価動向の差には各地域の住宅地市場の勢いが鮮明に反映されるようになっている。
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2006-04-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年4月号 高付加価値分野の地方展開を進める“ポスト空洞化”時代の工場立地
- 要約
- 1.東京や大阪などの大都市近郊に集積していた製造業の生産拠点は、バブル期を挟んだ1980年代半ばから90年代半ばにかけて北関東や東北、九州などの地方圏へ、90年代半ば以降は東アジアを中心とした海外諸国へと、時期的なズレを伴いつつ量産機能の移管を進めてきた。近年は逆に国内立地を見直す動きが広まっており、地方自治体の企業誘致合戦も次第に熱を帯びてきた。
2.『付加価値』と『雇用』という2つの評価軸の高低に基づき、都道府県別に製造業業種を“高付加価値”-“大雇用”のA格付けから、“低付加価値”-“小雇用”のD格付けまでの4グループに分類したところ、東北など地方圏の県では大半の業種が“低付加価値”に該当するという結果が得られた。すなわち、工場の地方分散は雇用面にのみ効果が現れており、半面、大都市圏には高付加価値分野がなお残存していることを示している。
3.業種別にみた構造転換の震源は電気機械(旧業種分類)である。旧電機に着目すると、かつて隆盛を誇った大都市近郊の府県で、とりわけ近年、付加価値と雇用両面において力の衰えが目立つ。そのかたわら、地方圏に目を転じると、九州では長崎、熊本、大分で“高付加価値化”の進展が確認できるほか、鳥取、徳島、富山などでも大手メーカーの進出によって“突然変異”を遂げており、高付加価値分野の地方展開を志向する動きが目立ってきた。
4.神奈川県では、化学、石油製品、輸送機械、一般機械が2004年時点でA格付けである。2001年まで不動のAであった旧電機は2002年以降、“低付加価値”-“大雇用”のCへ転落している。県内市区町村ごとに、同様の方法で業種格付けを行うと、たとえば輸送機械なら横須賀市、平塚市、寒川町、愛川町、化学なら川崎市、平塚市、鎌倉市、小田原市と、各業種の集積地域を一覧できる。
5.およそ四半世紀にも及ぶグローバルなレベルでの最適生産体制構築の動きは21世紀に入って一巡した感がある。そうした“ポスト空洞化”時代にあって、地域ごとにきめ細かい施策を展開するためには現状の正確な把握が欠かせず、その際、こうした手法による業種格付けが今後の産業政策を考えるうえでの有用な羅針盤となろう。
- 1.東京や大阪などの大都市近郊に集積していた製造業の生産拠点は、バブル期を挟んだ1980年代半ばから90年代半ばにかけて北関東や東北、九州などの地方圏へ、90年代半ば以降は東アジアを中心とした海外諸国へと、時期的なズレを伴いつつ量産機能の移管を進めてきた。近年は逆に国内立地を見直す動きが広まっており、地方自治体の企業誘致合戦も次第に熱を帯びてきた。
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2006-05-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年5月号 改善が続く神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断神奈川県内中堅・中小企業の2006年3月末時点の業況判断D.I.は全産業ベースで▲8と前回調査比2ポイント改善した。製造業では、輸送機械や金属製品などの景況感の悪化から、全体で同5ポイント低下の▲4となった。一方の非製造業は、サービスや建設などが改善し、8ポイント上昇の▲11となった。なお、3か月先の予想については全産業ベースで▲10と小幅な悪化が見込まれている。
2.企業業績等2006年1~3月期の企業業績は売上高、損益などがおしなべて悪化した。続く4~6月期は売上高が「増加」超に転じ、損益も「好転」超に転じるなど改善が見込まれている。価格動向については、1~3月期に仕入価格D.I.の「上昇」超幅が拡大した一方で、販売価格D.I.の「低下」超幅は縮小した。
3.設備投資2006年度の設備投資計画は「実施する」と回答した企業が半数を超えた。投資額を前年度より増額する企業は半数弱、逆に減額する企業は1割強にとどまっている。
- 1.業況判断神奈川県内中堅・中小企業の2006年3月末時点の業況判断D.I.は全産業ベースで▲8と前回調査比2ポイント改善した。製造業では、輸送機械や金属製品などの景況感の悪化から、全体で同5ポイント低下の▲4となった。一方の非製造業は、サービスや建設などが改善し、8ポイント上昇の▲11となった。なお、3か月先の予想については全産業ベースで▲10と小幅な悪化が見込まれている。
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2006-06-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年6月号 消費喚起のカギを握るシニア世帯の需要掘り起こし
- 要約
- 1.少子高齢化の進展は、ライフステージによって世帯の人員構成が変化することを反映して、マクロの消費動向にも影響を及ぼす。神奈川の場合、総人口がピークアウトする2020年以降も、(1)高齢の夫婦のみ世帯及び単身世帯を中心に世帯数の増加が続くこと、(2)相対的に潤沢な金融資産を有する高齢世帯のウエイト拡大に伴い購入単価の上昇が見込まれることから、県内個人消費の規模は2005年の水準を上回って推移すると予想される。
2.消費市場における主役の座が従来のようなヤングやミドルのファミリー世帯から子育てを終えたシニアの夫婦のみ世帯及び単身世帯に移行するに連れて、消費費目にも変化が表れる。たとえば、相対的にシニア世帯の支出ウエイトが大きい「保健医療」や、世帯属性による差異が小さい「食料品」などでは増加傾向が続くかたわらで、「教育」や「交通・通信」の減少が際立つ。
3.ただし、減少見込みの「交通・通信」のうち「自動車等関係費」に着目して精査したところ、シニアドライバーの動向如何によっては過去の消費パターンを単純に当てはめた推計結果ほどには減少しない可能性もある。すなわち、クルマの「購入費」そのものは少子化による新規取得層の縮小などが押し下げ要因となるものの、ガソリン代などの「維持費」については、今後シニア層における運転免許保有者数の拡大が下支え要因として無視できないだけの影響力を持っている。
4.彼らシニアが新規需要層に転じれば、メンテナンスなどの維持費のみならず、購入費、すなわち販売台数の押し上げ要因にもなり得るだろう。そのためには高齢者でも安全に運転できるクルマやそれをサポートする運行システムなど、自動車メーカー及び関連業界にはそうした技術開発に関して不断の努力が求められる。自動車関連市場に限らず全体のパイ縮小が不可避な状況下にあって、個人消費を喚起させるにはやはりシニア世帯の需要掘り起こしが重要なカギとなろう。
- 1.少子高齢化の進展は、ライフステージによって世帯の人員構成が変化することを反映して、マクロの消費動向にも影響を及ぼす。神奈川の場合、総人口がピークアウトする2020年以降も、(1)高齢の夫婦のみ世帯及び単身世帯を中心に世帯数の増加が続くこと、(2)相対的に潤沢な金融資産を有する高齢世帯のウエイト拡大に伴い購入単価の上昇が見込まれることから、県内個人消費の規模は2005年の水準を上回って推移すると予想される。
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2006-07-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年7月号 一時的に悪化した神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断2006年6月末時点の神奈川県内中堅・中小企業の業況判断D.I.(全産業ベース、業況が「良い」-「悪い」、回答社数構成比、%)は前回3月調査を4ポイント下回る▲12となった。製造業では、輸送機械などの低下から、前回調査比2ポイント低下の▲6となった。非製造業についても、運輸・倉庫を除く3業種が悪化して、6ポイント低下の▲17となった。なお、3か月先の予想については、全産業ベースで▲10と改善する見込みであり、景況感の悪化は一時的なものにとどまると考えられる。
2.企業業績等4~6月期の企業業績は売上高・損益ともに改善した。続く7~9月期には、売上高が「増加」超に転じるとともに、損益も「好転」超に転じる見通しである。また、7~9月期の受注については、製造業では「増加」超に転じる一方で、建設業は「減少」超幅が拡大する見込みとなっている。
3.価格動向4~6月期の原材料(製商品)仕入価格D.I.は前回調査に比べて「上昇」超幅が拡大する一方、販売価格D.I.は「低下」超幅が縮小している。仕入価格の上昇を見込む企業の割合が高まるなかで、販売価格への転嫁を進める動きが広まっている。
- 1.業況判断2006年6月末時点の神奈川県内中堅・中小企業の業況判断D.I.(全産業ベース、業況が「良い」-「悪い」、回答社数構成比、%)は前回3月調査を4ポイント下回る▲12となった。製造業では、輸送機械などの低下から、前回調査比2ポイント低下の▲6となった。非製造業についても、運輸・倉庫を除く3業種が悪化して、6ポイント低下の▲17となった。なお、3か月先の予想については、全産業ベースで▲10と改善する見込みであり、景況感の悪化は一時的なものにとどまると考えられる。
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2006-08-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年8月号 今後一層の強化が見込まれる政府の中古住宅市場活性化策-神奈川の中古住宅取引は活性化するのか(前編)
- 要約
- 1.戦後のわが国では、現在にいたるまで、持家取得のほとんどが新規の住宅建築や新築住宅の購入によって行われ、中古住宅市場が十分に発達してこなかった。右肩上がりの経済成長や地価の上昇が持続していくなかでは、新築による持家の取得が合理的であったからである。
2.しかしながら、わが国の新築志向を支えた経済環境は、ここ10数年で大きく変化した。また、今後は老後の生活資金確保などのために住宅資産を活用したいというニーズが高まってくると予想される。そうなると、これからは、一旦住宅を取得したとしても生活状況の変化に応じて柔軟に住み替えることができ、利用しない住宅は流通させて生活の糧とすることができるような社会環境の方が望ましいことになり、そのような社会環境を実現していくためには中古住宅市場の発達が必要不可欠となる。
3.ただし重要なことは、経済環境上の理由以外にも、わが国には中古住宅市場の発達を阻害する要因があった点である。その一つはこれまでの住宅税制であり、もう一つは、中古住宅の品質や性能等に関する情報の流通など、市場機能を支えるインフラが未整備なことである。
4.この点、近年の政策サイドではこれらの阻害要因を取り除くことを意図した取り組みが行われるようになっており、今後もさらに強化される見込みである。一方で、実際に中古住宅の取引が活性化するか否かは、時々の長期金利の水準や人々が抱く住宅資産価格の上昇に対する期待の大きさによって影響されると考えられ、今後の市場動向を見通すうえでは、そのような金利水準や住宅価格の変動にも注意する必要がある。
- 1.戦後のわが国では、現在にいたるまで、持家取得のほとんどが新規の住宅建築や新築住宅の購入によって行われ、中古住宅市場が十分に発達してこなかった。右肩上がりの経済成長や地価の上昇が持続していくなかでは、新築による持家の取得が合理的であったからである。
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2006-09-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年9月号 長期金利や住宅価格の変化が中古住宅市場に及ぼす影響について-神奈川の中古住宅取引は活性化するのか(後編)
- 要約
- 1.神奈川県は中古住宅取引が活発な県である。1999年~2003年9月までの期間における神奈川の中古住宅取引比率(全持家取引数に占める中古住宅取引数の割合)は23.3%と47都道府県中で7番目に高い。神奈川の中古住宅取引比率が高い背景としては、まず、(1)神奈川では間取りなどの仕様が標準化された持家ストックの割合が高いと考えられることがあげられる。また、90年代終盤から2000年代初頭の期間についてはそれとは別に、(2)神奈川県内の住宅地価の下落ペースが比較的速かったために、住宅価格の先行きに対する人々の見方が他地域よりも厳しめであったことも影響したと考えられる。
2.神奈川県の中古住宅市場の時系列的な推移をみると、取引数が増加しつつあるうえに取引価格も上昇し始めており、近年は市場が拡大傾向にある。しかし中古住宅取引比率をみると、90年代後半から2003年にかけての期間はそれ以前に比べて低迷しており、持家取得市場全体の拡大による影響を除いた実質的な意味においては神奈川の中古住宅取引が停滞する傾向にあったことがわかる。同比率が90年代後半以降に低下したのは、長期金利の低下を受けて持家取得市場では中古から新築への需要シフトが起こるとともに、中古住宅の供給が抑制されたためであると考えられる。
3.以上のような県内の中古住宅取引状況に関する考察からもわかるように、長期金利の低下は実質的な中古住宅取引の活性化度合いに対してマイナスの影響を及ぼし、住宅価格の上昇期待の冷え込みはプラスの効果をもたらす。このことを踏まえたうえで今後を展望すると、県内では住宅価格の緩やかな上昇が想定されるものの、一方で長期金利が上昇傾向をたどると見込まれることから神奈川県の中古住宅取引比率は上向いていくと予想される。ただし、持家取得市場全体が伸び悩むなかで中古住宅市場が量的に拡大を続けるかは微妙な情勢であり、その意味においても政策サイドの取り組みの着実な進展が望まれる。
- 1.神奈川県は中古住宅取引が活発な県である。1999年~2003年9月までの期間における神奈川の中古住宅取引比率(全持家取引数に占める中古住宅取引数の割合)は23.3%と47都道府県中で7番目に高い。神奈川の中古住宅取引比率が高い背景としては、まず、(1)神奈川では間取りなどの仕様が標準化された持家ストックの割合が高いと考えられることがあげられる。また、90年代終盤から2000年代初頭の期間についてはそれとは別に、(2)神奈川県内の住宅地価の下落ペースが比較的速かったために、住宅価格の先行きに対する人々の見方が他地域よりも厳しめであったことも影響したと考えられる。
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2006-10-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年10月号 メガネブームの背景にある価格破壊とデザイン性の向上
- 要約
- 1.若者を中心にメガネがブームとなっており、低価格でかつデザイン性に優れた商品を扱う新しいスタイルのメガネ小売店の新規出店が盛んである。そうした新業態では、買い回り品という既成概念を打破した最寄り品としての販売戦略が奏功し、新たな市場開拓につながったものと評価できる。
2.メガネ小売業界は、大手チェーンによる積極的な店舗展開を背景に、90年代以降、小売業全体と比べて堅調に推移してきた。メガネは視力矯正を目的とした実用品という商品特性から需要動向が比較的安定しており、価格も高めに設定することが可能であった。しかし、新業態の登場を機に競争が激化するとともに、輸入品の浸透から価格低下が鮮明となっている。
3.神奈川県は全国の中でもメガネ市場の競争が激しい地域である。ただ、その立地は商業集積地域に偏在している。潜在的なメガネ市場規模と実際の販売額との差を求めたところ、メガネ需要の流出は神奈川県全体で131億円に上るとの結果が得られた。市区別にみると、相模原市、川崎市宮前区、横浜市保土ヶ谷区など郊外部で流出が大きい。郊外部は新業態にとって未開拓なエリアであり、出店余地を残していると考えられる。
4.低価格が当然視されるポストデフレ経済の下では、消費者の購買意欲を刺激するファッション性や魅力的なデザインなど、プラスアルファの付加価値が不可欠となる。メガネ市場を巡る小売店の攻防劇の中には、飽和市場における販売戦略を考えるうえでのヒントが隠されているといえよう。
- 1.若者を中心にメガネがブームとなっており、低価格でかつデザイン性に優れた商品を扱う新しいスタイルのメガネ小売店の新規出店が盛んである。そうした新業態では、買い回り品という既成概念を打破した最寄り品としての販売戦略が奏功し、新たな市場開拓につながったものと評価できる。
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2006-11-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年11月号 年末に向けて緩やかな改善が見込まれる神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断
2006年9月末時点の神奈川県内中堅・中小企業の業況判断D.I.(全産業ベース、業況が「良い」-「悪い」の回答社数構成比、%)は前回6月調査比横ばいの▲12となった。3か月先の予想については、全産業ベースで▲9と改善する見込みである。
2.仕入価格
7~9月期の仕入価格判断D.I.(前の四半期に比べて仕入価格が「上昇」-「低下」の回答社数構成比、季調済、%)は、製造業において大幅な上昇となったことから、前回調査時点から10ポイント上昇の+50となった。ただ、10~12月期については+39と11ポイント低下する見込みである。
3.借入金利
7~9月期の借入金利水準判断D.I.(前の四半期に比べて借入金利の水準が「上昇」-「下落」の回答社数構成比、%)は+53と、前回調査時点の+15から38ポイントの大幅な上昇となった。10~12月期については+39と14ポイント低下する見込みである。
4.トピック
2007年春の新卒採用計画については、非製造業の中堅・中小企業で採用数が大幅に伸びたことから、全産業の採用予定者数は2006年春を15.0%上回った。中堅、中小企業に分けてみると、中小企業の増加率が中堅企業を大幅に上回っており、中小企業においても雇用拡大の意欲が強まっているとみられる。
- 1.業況判断
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2006-12-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2006年12月号 2006年冬の神奈川県民ボーナスの見通し
- 要約
- 1.神奈川県経済は、家計部門の動きにもたつきがみられるものの、企業部門を主体に息の長い景気拡大が続いている。すなわち、企業部門では堅調な輸出を背景に生産が拡大するとともに、設備投資も活発化しており、直近の決算動向でも製造業を中心に多くの企業が好調を維持している。ボーナス支給額を左右する雇用・賃金を取り巻く環境は着実に改善が進んでいる。
2.そうしたなか、当社が推計した今冬の神奈川県民の民間1人あたりボーナス支給額は前年比4.9%増の59.2万円と4年連続で前年実績を上回る見通しである。雇用者数の増加と支給者割合の上昇を見込んだ結果、民間ボーナスの支給総額は同6.9%増の1兆7,466億円と2年連続で前年実績を上回る見通しとなった。
3.ボーナスの支給総額が2年連続で前年実績を上回る見通しとなったことは、「いざなぎ」を超える戦後最長の景気拡大局面の下で回復の実感を欠いたままじっと耐えてきた家計部門にもようやく企業部門の好調さの恩恵が及んできた様子を示している。雇用情勢の改善とも相まって、当面の消費動向を下支えする効果を発揮することが期待される。
- 1.神奈川県経済は、家計部門の動きにもたつきがみられるものの、企業部門を主体に息の長い景気拡大が続いている。すなわち、企業部門では堅調な輸出を背景に生産が拡大するとともに、設備投資も活発化しており、直近の決算動向でも製造業を中心に多くの企業が好調を維持している。ボーナス支給額を左右する雇用・賃金を取り巻く環境は着実に改善が進んでいる。
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2007-01-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年1月号 2007年度の神奈川県内経済見通し
- 要約
- 1.2006年の神奈川県経済は、県内需要が主導するかたちでの景気回復が続いた。すなわち、個人消費が雇用・所得情勢の改善を背景に底堅く推移し、設備投資も自治体の企業誘致策を追い風に増勢が続くなど、総じて県内の需要は堅調に増加した。ただ、回復の原動力である企業部門では夏場までの輸出の伸びの鈍化や原油など原材料価格の高騰を背景に、年初に比べると回復ピッチが弱まった。
2.2007年度の県内景気は民間需要がけん引する自律的な回復が続くと予測する。海外景気の減速を背景に、輸出を起点とする企業部門の回復力はスローダウンするものの、A.県内企業の収益回復が続くこと、B.設備投資が増勢を維持すること、C.企業の根強い人手不足感を背景に雇用・所得情勢の改善が続くなか、個人消費の底堅い推移が見込まれること、などから緩やかな回復が続くことになるだろう。
3.県内経済の勢いを実質県内総生産の伸び率で示すと、2006年度が前年比+2.0%、続く2007年度も同+1.5%となる。神奈川の場合、大型投資の進捗を背景に設備投資の伸びが高めとなるものの、輸出の減速によって県外需要が成長率を抑制すると考えられる。この結果、2007年度の成長率は前年度を下回るものの、6年連続のプラス成長を遂げることになろう。
- 1.2006年の神奈川県経済は、県内需要が主導するかたちでの景気回復が続いた。すなわち、個人消費が雇用・所得情勢の改善を背景に底堅く推移し、設備投資も自治体の企業誘致策を追い風に増勢が続くなど、総じて県内の需要は堅調に増加した。ただ、回復の原動力である企業部門では夏場までの輸出の伸びの鈍化や原油など原材料価格の高騰を背景に、年初に比べると回復ピッチが弱まった。
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2007-02-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年2月号 2007年度の神奈川県内建設投資の見通し
- 要約
- 1.神奈川県内の建設投資は2005年度に前年比5.5%増と3年ぶりに増加した。公共投資は減少が続いたものの、民間居住用の建設投資が堅調に増加したうえ、設備投資の活発化を反映して民間の非居住用建設投資も回復・急伸した。5.5%増という前年比増減率はバブル崩壊以降では最も高い値である。
2.2006年度に入ってからの県内の建設活動をみると、民間住宅建築はこれまでのところ堅調さを保っているものの、先行き住宅取得環境悪化の影響が現れる懸念が生じてきている。また、企業の設備投資関連についても水準としては好調を維持しているものの、増勢が鈍化している。一方、公共投資については、この1年余り、従来よりも底堅い動きがみられるようになった。当社が各種の先行指標を用いて推計したところ、2006年度の県内建設投資は前年比2.3%増と増勢が鈍化するものの、2年連続で拡大する見込みとなった。
3.2007年度の県内建設投資については前年比3.4%減と減少を予測した。自治体の財政事情が厳しいなかで公共投資が同3.6%減と減少ペースを緩めながらも引き続き前年を下回る。民間住宅建築についても住宅取得環境悪化の影響が顕在化することなどにより減少が続くとみられる。企業の設備投資関連については、企業の設備投資意欲は旺盛な状態で推移するとみられるものの、大型商業施設の建設活動がピークアウトする見込みであることなどもあって2006年度並の水準にとどまる。
- 1.神奈川県内の建設投資は2005年度に前年比5.5%増と3年ぶりに増加した。公共投資は減少が続いたものの、民間居住用の建設投資が堅調に増加したうえ、設備投資の活発化を反映して民間の非居住用建設投資も回復・急伸した。5.5%増という前年比増減率はバブル崩壊以降では最も高い値である。
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2007-03-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年3月号 改正まちづくり三法に死角はないか?
- 要約
- 1.中心市街地の衰退が著しい。背景には、ライフスタイルの変化に加えて、モータリゼーションの進展に伴う都市機能の郊外化の影響が大きい。そうした『郊外化』と『荒廃化』は、道路等社会インフラの維持管理コストの増大やコミュニティの崩壊など、地域社会に様々な弊害を引き起こしている。
2.都市の無秩序な肥大化に歯止めをかけ、中心市街地を再活性化することを目的として1998年にまちづくり三法が相次いで制定・改正されたが、うち、中心市街地活性化法と都市計画法が2006年に改正された。郊外ほど規制の網がかかりにくくなる都市計画法の不備が改められることで、延べ床面積1万平方メートル以上の大規模集客施設は今後、商業、近隣商業、準工業の3つの用途地域でのみ出店が可能となる。ただし、三大都市圏では既成市街地および近郊整備地域の「準工」が適用除外(特別用途地区の指定をしなくても中心市街地活性化基本計画が認定を受けられる)となり、郊外出店の余地が残った。つまり、地方圏では郊外の開発抑制と中心市街地の活性化を一体で進められるのに対し、都市圏では郊外と中心市街地を同時に開発・支援するケースも想定され、両者が矛盾しないように調整が必要となる。
3.三大都市圏で「準工」が適用除外とされた理由は、市域全体で都市化が進んでいるためであるが、実際には都市によるばらつきは小さくない。一都三県の141市町村について、DID(人口集中地区)と非DIDの人口増減(2000~05年)の組み合わせによって、都市化の段階を分類したところ、東京都と神奈川県では大半の都市でDIDに人口が集中しつつ、全体の人口が増加する『都市化』段階にあることが確認できた。半面、埼玉県と千葉県では人口が減少しているにもかかわらず、非DIDに人口が分散する『逆都市化』段階にある都市も散見された。そのうち、人口1人あたりの売場面積が一都三県平均の水準を上回る小売供給力が過大な都市では、むしろ規制強化すら必要な状況といえる。
4.こうした状況を鑑みると、とりわけ都市圏におけるこれからのまちづくりでは、都市化の段階によって都心の再活性化と郊外の開発抑制とのバランスをとりつつ推進していくことが求められる。ただ、一連の法改正は規制緩和の潮流に逆行する動きでもあり、規制を適用する際には利害関係者間の便益の帰着先を慎重に考慮したうえで、全体の厚生が高まるか否かを十分に検討することが肝要であろう。
- 1.中心市街地の衰退が著しい。背景には、ライフスタイルの変化に加えて、モータリゼーションの進展に伴う都市機能の郊外化の影響が大きい。そうした『郊外化』と『荒廃化』は、道路等社会インフラの維持管理コストの増大やコミュニティの崩壊など、地域社会に様々な弊害を引き起こしている。
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2007-04-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年4月号 わずかに悪化した神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断
2007年3月末時点の神奈川県内中堅・中小企業の業況判断D.I.(全産業ベース、業況が「良い」-「悪い」の回答社数構成比、%)は▲8と、前回2006年12月調査の▲7から1ポイント低下した。3か月先の予想については、全産業ベースで▲13と5ポイント低下する見込みである。
2.価格動向
1~3月期の仕入価格動向D.I.(前の四半期に比べて価格が「上昇」-「低下」の回答社数構成比、季調済、%)は、前回調査時点から7ポイント上昇の+38となった。一方、販売価格動向D.I.(同)については前回調査時点から5ポイント低下の▲9となった。
3.借入金利
3月末時点の借入金利水準判断D.I.(3か月前に比べて借入金利の水準が「上昇」-「下落」の回答社数構成比、%)は+50と、前回調査時点の+27から23ポイントの大幅な上昇となった。6月末時点についても+51とさらに1ポイント上昇する見込みである。
4.トピック
2007年度の設備投資計画について、「実施する」と回答した企業の割合は全回答企業の38.8%だった。「実施する」と回答した企業のうち、前年度と比べて「増加する」と回答した企業の割合は42.3%、「減少する」と回答した企業の割合は13.0%だった。
- 1.業況判断
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2007-05-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年5月号 着実に薄れつつある神奈川県のベッドタウン的性格
- 要約
- 1.総務省「国勢調査」の最新の調査結果によると、2005年時点における神奈川県の昼夜間人口比率は90.3%と、前回の2000年調査に続く上昇となった。これは主に退職により非就業人口化した人の割合が高齢化の進展とともに高まったためである。
2.他方、1995年以降の神奈川県では、常住する就業・通学人口の歩留まりを示す自県内従業・通学割合がほとんど上昇することなく推移した。東京などに通学する人口の割合は低下したものの、反面で世代交代などを背景に県内に住む就業者の県外流出傾向が強まったためである。ブルーカラー的な職業に就く人の割合が高く、県内で従業する傾向が強かった戦中生まれ世代が順次退職したことにより、ホワイトカラー的職業に就き、東京に通勤する人が多い高度成長期以降生まれの世代の特徴が神奈川に住む就業者全体の特徴として一層前面に現れるようになってきている。
3.以上のことを踏まえれば、近年の神奈川県における昼夜間人口比率の上昇は必ずしも神奈川県の中心性の回復を意味するものではないと考えられる。ただしその一方で、結果的にではあれ、神奈川県のベッドタウン的性格は着実に薄れつつある。また、そうした傾向は、今後、退職者が増加していくなかでますます強まっていくと予想される。
- 1.総務省「国勢調査」の最新の調査結果によると、2005年時点における神奈川県の昼夜間人口比率は90.3%と、前回の2000年調査に続く上昇となった。これは主に退職により非就業人口化した人の割合が高齢化の進展とともに高まったためである。
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2007-06-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年6月号 2010年代以降にずれ込む神奈川の退職者の急増時期
- 要約
- 1.2007~09年にかけて人口ボリュームが大きい「団塊世代」が60歳の定年退職期を迎える。団塊世代の退職については、これまで主に企業サイドから「2007年問題」として注目を集めてきたが、一方で今後の彼らの生活の場となる地域社会の側からみると、“第二の人生”をスタートする人々に地域のなかでどのように活躍してもらうかという問題がクローズアップされる。
2.神奈川における今後の退職者数を予測すると、企業の継続雇用制度によって団塊世代の雇用者が非就業者となる時期が5年程度先送りされることなどから、退職者数が大幅に増加する時期は2010年代以降にずれ込むと見込まれる。また、退職者数の増加は県内における60歳以上の非就業人口を押し上げ、2020年には非就業人口が193.6万人と2005年に比べて34.3%増加する。
3.こうした退職者数の推移を市区町村別にみると、団塊世代の厚みがある県央地域や湘南地域に加えて、都筑区や青葉区などこれまでは60歳以上非就業者の割合が比較的低かった地域においても県平均を大きく上回る増加が見込まれる。これまで東京のベッドタウン的性格が強かったこれらの地域では、今後は退職して地域に戻る人が急増することになる。
4.退職者のなかには、就業経験や知識を生かして地域に貢献したいとする人々が少なからずいるが、地域における結びつきが不足しがちなことなどを背景に、現状ではこうした活動に参加している高齢者はわずかにとどまっている。今後、退職して地域に戻ってくる人たちが地域貢献活動に参加しやすいようにするためには、NPOなどの地域活動団体が退職者の地域内における人的ネットワーク不足の問題へのフォローに一層気を配っていく必要があろう。
- 1.2007~09年にかけて人口ボリュームが大きい「団塊世代」が60歳の定年退職期を迎える。団塊世代の退職については、これまで主に企業サイドから「2007年問題」として注目を集めてきたが、一方で今後の彼らの生活の場となる地域社会の側からみると、“第二の人生”をスタートする人々に地域のなかでどのように活躍してもらうかという問題がクローズアップされる。
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2007-07-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年7月号 2四半期続けて悪化した神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断
神奈川県内中堅・中小企業の2007年6月末時点の業況判断D.I.は全産業ベースで▲6となり、前回調査比5ポイント低下した。製造業が▲4と1ポイント低下し、一方の非製造業も▲7と7ポイント低下した。なお、3か月先の予想については全産業ベースで▲3と改善が見込まれている。
2.企業業績等
2007年4~6月期の企業業績は売上高が改善した反面で、損益は小幅に悪化した。続く7~9月期は売上高、損益ともに改善する見通しである。ただ、2007年度上期に設備投資の実施を計画する企業の割合は38.8%と前年同期の54.1%に比べて大幅に低下している。
3.価格動向
4~6月期の仕入価格D.I.は前回調査比5ポイント上昇の+48となり、第2次石油危機時の1979年12月以来28年ぶりの高水準となった。一方の販売価格D.I.も同6ポイント上昇の+1と1991年12月以来16年ぶりに「上昇」超となった。
4.2007年問題の影響
回答企業745社のうち定年制を導入している企業は9割、今後3年程度のうちに定年を迎える社員がいる企業が7割で正社員数の5.4%を占めることが明らかになった。2007年問題の悪影響があるとする企業は回答企業全体の3割となり、対応策として、継続雇用制度の活用や新規雇用による補充を図る企業が多くを占めた。
- 1.業況判断
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2007-08-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年8月号 増収と効率化により増益となった2006年度の神奈川県内上場企業決算
- 要約
- 1.国内外の景気拡大が続くなかで、県内上場企業の収益は回復を続けている。神奈川県内上場企業91社の2006年度連結決算を集計したところ、売上高が前年比4.6%増加、経常利益も同17.1%増加と増収増益になっている。
2.2006年度決算の特徴は、(1)海外景気や設備投資をけん引役として売上高が増加したこと、(2)原材料価格の高騰を増収や生産効率上昇などで克服して経常利益も増加したこと、の2点に集約できる。その結果として、県内上場企業の経常利益水準は過去最高を更新し、内部留保も厚みを増すなど企業のリスク許容度は高まっている。
3.2007年度も県内上場企業の業績は増収増益基調を維持すると考える。企業による業績予想を損益分岐点分析によって検証した結果、リスク要因のひとつである原材料価格が今後さらに上昇したとしても増益を確保するという結論が得られた。企業収益の回復が続くなかで、今後の県内景気も拡大基調を維持することになろう。
- 1.国内外の景気拡大が続くなかで、県内上場企業の収益は回復を続けている。神奈川県内上場企業91社の2006年度連結決算を集計したところ、売上高が前年比4.6%増加、経常利益も同17.1%増加と増収増益になっている。
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2007-09-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年9月号 民間需要主導の回復が続く神奈川県経済
- 要約
- 1.2007年前半の神奈川県内景気は緩やかな回復が続いた。企業部門では自動車関連の回復がもたつくなど一部に弱い動きが残るものの、総じてみれば収益の回復傾向が続くなかで投資活動が堅調に推移した。一方で家計部門も、個人消費が税負担増や天候不順を映じて一時的に弱含んだものの、雇用・所得面の改善を背景に底堅く推移した。
2.2007年度後半の県内景気も、底堅い県内需要に支えられて着実な回復が続くと予測する。ただ、自治体の誘致策の奏功から増勢を強めてきた設備投資の勢いが鈍り、住宅投資も地価の上昇など住宅取得環境の悪化から弱含みが見込まれる。反面で、個人消費は堅調さを取り戻し、政府消費も退職金の支払い増から増勢を増すとみられる。続く2008年度も設備投資が高い伸びを維持し、雇用・所得情勢の改善が続くなかで個人消費も引き続き堅調に推移することから県内景気は回復基調を維持すると考えられる。
3.県内経済の勢いを県内総生産の伸び率で示すと、2007年度が前年比+1.8%、続く2008年度は同+2.3%となる。神奈川の場合、大型投資の進ちょくを背景に設備投資の伸びは高めとなるものの、増勢は鈍化する。反面で、個人消費が勢いを取り戻してくることから民間需要が主導するかたちでの自律的な回復が続くことになるだろう。
- 1.2007年前半の神奈川県内景気は緩やかな回復が続いた。企業部門では自動車関連の回復がもたつくなど一部に弱い動きが残るものの、総じてみれば収益の回復傾向が続くなかで投資活動が堅調に推移した。一方で家計部門も、個人消費が税負担増や天候不順を映じて一時的に弱含んだものの、雇用・所得面の改善を背景に底堅く推移した。
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2007-10-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年10月号 底打ちはしたが回復に勢いがみられない近年の神奈川県工業
- 要約
- 1.長期にわたって縮小傾向をたどってきた神奈川県工業に近年底打ちの動きがみられるようになっている。経済産業省「工業統計表」によると、神奈川県の製造品出荷額等や付加価値額は素材型業種と加工組立型業種の一部がけん引するかたちで、2002年以降、増加傾向をたどっている。また従業者数も最新の統計である2005年には15年ぶりの増加を記録した。
2.もっとも、近年の神奈川県の製造品出荷額等や従業者数などの増勢を全国と比較すると、神奈川の持ち直しの勢いは全国に比べ見劣りする。また、わが国工業全体に占める神奈川県のシェアも低下傾向にあり、工業県としての神奈川のポジションは後退を続けた。さらに、神奈川県のポジション後退はそのような量的な側面にとどまらず、労働生産性の伸び悩みなど質的な側面においても進んでいる。なお、神奈川県工業のシェア低下の一因にはそのような労働生産性の伸び悩みがあると考えられる。
3.神奈川県工業の労働生産性が伸び悩んでいるのは、とくに1990年代中盤以降において、神奈川県の工業が相対的に厳しい交易条件にさらされ続けたためと考えられる。事実、交易条件悪化の影響を取り除いた実質ベースでの神奈川県工業の労働生産性は、90年代中盤以降も全国との差を保ちながら上昇を続けている。このことは、神奈川県内の製造現場における効率化や高付加価値化の成果が交易条件の悪化によって減殺されていたことを示している。
4.もとより、神奈川県工業を取り巻く交易条件の厳しさは、グローバルな経済環境の変化と県内工業の構造的な性質によってもたらされたものであり、短期間で改善される性格のものではない。そうなると、神奈川県内の工業が再び勢いを取り戻すためには、やはり、今後も生産活動の効率化や製品の高付加価値化への取り組みを地道に行い、県内工業の実質労働生産性を一層引き上げていくことが重要である。また、そのような県内工業の活動を支援していくために、最近の相次ぐ企業の進出によって生まれた新たな集積と既存の工業集積の結びつきを強化していくことが求められる。
- 1.長期にわたって縮小傾向をたどってきた神奈川県工業に近年底打ちの動きがみられるようになっている。経済産業省「工業統計表」によると、神奈川県の製造品出荷額等や付加価値額は素材型業種と加工組立型業種の一部がけん引するかたちで、2002年以降、増加傾向をたどっている。また従業者数も最新の統計である2005年には15年ぶりの増加を記録した。
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2007-11-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年11月号 3四半期連続で悪化した神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断
神奈川県内中堅・中小企業の2007年9月末時点の業況判断D.I.は全産業ベースで▲9となり、前回調査比3ポイント低下した。製造業が▲4と前回調査と同水準になった一方で、非製造業は▲12と5ポイント低下した。なお、3か月先の予想については全産業ベースで▲5と改善が見込まれている。
2.企業業績等
2007年7~9月期の企業業績は売上高、損益ともに悪化したものの、続く10~12月期にはともに改善に転じる見通しである。また、2007年度下期に設備投資の実施を計画する企業の割合は37.2%と前年同期の43.3%に比べて大幅に低下している。
3.価格動向
7~9月期の仕入価格D.I.は+39と前回調査比9ポイント低下したものの、2004年6月以降大幅な「上昇」超が続いている。一方の販売価格D.I.は▲2と前回調査の+1から3ポイント低下し「低下」超に転じた。
4.2008年春の新卒採用計画
2008年春の新卒採用計画については、全産業の採用予定者数が2007年春の採用者数を17.4%上回った。ただ、4割近い企業が採用予定者数を確保できないと見込んでいる。
- 1.業況判断
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2007-12-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2007年12月号 中国経済の現状と展望
- 要約
- 1.2007年7~9月期の実質GDP成長率が前年比+11.5%を記録するなど、中国経済は高成長が持続している。景気が過熱するなか国内物価も急上昇するようになってきた。中国政府は2007年のインフレ率の目標を前年比+3.0%と設定しているが、実際のインフレ率は4%台後半に達する公算が大きい。
2.中国人民銀行は、すでに2007年に入ってから預金準備率を9回、貸出基準金利を5回引き上げている。今後も、投資の過熱感とインフレを抑制するために利上げや預金準備率の引き上げなど、金融引き締め政策をさらに強化してくることが予想される。インフレ圧力を緩和するために、通貨人民元の対ドル為替レートの上昇を、ある程度容認することも考えられる。
3.2008年は、景気過熱を抑制するための金融引き締め政策が継続されるため、企業の投資活動は若干減速するとみられる。ただ、北京オリンピック・上海万博関連のインフラ投資、第11次5ヵ年計画に沿った環境関連投資が増えるため、投資の減速幅は小さなものにとどまろう。中国では、2001年にオリンピック開催が決定してからこれまでの間、すでに競技場や高速道路、国際空港の建設など様々なインフラ整備が進められ、景気が押し上げられてきた。2008年は、そうしたインフラ整備に加えて、観光収入や個人消費の増加という経路からも経済成長率の押し上げ効果が期待できる。外需と投資は減速するが、北京オリンピック特需などによって消費が高い伸びになるため、実質経済成長率は前年比+10.8%と10%を超える高成長を維持する見通しだ。
4.景気のリスク要因としては、(1)サブプライム問題による米国経済減速の影響、(2)金融引き締めの強化、(3)中国で頻発する暴動と反政府デモ、などを挙げることができる。高成長を続ける中国経済がこうしたリスクを抱えていることには十分な注意が必要だろう。
※本稿はBRICs経済研究所代表の門倉貴史氏に寄稿していただいたものである。
- 1.2007年7~9月期の実質GDP成長率が前年比+11.5%を記録するなど、中国経済は高成長が持続している。景気が過熱するなか国内物価も急上昇するようになってきた。中国政府は2007年のインフレ率の目標を前年比+3.0%と設定しているが、実際のインフレ率は4%台後半に達する公算が大きい。
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2008-01-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年1月号 2008年度の神奈川県内経済見通し
- 要約
- 1.2007年の神奈川県内景気は緩やかな回復が続いた。企業部門は、輸出の増加を背景に生産活動が堅調に推移し、総じてみれば収益の回復傾向が持続するなかで設備投資の増加が続いた。一方の家計部門は弱含みの展開となった。個人消費は所得の伸び悩みや税負担増、原油高などを通じたマインド悪化などから弱含みに転じた。また、住宅着工も建築基準法改正の影響によって年半ばから急速に水準を落とした。
2.2008年度の県内景気は緩やかながら着実に回復を続けると予測する。海外景気の拡大が持続するなかで、輸出を起点とする企業部門の回復力が設備投資の増加などを通じて、引き続き景気をけん引する。また、住宅投資も反動増が予想される。さらに個人消費も、雇用情勢の改善が続くなかで底堅い推移が見込まれる。
3.県内経済の勢いを県内総生産の伸び率で示すと、2007年度が前年比+1.6%、続く2008年度は同+2.2%となる。神奈川の場合、大型投資の進ちょくなどを背景に設備投資の伸びは高めとなる。県外需要が減速する反面で、反動増などから住宅投資や個人消費が勢いを取り戻すことから、新年度は民間需要が主導するかたちでの自律的な回復が続くことになるだろう。
- 1.2007年の神奈川県内景気は緩やかな回復が続いた。企業部門は、輸出の増加を背景に生産活動が堅調に推移し、総じてみれば収益の回復傾向が持続するなかで設備投資の増加が続いた。一方の家計部門は弱含みの展開となった。個人消費は所得の伸び悩みや税負担増、原油高などを通じたマインド悪化などから弱含みに転じた。また、住宅着工も建築基準法改正の影響によって年半ばから急速に水準を落とした。
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2008-02-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年2月号 2008年度の神奈川県内建設投資の見通し
- 要約
- 1.神奈川県内の建設投資は、2005年度、2006年度と、民間投資をけん引役として回復傾向をたどってきた。しかし、2007年度に入ってからの県内建設活動をみると全般に極めて低調な動きとなっている。この背景として、第1に改正建築基準法の施行に伴う建築確認手続きの混乱があげられる。また、それ以外にも住宅取得環境の悪化などにより住宅取得需要が減退したことや、中小企業の設備投資が冷え込んだことも県内建設活動を下押したとみられる。
2.最近の神奈川県内における建築確認動向をみる限り、改正建築基準法の施行に伴う混乱は2007年末までに概ね終息してきたと考えられる。ただ、「構造計算適合性判定」については未だ手続きの遅れが十分に解消されていないとみられ、「適判」審査を義務づけられているマンションやオフィスビル等については、混乱の終息に今しばらくの時間を要すると考えられる。
3.以上を踏まえて推計すると、2007年度の県内建設投資は前年比7.4%減と2004年度以来の減少に転じることが見込まれる。2007年度は公共投資の減少が続くほか、民間の建設投資が居住用、非居住用ともに前年を下回ることになろう。
4.続く2008年度については前年比4.7%の増加が見込まれる。公共投資が引き続き減少するものの、民間の建設投資が改正建築基準法の影響がはく落するとともに再び増加する。ただし、そのうちの民間居住用建設投資については、住宅取得環境の悪化継続や分譲マンションの在庫調整を背景に盛り上がりを欠いた展開になると予想され、その結果、県内建設投資全体としても2008年度は浮揚感に乏しい展開が見込まれる。
- 1.神奈川県内の建設投資は、2005年度、2006年度と、民間投資をけん引役として回復傾向をたどってきた。しかし、2007年度に入ってからの県内建設活動をみると全般に極めて低調な動きとなっている。この背景として、第1に改正建築基準法の施行に伴う建築確認手続きの混乱があげられる。また、それ以外にも住宅取得環境の悪化などにより住宅取得需要が減退したことや、中小企業の設備投資が冷え込んだことも県内建設活動を下押したとみられる。
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2008-03-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年3月号 資源国向けの急増から10兆円を超えた神奈川3港からの輸出
- 要約
- 1.神奈川県経済は輸出を起点とする緩やかな景気回復が続いている。2007年の神奈川3港からの輸出金額は前年比10.5%増加の10兆4,878億円と初めて10兆円を超えた。輸出仕向け地別にみると、北米向けが同9.0%減と4年ぶりに前年割れとなった一方で、中国などのアジア向けや西欧向けは堅調な増加が続いている。
2.そうしたなか、輸出相手先として近年ウエイトを増しているのは中東や中南米、アフリカなどの地域である。神奈川3港の輸出額に占める欧米や東アジア向けを除いた地域の割合は、2005年までは20%前後で推移してきたが、2007年は26.5%にまで上昇した。この背景としては、近年の資源価格高を反映した資源国の購買力増大があげられる。品目別には乗用車やトラック、工作機械などの輸出増加が目立つ。
3.2008年も中東や中南米、アフリカなどの経済は高成長が続くと見込まれる。それは、資源高を反映して先進国からの所得移転が続くうえ、資源供給力の増大を図るインフラ整備などが持続するためである。そうしたなか、輸送用機器や一般機械を主体として神奈川からの輸出も堅調な伸びが期待される。
- 1.神奈川県経済は輸出を起点とする緩やかな景気回復が続いている。2007年の神奈川3港からの輸出金額は前年比10.5%増加の10兆4,878億円と初めて10兆円を超えた。輸出仕向け地別にみると、北米向けが同9.0%減と4年ぶりに前年割れとなった一方で、中国などのアジア向けや西欧向けは堅調な増加が続いている。
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2008-04-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年4月号 悪化が続く神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断
神奈川県内中堅・中小企業の2008年3月末時点の業況判断D.I.は全産業ベースで▲15となり、前回調査比4ポイント低下した。景況感の悪化は5四半期続いており、先行きについても引き続き悪化が見込まれている。
2.企業業績等
2008年1~3月期の企業業績は売上高が減少するとともに、損益も悪化した。続く4~6月期はともに改善が見込まれている。また、2007年度下期に設備投資を実施した企業の割合は42.9%と前年同期の43.3%に比べ低下している。
3.価格動向
1~3月期の仕入価格D.I.は+65と前回調査比10ポイント上昇して、28年ぶりの高水準となった。一方の販売価格D.I.は0と前回調査の▲1から1ポイント上昇し、先行きは「上昇」超に転じる予想となっている。
4.原材料価格上昇の業績への影響
原材料価格上昇の影響については、業績に「マイナスの影響がある」とした企業の割合は85%に達した。また、販売価格への転嫁状況は、「ほとんどできていない」とする企業が半数以上を占めた。
5.今春の賃上げ状況
2008年春の賃上げ状況については、賃上げを「(一部)実施する」をする企業の割合が6割を超えた。また、賃上げ幅は「前年並み」とする企業が約7割を占めた。
- 1.業況判断
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2008-05-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年5月号 横浜の賃貸オフィス市場は新規供給ラッシュを乗り切れるか
- 要約
- 1.横浜で賃貸オフィスの新規供給ラッシュが始まった。当社の集計では、2007年の新規供給(貸室面積ベース)は約1万8千坪とバブル期の余韻が残った1990年代前半に匹敵する水準となっている。今後もさらに新規供給ラッシュが加速する見込みであり、そのボリュームは2008年~10年には年間3万~4万坪、11年には7万坪超にのぼるとみられる。
2.横浜の賃貸オフィス市場は、長期の景気拡大に支えられて、2006年半ばにバブル崩壊以降では初の本格的な回復局面を迎えた。ただ、2007年夏以降は賃料の上昇が続くなかで空室率が反転して上昇傾向となっており、市場の局面は回復段階から成熟段階へと移行した。その背景として、賃料の上昇期待の高まりのほか、オフィスの新規オープンによる供給可能面積拡大があげられる。
3.今後の新規供給が横浜賃貸オフィス市場に及ぼすインパクトを試算したところ、2008年から2009年までの新規供給についてはオフィス稼働面積を2.6%増加させる効果があることがわかった。ただ、その一方で賃料に対しては9.3%の下落圧力が、また、空室率に対しては7.6%ポイントの上昇圧力が生じる。もっとも、景気動向次第で市況の悪化は限定的になる可能性があり、仮に県内経済が2%成長を続けた場合には、同期間の賃料の下落幅は5.2%、空室率の上昇幅は3.1%ポイントにとどまる予想である。
4.なお、景気の回復が続いたとしても、既存のオフィスビルのなかには一時的に厳しい経営環境にさらされるビルが出てくる可能性は否定できない。そういう意味では、横浜の賃貸オフィス市場が今後の新規供給ラッシュを乗り切れるかどうかは、一面では既存ビルの環境変化への対応力がカギを握っているということもできよう。
- 1.横浜で賃貸オフィスの新規供給ラッシュが始まった。当社の集計では、2007年の新規供給(貸室面積ベース)は約1万8千坪とバブル期の余韻が残った1990年代前半に匹敵する水準となっている。今後もさらに新規供給ラッシュが加速する見込みであり、そのボリュームは2008年~10年には年間3万~4万坪、11年には7万坪超にのぼるとみられる。
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2008-06-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年6月号 2008年夏の神奈川県民ボーナスの見通し
- 要約
- 1.神奈川県経済は、2007年中は民需の拡大に支えられた自律的な回復が続いた。しかし、2008年の年明け以降は米国経済の減速傾向の強まりや原油など一次産品価格の一段の上昇などを背景に景気の回復傾向に変調の兆しがみられるようになっている。また、そうした状況下、県内の企業収益の増益ペースが鈍化し、企業が賃金引き上げに消極的な姿勢を示すようになるなど、ボーナスを取り巻く環境は厳しくなっている。
2.当社の予測では、今夏の神奈川県民の民間1人あたりのボーナス支給額は前年比2.1%減の55.5万円と2年連続で減少する見込みである。また、雇用者数の増加を受けて支給対象者数は前年実績を上回るものの、1人あたり支給額の落ち込みから民間のボーナス支給総額も同1.5%減の1兆7,191億円と、昨年に続いて前年を下回る見通しである。
3.ボーナス支給が前年割れとなる見込みであることから、当面、所得面からの個人消費の押し上げは期待しにくい。もっとも、今夏のボーナス商戦を巡っては、雇用情勢の改善持続や4月以降の株価持ち直し、北京オリンピック開催といった明るい材料も一部にみられる。それらがボーナス商戦を盛り上げて、今夏の県内個人消費を下支えすることに期待したい。
- 1.神奈川県経済は、2007年中は民需の拡大に支えられた自律的な回復が続いた。しかし、2008年の年明け以降は米国経済の減速傾向の強まりや原油など一次産品価格の一段の上昇などを背景に景気の回復傾向に変調の兆しがみられるようになっている。また、そうした状況下、県内の企業収益の増益ペースが鈍化し、企業が賃金引き上げに消極的な姿勢を示すようになるなど、ボーナスを取り巻く環境は厳しくなっている。
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2008-07-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年7月号 大きく悪化した神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断
神奈川県内中堅・中小企業の2008年6月末時点の業況判断D.I.は全産業ベースで▲23となり、前回調査比8ポイントの低下と大きく悪化した。景況感の悪化は6四半期続いており、先行きについても引き続き悪化が見込まれている。
2.企業業績等
2008年4~6月期の企業業績は売上動向D.I.が前回調査比横ばいとなり、損益動向D.I.はわずかに上昇した。続く7~9月期はともに改善が見込まれている。また、2008年度上期に設備投資を実施する計画の企業の割合は36.0%と前年同期の38.8%に比べてわずかに低下している。
3.価格動向
4~6月期の仕入価格D.I.は前回調査比横ばいとなったものの、水準は+65と28年ぶりの高さが続いている。一方の販売価格D.I.は前回調査比8ポイント上昇の+8となり、16年半ぶりに「上昇」超に転じた。
4.改正パート労働法の影響
改正パート労働法の影響については、経営に「影響はない」とした企業が最も多く、その割合は7割を超えた。理由としては「自社にパートがいない」が半数以上を占め、次いで「パートが正社員化を望まない」が約3割となった。一方で「マイナスの影響」をあげる企業も2割を占め、内容としては「人件費の増加」をあげる企業が最も多かった。
- 1.業況判断
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2008-08-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年8月号 2007年商業統計(速報)からみた近年の神奈川県内小売業の動向
- 要約
- 1.今年4月に経済産業省が公表した「平成19年商業統計速報」によると、2007年6月1日時点における神奈川県内の小売商店数は前回調査(3年前の簡易調査)時に比べ8.0%減少した。しかしその一方で、売場面積が同8.1%増加したほか、年間商品販売額も同2.1%増加しており、県内小売業の間に業勢持ち直しの動きが広がったことが確認された。
2.県内の小売商店数のすう勢的な減少が続いたのは零細個人商店の廃業が引き続き多くみられたためと考えられる。また、近年の商店数の業種別変化からは、コンビニエンス・ストア数が店舗の過剰感などから減少を続けたことや、大型ショッピングセンターの開業によって衣料品関連の商店数が増加に転じたことなどの、県内小売業のトピック的な変化も垣間(かいま)見られる。
3.一方、売場面積についてはここにきて拡大テンポが上がったかたちであるが、これは県内における大規模店の開業動向の変化によるものと考えられる。近年は、比較的『小ぶり』なサイズの大規模店の開業が増える一方で、超大型商業施設のオープンも相次いでおり、結果として、県内における大規模店の開業数が増加しただけでなく、開業1件当たりの店舗面積も拡大した。
4.ただし、神奈川県の場合には、そうした大規模店の開業が年間商品販売額の増加に十分に反映されていないという面がある。県内小売業の年間商品販売額はほぼ10年ぶりに増加に転じたが、その回復力は東京圏のなかでは相対的に弱かった。また、人口の堅調な増加が続くなかで、小売吸引力指数は低下した。就業者の県外流出傾向の強まりがその一因と考えられる。
- 1.今年4月に経済産業省が公表した「平成19年商業統計速報」によると、2007年6月1日時点における神奈川県内の小売商店数は前回調査(3年前の簡易調査)時に比べ8.0%減少した。しかしその一方で、売場面積が同8.1%増加したほか、年間商品販売額も同2.1%増加しており、県内小売業の間に業勢持ち直しの動きが広がったことが確認された。
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2008-09-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年9月号 2008年度・2009年度の神奈川県内経済見通し
- 要約
- 1.2008年前半の神奈川県内景気は弱含みに転じた。企業部門では輸出の増勢が鈍化するとともに、生産活動が低下に転じ、原材料価格の高騰も相まって企業収益が悪化に転じた。一方の家計部門も雇用・所得情勢の改善ピッチが鈍るなかで、物価上昇に伴って消費マインドが悪化したことなどから、個人消費が弱含みに転じた。住宅投資も建築基準法改正の影響から脱却した後は弱い動きとなっている。
2.今後の神奈川県景気は、海外景気の減速と原材料価格が高止まりするなかで、企業収益の悪化が続くことなどから、弱い動きが続くと見込まれる。県内景気に上向きの動きが広がり始めるのは、米国景気が持ち直して輸出が回復に向かう2009年度後半となろう。家計部門も、2009年度には物価上昇率の鈍化や賃上げなどを通じて、実質所得の目減りが緩和するとともにマインド面も改善に向かうことから、個人消費は底堅い推移が予想される。ただ、住宅投資は厳しい住宅取得環境下で弱い動きが続き、公共投資も減少が続くと見込まれる。
3.以上のような県内経済の勢いを県内総生産の伸び率で示すと、2008年度が前年比+0.8%、続く2009年度は同+1.5%となる。神奈川の場合には、自治体の誘致策の奏功等によって設備投資が増勢を維持することなどから、企業部門の落ち込みは小幅にとどまり、成長率は全国をわずかに上回ることになる。
- 1.2008年前半の神奈川県内景気は弱含みに転じた。企業部門では輸出の増勢が鈍化するとともに、生産活動が低下に転じ、原材料価格の高騰も相まって企業収益が悪化に転じた。一方の家計部門も雇用・所得情勢の改善ピッチが鈍るなかで、物価上昇に伴って消費マインドが悪化したことなどから、個人消費が弱含みに転じた。住宅投資も建築基準法改正の影響から脱却した後は弱い動きとなっている。
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2008-10-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年10月号 年末に向けて引き続き悪化が見込まれる神奈川県内中堅・中小企業の景況感
- 要約
- 1.業況判断
神奈川県内中堅・中小企業の2008年9月末時点の業況判断D.I.(全産業)は▲29となり、前回調査比6ポイント低下した。景況感の悪化は7四半期連続となり、先行きについても悪化が続くと見込まれている。
2.企業業績等
2008年7~9月期の企業業績は売上動向および損益動向ともに大きく悪化した。続く10~12月期はともに改善が見込まれている。また、2008年度下期に設備投資を実施する計画の企業の割合は33.3%と前年同期の37.2%に比べて低下している。
3.価格動向
仕入価格の高騰が続く反面で、販売価格の引き上げは進んでいない。7~9月期の仕入価格D.I.は前回調査比横ばいとなったものの、水準は+65と28年ぶりの高さが続いている。一方の販売価格D.I.は3四半期ぶりの「低下」超に転じた。
4.2009年春の新卒採用計画
2009年春の新卒採用計画については、全産業の採用予定者数が2008年春の採用者数を6.5%上回った。足下の人手不足感は緩和しているものの、若返りや退職者の補充を企図して、県内中堅中小企業の新卒採用意欲は依然として根強い。
- 1.業況判断
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2008-11-01
神奈川・地域経済調査
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年11月号 2008年都道府県地価調査に見る神奈川県内地価の動向(前編)
- 要約
- 1.わが国の地価は、地方では全体として下落ペースが緩やかになる傾向が続いているものの、先行して上昇してきた大都市地域では、昨年後半以降、地価の動きに陰りがみられるようになっている。神奈川県においても、2008年の都道府県地価調査では商業地と住宅地の平均変動率がともに低下に転じており、地価上昇の勢いに減速感が現れ始めた。
2.最近の大都市地域を中心とする地価の変調は、基本的にはファンダメンタルズの変化を反映したものである。すなわち、それまでの不動産価格の上昇や景気の後退局面入り等を背景とする不動産実需の減退を受けて、消費者や投資家などの間に不動産価格の先行きを軟調に予想する向きが強まっている。なお、世界的な金融不安の広がりなどを背景に、わが国の不動産に向かう投融資資金が細ってきていることも不動産市場を冷え込ませたとみられる。
3.ただし、神奈川県の住宅地については、比較的多数の地点で順調な地価の持ち直しが続いた結果、平均変動率の低下幅が東京や埼玉、千葉に比べ小幅にとどまった。この背景には、主として、賃貸マンションの賃料が首都圏の他の地域と比較しても安定的に推移するなど、最近の住宅市場における需給悪化ペースが相対的には緩やかであったことがあると考えられる。
4.なお、最近の神奈川県内における住宅需給の悪化が相対的に緩やかにとどまった要因の一つには、首都圏での人口の都心回帰現象が弱まっていることがあるとみられる。この背景には、東京都心の住宅価格が先行して上昇した結果、郊外の住宅価格の相対的な割安感が高まったことがあると考えられ、この点は当面の県内住宅地価動向を見通すうえでの重要なポイントとなる。今後、東京都心の地価の弱含み傾向が強まれば、再び住宅需要の重心が都心方向にシフトする可能性があり、その場合には、神奈川県を含む周辺3県の住宅地価に東京都心以上に強い下落圧力が働く恐れがある。
- 1.わが国の地価は、地方では全体として下落ペースが緩やかになる傾向が続いているものの、先行して上昇してきた大都市地域では、昨年後半以降、地価の動きに陰りがみられるようになっている。神奈川県においても、2008年の都道府県地価調査では商業地と住宅地の平均変動率がともに低下に転じており、地価上昇の勢いに減速感が現れ始めた。
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2008-12-01
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かながわ経済情報 : かながわ経済情報2008年12月号 2008年都道府県地価調査に見る神奈川県内地価の動向(後編)
- 要約
- 1.2008年の都道府県地価調査の結果を神奈川県内の市区町村別にみると、横浜市や川崎市ではほとんどの区において住宅地価の平均変動率が低下している。なかでも、前年までの地価上昇が急であった横浜市北部や川崎市内の区における変動率の低下が目立つ格好となっており、このことは、08年半ばまでの神奈川県内における地価の変調が、それまでの地価急伸の調整という色彩が濃いものであることを示している。
2.一方、横浜市や川崎市を除く市町村においては概ね平均変動率が改善しており、08年半ばまでは順調な地価の持ち直しが続いていたことがわかる。ただし、県内の地域別の住宅需給動向をみると、最近では横浜・川崎以外の地域における緩和度合いが相対的に強くなっている。したがって、08年地価調査で示された横浜・川崎以外の地域における順調な地価持ち直しには、ここ数年の地価回復局面の余韻が含まれている可能性が高い。
3.なお、08年地価調査の結果を地点別にみると、住宅地価の動向に変調がみられた地域が横浜市や川崎市に集中していることがはっきりとみてとれる。また、今回の地価調査では、横浜市の市営地下鉄グリーンライン沿線や、鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市などの海岸側において比較的高めの上昇率を記録した地点が多いことも確認できる。前者については新線開通の効果が、また、後者については人気の住宅地としてのブランド力が地価の伸びの相対的な高さにつながったとみられる。
- 1.2008年の都道府県地価調査の結果を神奈川県内の市区町村別にみると、横浜市や川崎市ではほとんどの区において住宅地価の平均変動率が低下している。なかでも、前年までの地価上昇が急であった横浜市北部や川崎市内の区における変動率の低下が目立つ格好となっており、このことは、08年半ばまでの神奈川県内における地価の変調が、それまでの地価急伸の調整という色彩が濃いものであることを示している。
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2009-01-01
神奈川・地域経済調査
産業マンスリー
かながわ経済情報 : かながわ経済情報2009年1月号 2009年度の神奈川県内経済見通し
- 要約
- 1.2008年の神奈川県内景気は秋口から悪化の度合いを強めた。年前半に原材料価格の高騰や輸出の増勢鈍化などの影響から回復ピッチが鈍化していたところに、米サブプライム住宅ローン問題を発端とする世界的な金融危機の影響が加わったためである。世界景気の急減速とともに円高が急伸したことから輸出が大幅な減少に転じ、製造業を中心に企業業績は大きく悪化した。一方で、家計部門では物価の上昇や株価急落などを背景に消費者マインドが冷え込み、年終盤にはボーナス減や雇用不安などが広がるなかで、家計の節約志向が一段と強まって個人消費は弱い動きとなった。
2.2009年度の県内景気は厳しい情勢が続くと予測する。企業部門では、米国など海外景気の低迷が続くなかで、輸出の減少が続くとともに、企業収益も悪化が続く。また、これまで堅調に推移してきた設備投資も7年ぶりの減少に転じる。一方の家計部門も、雇用・所得情勢が厳しさを増すなかで、個人消費や住宅投資は弱含みの展開が想定される。ただ、物価の上昇圧力が和らぐとともに、企業の交易条件の好転や家計の実質所得底上げなどが景気を下支えするだろう。
3.県内経済の勢いを県内総生産の伸び率で示すと、2008年度は前年比+0.4%とプラス成長を維持するが、続く2009年度は同▲1.4%と2001年度以来のマイナス成長になる。神奈川の場合、輸送機械や一般機械など主要産業の外需依存度が高いだけに、輸出の減退が成長率に大きく影響する。県内景気に明るさがみられるようになるのは、米国景気が上向き、電気自動車など次世代の成長を担う製品群の本格的な生産開始が見込まれる2010年度以降となろう。
- 1.2008年の神奈川県内景気は秋口から悪化の度合いを強めた。年前半に原材料価格の高騰や輸出の増勢鈍化などの影響から回復ピッチが鈍化していたところに、米サブプライム住宅ローン問題を発端とする世界的な金融危機の影響が加わったためである。世界景気の急減速とともに円高が急伸したことから輸出が大幅な減少に転じ、製造業を中心に企業業績は大きく悪化した。一方で、家計部門では物価の上昇や株価急落などを背景に消費者マインドが冷え込み、年終盤にはボーナス減や雇用不安などが広がるなかで、家計の節約志向が一段と強まって個人消費は弱い動きとなった。
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